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魔法が使えないのでギルド職員をクビになりそうです〜わたしの師匠は魔王様にゃ!〜  作者: 椎名咲良
1章 落ちこぼれ少女が魔王の弟子になる話
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6◆落ちこぼれ少女と似た者魔王




「さて、じゃあ授業を始めるにゃ! サラは魔法についてどこらへんまで知ってるかにゃ?」


 伊達眼鏡をくいっとしてなんか知的な女教師アピールしてルーちゃんは聞いてきた。


 とはいえ、私だってここ三ヶ月ずーっと魔法については色々調べて来たし問題ないはず。


「えっと、属性は火、水、土、風、雷、氷、光、闇があって適正を持った属性の魔法しか使えない。等級は入門、初級、中級、上級、超級の五つ。人によっては複数適正を持ってる事があって適正の数に応じて持ってる魔力容量の多さが違うって事?」


「大体正解にゃ。七十点くらい」


「え、七十点?」


 思わず聞き返す。これが一般的に魔法学園で習う魔法についての概要だし、本にもそう書いてあるのに。


「まず一つ目。属性はその八つだけじゃなくてもう一つあるにゃ。その名はーー万能属性。その八つは基本属性って言われるんにゃけど、万能属性はそのどれにも属さない魔法にゃ。例えば……(サラー。今日のお昼ご飯は何かにゃー?)」


「え、昨日食べれなかったお魚のつもりだけど……ってあれ、ルーちゃん喋ってないよね? 腹話術か何か?」


 思わず答えちゃったけど、目の前のルーちゃんの口元は全く動いてない。


「違うにゃ。これが万能属性魔法の入門魔法の一つ、【念話】。喋らなくても頭の中で会話が出来る魔法にゃ。こういう属性とか関係ない魔法が万能属性に当たるにゃ」


 ……凄い。


 ルーちゃんが言う基本属性に当たる魔法の入門魔法って精々掌にちっちゃい火の玉を出すとかそういう割としょぼいのなのに、万能属性の入門魔法はめちゃくちゃ実用性がある。


 入門レベルでこれなら初級レベルでも相当凄いんじゃ……


「理解したかにゃ? じゃあ二つ目。魔力容量に適正の多さは関係なくて、生まれつき器の大きさはある程度決まってるにゃ。実際私は万能属性しか適正持ってないけど、魔王になれるくらいにはあるにゃ」


「へー。ちなみにルーちゃんは大体どのくらいあるの?」


「んー。まあこの街を超級魔法で滅ぼしても、消費量はそこの棚の薬瓶の一滴にも満たないくらいかにゃ?」


「この街を滅ぼすのを一単位にするのやめてくれないかな!? 絶対滅ぼしちゃダメだからね!?」


 こんな可愛い見た目で言ってる事はちょくちょく魔王になるのやめて! 私は可愛いマスコットなルーちゃんの方がずっと好きだよ!


「だからこれは例で、そんな事やらないにゃ。最後三つ目。等級は超級の上に一つまだあるにゃ。ーー神級。文字通り神の如く力を持った魔法にゃ。こればっかりは魔王の私も使えないにゃ」


 そんな等級聞いた事ないし、本で見た事もない。超級ですら世界に数人しか使える人はいないし、威力は本によると地形を変えるくらい凄いって聞いたのに、その上って世界が壊れるんじゃないの……


 第一、これだけ規格外の魔王が使えない魔法ってそれ誰も使えないんじゃ……


「さて、ここまではいいかにゃ? ここからが本題なんにゃけど、サラは昔から基本属性の魔法がどれも使えなかった。そうにゃ?」


「うん」


 もう一度確認するように聞かれたので頷く。


「それ、私も同じだったにゃ。だから、サラには万能属性の適正があるんだと思うにゃ」


「え? ルーちゃんも?」


「そうにゃ。私魔王だけど、火の玉出したりとかは出来ないにゃ。サラとおんなじにゃ」


「私と、ルーちゃんが……」


 私、今まで誰かとこの気持ちを共有出来るなんてまずないと思ってた。魔力持ち(マナホルダー)で魔法が使えないなんて見た事も聞いた事もなかったし。


 ずっと魔法が使えないのが後ろめたくて、だから学園では魔法を使えなくても魔力があれば出来る魔法薬学に打ち込んでた。


 でも、その魔法薬学に打ち込んでたからルーちゃんが救えて、そのルーちゃんが私の理解者になってくれた。それが――凄く嬉しい。どうしよ、涙が止まんない。


「あの、あのねルーちゃん。私、私ね」


「言わなくていい、言わなくてもわかるにゃ。周りへの劣等感とか自分への嫌悪感、辛かったにゃあ。サラは頑張った、偉いにゃ」


「ルーちゃぁん……!」


 頭に飛び乗って優しく撫でてくれるルーちゃんに我慢が出来なくなって胸に抱き締める。


 伝わった。何も言わないでも全部伝わってた。やばいどうしよ、涙が止まんない。


「サラ、これはうちのお母様に私が言われた事なんにゃけど。ーー泣いてる暇があったら前を向きなさい。一歩でも多く前に進みなさい。でももし、どうしても進めなくなったならば私の元に来なさい。その時は一緒にお茶しながらたわいの無い話をして、休んだらまた進みましょうって」


 ルーちゃんは私の肩を優しくぽんぽんと叩きながらお母さんの真似かな、いつもの口調とは違って落ち着いていて厳しく、でも優しさを感じる声で思い出を語った。


 そうだね。今はやる事があるもんね。


「ルーちゃん」


「何かにゃ?」


「万能魔法、試してみる。どうすればいいか教えて欲しいな」


「もちろんにゃ! 私に任せるといいにゃ!」


 ついさっき見聞きした台詞と仕草で言うルーちゃんを見て私は涙を拭う。今は泣いてる場合じゃないもんね!


「まず、万能魔法は基本属性の魔法と違って詠唱が無いにゃ。だから、イメージを固めて魔力を込めれば発動出来るにゃ。ただし、本来魔法の発動を補助してる詠唱を経由しない分消費魔力量は基本属性の魔法に比べて多いにゃ。とはいえこれからやるのは入門の【念話】だからそんな気にしなくていいにゃ」


「わ、わかった。やってみる」


「サラ、私の言う通りに。目を閉じるにゃ」


 言われた通り目を閉じる。


「そのまま相手の頭の中に語りかける様にイメージしながら、魔力を込めるにゃ」


 言われた通り、ルーちゃんの頭の中に語りかける様にイメージしながら魔力を込める。


「――【念話】」


 お願い、上手くいって……!


 祈りながら魔法を発動するも頭には何も声は聞こえない。やっぱり、ダメだったのかな……


「(ダメじゃないにゃ)」


「……え?」


 目を開くと目の前にはルーちゃんがいて、視線が合うとそのまま飛びついてきた。じゃあ、もしかして……


「(【念話】、成功してるにゃあ。おめでとうにゃ、サラ)」


「やっっっったー!!!」


「にゃー!?!?!?」


 喜びのあまり思わず飛び上がってルーちゃんを抱えてぐるぐる回す。


 ルーちゃんがめっちゃ悲鳴上げてるけど、今は許してねルーちゃん!


 ついに、ついに魔法が使えたよ私!

お読み頂きありがとうございます!


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それでは、次回の更新でまたお会いしましょう!

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