お嬢様のスキルとは?
おやつタイムが終わった後、
お嬢様はベッドで眠り、
フェリスとヒルクと私はキッチンに来ていた。
あんなに凄いスキルを使ったのだから、
疲れは半端な物じゃないんでしょう。
私の知っているお嬢様は『主の加護』を使っている姿だ。
『主の加護』だけでも凄いスキルなのに、
あんな凄いスキルまで持っていたなんて……。
最初の『誕生日おめでとう』スキルというのは聞いたこともないし、
名前を聞いても全然予想がつかないスキルだった。
結局どんなスキルなのか分からなかったもの。
お嬢様が倒れたぐらい……。
「…………ヌ」
まさかそんなスキルなわけがない。
だってスキルが使用者にとって悪い事を起こすなんて。
「レイ……、レイーヌ!」
「えっ! 何?」
いつの間にか、ヒルクが私の目の前のイスに座って、
私をジッと見ていた。
「どうしたのですか?
お疲れならば眠られた方がよろしいのでは?」
フェリスはそういって、
私とヒルクに紅茶を出してくれた。
「ありがとう、フェリス」
「そうだ。王家の力を使ったんだろう?」
そう。王家の力を使えたのが嬉しすぎて、
おやつタイムではしゃいでいたんだったわ。
今思うと少し恥ずかしいわね。
「……ええ。
でも大丈夫よ」
「そうか」
少し俯き気味で話すと、
二人は私が恥ずかしがっているのに、
気が付かなかったみたいだった。
私は気付かれないうちに話を変えることにした。
「ねえ、フェリス」
「何でしょう?」
フェリスは皿洗いの手を止めて、
振り返った。
「あのね、気のせいかもしれないけど……」
私が考えていたのはスキルのこともそうだけど、
本当はもっと別の事が気になっていた。
スキルを使ったときのお嬢様の様子。
『破滅の襲来』を使ったときのお嬢様、
いえ、正確に言うと、
恐らく『誕生日おめでとう』スキルを使った後。
私にはあのときのお嬢様が怖かった。
まるで別人みたいだった。
いつもあまり表情豊かとはいえない方だけど、
おやつタイムやお話タイムのときは、
少し口元が緩むのを知っているし、
不機嫌な時は目がそれを訴えているし。
それに比べて、あのときのお嬢様は、
無表情で怒りを感じさせないような。
沸き立つ怒りを抑え込んでいるような感じ。
そんないつもとは違うお嬢様の様子に、
私はとてつもなく不安を感じた。
でも、二人に言えない。
お嬢様がまるで別人みたいだったなんて。
だって、おやつタイムのときのお嬢様は。
なんともなかったもの。
きっと気のせいよね。
でも……。
「どうしたんですか?」
「あっ、あのね」
やっぱり言ってみることにした。
気のせいならそれでいい。
私はフェリスとヒルクに、
塔での出来事と、
お嬢様の様子について話した。
「それでね、『誕生日おめでとう』スキルって
フェリスはどんなスキルなのか知ってる?」
「ああ、そのスキルですか」
フェリスは紅茶の入ったティーカップを持って椅子に座った。
「そのスキルはお嬢様の誕生日、
つまり生まれた日に3つだけ願い事を叶えるというスキルです」
「願い事が叶うというのはお嬢様から少し聞きました」
「そうですか。女神によって認められる願いであれば、
何でも叶います」
何でも?
だから、お嬢様はあんなに自信満々に国王陛下に言ってたのんr。
でもそんなスキルが存在するなら、
もうそれはスキルといえるものじゃないわ!
そんな奇跡みたいなスキルを使えるなんて、
お嬢様って一体……?
私が考え事をしていると、
横からヒルクが口を出してきた。
「それって、女神に愛されし者ってことか?」
「女神に愛されし者って……?」
聞き慣れない言葉に思わず訊き返す。
「女神に愛されし者は、女神から愛を受けこの世界に降り立つという。
そして、何かしらこの世界に良い傾向を齎すらしい……」
「お嬢様はそんな方だったの?」
前からお嬢様は凄い方だと思っていたけど、
まさか女神に愛されし者だったの?
「いえ、女神に愛されし者なら良かったのですが……」
フェリスの反応は微妙だった。
「違うのか?」
「むしろお嬢様は女神によって人生を狂わされたも同然」
「狂わされたですって!」
どういうこと!
女神様がそんなお嬢様の人生を狂わせたなんて……。
女神様は私たち生きとし生ける者達を見守り、
時折、恵みを齎し、
世界は女神様によって廻っている。
そんな私たちには想像も出来ないくらい、
尊い存在じゃなかったの?
「この機会に私が知っているお嬢様の事を話しましょう。
本当はお嬢様の口から告げられることですが……。
恐らく、お嬢様が自ら告げられることはないでしょう」
「どうして?」
フェリスは悲しげな顔をして
少し顔を伏せた。
「僕もこんな話はしたくないのです。
お嬢様は僕以上に話したくはないはずですから」
そんなに話辛い出来事でもあるというの?
フェリスは悲しげな顔に無理矢理笑顔を張り付けて、
私たちに提案してきた。
「ここではなんですから、部屋を移しましょう」
「ああ、そうだな」
その表情を見ると切なくなってしまう。
何があなたにそんな表情をさせているの?
フェリスは3人分のティーカップを洗い場に置き、
さっと部屋を出て行く。
私とヒルクもそれに続いて出て行く。
これから私の知らないお嬢様を知ると思うと
緊張してきた。
部屋に続く道がとても長く感じた。




