45◆落ちこぼれ少女と決断
リヴァイアサン。危険度Sランクのまさに現れる事があれば国が総力を上げて立ち向かわなくては倒す事は不可能な化け物。その威圧感は先程まで相対していた悪魔や災厄指定モンスターが可愛く見える程。足の震えが止まらない……!
「ーー【遠目】! っ!? あいつの頭に何か生えてくるにゃ!」
「えっ!?」
恐らく名前の通り遠くを見る魔法っぽい【遠目】で数十メートル先の海に現れたリヴァイアサンを目視したルーちゃんの異常事態を告げる言葉に私は困惑する。
何か生えた!? 頭に!? 一体何がーー
『ヒャーハハハハハ!! 成功! 成功だァ!』
「ギ、ギルガス!?」
そんな馬鹿な事ある!? ギルガスの死体は頭ごとここにあるんだよ!? 死んだはずじゃないの!?
「ど、どうなってるのルーちゃん!?」
「私にもわかんないにゃ! ただ、あの悪魔の上半身がリヴァイアサンの頭に生えてる! あいつは今、リヴァイアサンと完全に同化してるにゃ!」
『正解だクソ猫ォ! 奥の手として、俺様が死ぬ事でリヴァイアサンとして転生する様に予め用意をしておいたんだよォ! リヴァイアサンは海の悪魔、悪魔の俺様が成れない訳がねェよなァ! ヒャハハハハハハハハ!!』
転生!? そんなファンタジーのお話でしかない様な事が、本当に起こったって事!?
『ァァ、力が漲る。漲るぞォ! 今なら街でも国でも何でもブッ壊せそうだァ! まずは手始めにこの街を塵にしてやるよォ! 光栄に思えよ人間、クソ猫ォ!』
ギルガスがそう言うと、リヴァイアサンの口が開き口内に青い光が収束していく。あ、あんなの本当に撃たれたら本当に……!
「死ねェ! 【蒼龍の蛇渦潮!】」
「ルーちゃん!」
「にゃあ! 聖器召喚! 【女神の盾】!」
発射の瞬間、ルーちゃんは白銀に輝く盾を召喚すると続けて叫ぶ。
「【絶対防御!】」
その瞬間、網目状のドームが街全体に張られリヴァイアサンの放った死の光を受け止め、死の光は霧散する。文字通り絶対防御だ。
「あ、危なかったにゃ……あんなの街に撃たれたら一瞬で人諸共全部更地にゃ」
……本当に危なかった。あと少しで全てが終わるところだった。ギルガスは本気で、リヴァイアサンの力でこの街を滅ぼそうとしてる……!
『やるじゃねェかクソ猫ォ! だが、後何回耐えられるかなァ!』
「ルーちゃん、何とかしてあいつを倒さなきゃ! ルーちゃんなら出来る?」
「……出来ない事はないにゃ」
「だったらーー」
「ただし。サラには契約者として、一つ選択をしてもらう必要があるにゃ」
「選択……?」
ルーちゃんは頷くと、私の目を見てはっきりと言った。
「今、私が街を助ける為にあいつを倒す魔法を使えば、街も住民もただじゃ済まないにゃ。街は良くて更地、悪ければ二度と人が住めない土地に。住民の身の安全も一切保障は出来ない、恐らく生き残るのは極僅かにゃ」
「ダ、ダメだよそんなの! もう一つ! もう一つはーー」
「もう一つの選択は、今すぐにあいつから逃げる事にゃ。ただし、今私達が逃げれば住民が逃げ切れる可能性はほぼゼロ。この街が滅んだ後は、次は別の国や街がターゲットになって同じ事が繰り返される。けど、それは私達の目に映る場所じゃないにゃ」
「そ、そんなの……」
どっちも詰んでる。どっちにしたって住民の人達の安全は保障されず、この街は滅ぶ。
『充填完了! もう一発食らいやがれェ! 【蒼龍の蛇渦潮!】』
準備が完了し、再度放たれた死の光は再び防がれ霧散する。きっと、こんなのもう何度も持たない。現にドームの一部は小さなヒビが入っている。
「さあサラ、選ぶにゃ。選択肢はこのどちらかしかないにゃ」
「え、選べないよこんなの! どっちを選んでも街は滅ぶし皆死ぬ! こんなの間違ってる!」
ロッテやヴェインさん、支部長に落ちこぼれの私に良くしてくれた魔導ギルドの先輩達や騎士の人達。私がどちらを選んでも、私の大事な人達は皆死ぬ。こんなの、選べる訳ない……!
「甘えた事言うんじゃないにゃサラ。もう選択肢はこの二つしかない。私だって守れるなら全部守りたいにゃ。けど、それは無理だから。私には手の届く範囲のサラを守る事、それしか約束は出来ないにゃ。……恨んでくれて構わないにゃ。でも、もうこれしかないのにゃ」
「ルーちゃん……」
その表情で全てわかった。こんな事言ってるけど、ルーちゃんだってこんな理不尽な結末受け入れてない。受け入れられる訳がない。
私とルーちゃんは出会ってまだ数日。でも過ごした時間は少なくても、私達はこの街で一緒に沢山の事をした。
あの日、傷ついたルーちゃんを助けて魔王だって知った。
ルーちゃんと契約して師匠と弟子になった。そして、私は魔法が使える様になった。
ロッテやヴェインさん。大事な友達が出来た。
ロッテとペアを組んで、商会の悪事を暴いた。
ロッテが、私と対等な関係になりたいって言ってくれた。夜通し三人で楽しくお喋りだってした。
そして今日、本当に沢山の事があった。
ルーちゃんだってきっと、一緒に短いけど濃い時間を過ごして来たこの街が、この街の人達が好きなはずなんだ。
でも、きっと私の為にそんな気持ちを押し殺してる。出来ない事を出来ると言って私をぬか喜びさせない様に。私がどちらを選んでも責任を感じない様に、その恨みを自分に向けさせようとしてる。
だからこそ。こんな結末は認められない。認めたくない。認めてたまるもんか。
なら、もう私の選ぶ選択は一つしかない。
「……決めたよ、ルーちゃん」
「……聞くにゃ。サラはどちらを選ぶのかにゃ?」
「私が選ぶのはーー」
ルーちゃんから提示された選択。
サラが出した答えは次回。今日は二本更新としますので続きをお楽しみに!
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それでは、次回の更新でまたお会いしましょう!




