ドレン王国の危機 紅月の日
紅月の日。
私は朝からフェリスに城まで連れて来てもらった。
もちろん、レイーヌも一緒に。
いよいよ魔物が攻めてくる。
後は、紅月の祝い日まで待てばいいだけ。
願いの塔に来て、ベッドに座る。
家の自室のベッドの方が、柔らかい気がするわ。
「レイーヌ、あなたに願いの塔に一緒に来て貰ったのには、理由があるの。
紅月の日から紅月の祝い日に変わったら、私を起こしてほしいの。
私は紅月の祝い日まで、寝ているから。
これはとても重要な役割だから、お願いね」
「は、はい…」
レイーヌは浮かない顔をしている。
「何か心配事でもあるの?」
「いえ、その。
本当に大丈夫なのかな、と。
紅月の祝い日まで半日ありますし…」
優しいレイーヌの事だから、
関係ないこの国の兵士たちの事も、考えているんだろうけど。
「心配しなくても大丈夫よ。
宮廷魔法使いは、宮廷魔法使いって呼ばれるだけの、実力はあるだろうし。
他の兵士だって、いつも訓練しているだろうし…。
それに、心配してもしょうがないわけだから。
レイーヌ、後は信じるだけよ。皆の無事をね」
まあ、私は別にこの国がどうなろうと、
フェリスやヒルクや家が、無事ならそれでいいんだけどね。
「さあ、レイーヌは今から寝なさい。
今寝ておかないと、紅月の祝い日に私を起こせないわよ?」
「はい…。分かりました。
本当に皆を助けられるんですよね?」
レイーヌはベッドに入ると、私に尋ねてきた。
「ええ」
「分かりました。お嬢様を信じます…」
大丈夫かしら?そんなに簡単に信じて。
レイーヌは私のもう一つのスキルの事を知らないはずだけど…。
レイーヌの瞼が落ちて行く。
ゆっくり閉じると、スースーと小さな寝息が聞こえてきた。
「さて、どうなるかしら?」
午後1時。
ドレン王国城門前では、魔物対ドレン王国騎士たちの戦いが、行われていた。
午後1時頃に、ドレン王国につく予想が、30分も早く魔物達は国についていた。
「そっちに行ったぞ!追え!」
「囲め!追い詰めろ!」
様々は掛け声が飛び、まさに戦場となっていた。
怪我人ももちろん出た。
だが、それでも高ランクの魔物相手に後れを取ることもなく、
対等に渡り合えていた。
苦しくなるのは、後からだ。
後からどんどんもっと強い魔物が現れる。
それに疲労だって溜まって行く。
騎士たちは、お嬢様の事を知らない。
ただ、紅月の祝い日まで耐えろ、
そうすれば、援軍が来る。
そう国王は伝えていた。
「第一部隊交代だ!次、第二部隊!!」
まだまだ終わらない魔物の群れに、ため息を吐きたくなってくる。
「やはり、こちらにはあまり魔物は来ませんね」
「でも、お嬢様に城を頼まれたからには、
守らなければならないからな」
お嬢様の城の方には、20や30ぐらいの
少数の魔物が来ていた。
フェリスは剣と魔法で。
ヒルクは剣で魔物達を狩っていく。
「そういえば、ヒルクさんが剣を使われる所を
あまり見たことはありませんでした。
中々にお強いですね」
「いいえ、俺はフェリスのように魔法を使えるわけじゃないんだ。
俺には剣だけなんだよ…。
だから、魔法を使えるフェリスが少し、羨ましい」
次々やって来る魔物を余裕で倒していくフェリスとヒルクは
自然と口数が多くなっていった。
「いえいえ、何か一つを極めるのは素晴らしい。
今度、僕に剣術を教えて頂けませんか?
その代り、魔法が使えるようにお手伝いしましょう。
もしかしたら、出来るようになるかもしれませんよ?」
フェリスは、ニヤリと笑みを浮かべながら、
ヒルクに提案を持ちかける。
「それはいいな。
お互い強くなることが出来れば、
レイーヌもお嬢様も守るための、力の向上になるというわけだ」
「そうです。
では約束ですよ?」
「ああ」
こんな所で男と男の約束が交わされているなど、
誰も知る由もなかった。




