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1年に1度のチートスキルで何とか異世界で生きようと思います……。  作者: 夜虎
第8章 ドレン王国運命の日 異世界2年目突入
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80/80

お嬢様の過去

移動してきたのはフェリスの部屋。

あまり入ることはないけれど、

フェリスは几帳面にも毎日掃除しているみたいで、

いつ来てもフェリスの部屋は綺麗だ。


「何からお話しすればいいでしょうか……」


向かい合ったソファーにフェリスと、

私・ヒルクの1対2の形で座った。

そして、神妙な様子でフェリスは話し始めた。


フェリスが話し始めたお嬢様の過去は、

一言で言うと凄いモノだった。





最近、よく夢を見る。

前世の私の夢だ。


それはまるで順番に思い出しているように、

小さい頃の夢からこちらの世界に来る数分前まで、

自分の過去を夢で見ていた。



幼少期。

私は両親から、存在を嫌がられていた。


両親は、私が生まれる前から元々険悪な仲で、

私が生まれてからは夫婦の仲は、悪くなる一方だった。


私がいると、世話がめんどくさいらしい。

何かあるたびに泣かれ、なかなか泣き止まない。

自分の事が出来ない。

そんな事が母をイラつかせたようだ。


どんどん私を邪険に扱う母を見て、

父は最初こそ私の味方だったんだろうけど、

私が物心つくころには、父は私に関心がなかった。




私は殆ど育児放棄に近い状態だった。

罵倒や暴力といったことはなかったのが幸いだった。


でも、そんな環境で生活していたせいか、

自分でも分かるくらい、冷淡な性格になってしまった。


私が泣いても笑っても、母も父も私に何も声をかけない。

露骨に嫌いな人を見る目で見るのだ。

少しは隠せばいいものを、隠そうともしない。


私はいつしか諦めていた。


両親から優しくされることも、

両親から撫でられることも、

両親から愛されることも。


せめて、捨てられないように出来ることは自分でした。

例えば、着替え。

教えられることもなかったため、

母が着替えている所を見て、真似た。


母は自分の服に金を使うことは厭わなかったが、

私の服を買うことは嫌がった。

だから、服は夏用と冬用で2着ずつしかなかった。

夏用と冬用で、それぞれ同じような服だったから、

2パターンを覚えるだけで良かった。


それに、顔を洗うことや歯磨きなど、

基本的なことも何一つ教えて貰えなかったから、

自分でこっそり両親を見て真似て覚えた。


幼稚園や保育園に連れて行かせて貰えてたのなら、

こんな風にこそこそと覗き紛いなことをせずに済んだんだけど。



少し大きくなったときには家事もしていた。

料理は見様見真似では出来なかったけど、

掃除、洗濯、ごみ出しなどなど。

出来ることは何でもした。

その時の私は、とにかく必死だった。


私が家事をし始めても、両親は変わらなかった。


母は私に対して怒ることが少なくなった。

でも小さなことでイライラしていたから、

なかなか近づけずに極力関わらないようにしていた。


父はいつの間にか仕事に出かけていて、

夜遅くに帰って来ることもあれば、

帰ってこないこともあった。

父はその間何をしていたかを私は知らない。

だが、父が家に帰ってこない事で、

母のイライラの要因の一つとなっていたことは知っていた。



私が小学生に上がるときには、

両親に似た子供になっていた。


自分以外は他人で、興味を示さず、

自分の事でいっぱいいっぱいで、

人を思いやるなんて言葉を知らない。

そんな人間らしくもない人間になっていた。


小学校初日、もちろん入学式なのだが、

入学式などという言葉は知らない。

訳もわからず周りに合わせて行動し、

何とか出来た。


私の入学式なんかに両親が興味を示し、

来るはずもなく、同い年の子供とその親が並んで座るなか、

私一人だけ隣には誰も座らなかった。


上級生の人に一人一人花をつけて貰ったときも、

皆が親と一緒のなか、私だけ一人だったので、


「ねえ、お母さんかお父さんは?」


と訊かれたときは、話しかけないでバカ。

と罵ってしまったことは懐かしい話だ。


人との関わりが一切なく、

両親との会話も皆無だった私は、

無知だった。


何がいいことで何が悪いことなのか。

今では当たり前のようにわかることが、

私にはわからなかった。


そして母がよく私にアホやバカと言っていたのを、

私はあなたなどの二人称のように思っていたのだ。

その言葉の意味もわからず。


この、話しかけないでバカ。も、

よく言われていた言葉の一つだ。

しかも、毎回母は無表情で言うので、

悪い意味などわかるはずもない。



当の言われた方は、悪い意味だと知っていただろう。

泣き出すなんてことはなかったが、

涙を堪えているような悲しげな顔をしていた。


そこで一旦夢が途切れ、

私は目を覚ます。


もう今では見慣れた私の部屋だ。

久しぶりに両親の顔を思い出した。

だからと言って、悲しいわけじゃない。

だって、両親以上の家族がここにはいるから……。




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