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初めての街 フェリスの過去

「フェリス、いつまでそこにいるつもり?

早くしないと置いて行くわよ」


フェリスがいつまで経っても、復活しない。

私はフェリスの背中を思いっきり叩いた。


「えっ!お嬢様?」


フェリスの反応は薄く、全然効いていないようだった。

けど、気にせずフェリスに言った。


「ほら、さっさと私を運んで頂戴。

私の足を疲れさせるつもり?」


「はい…」


フェリスは私を抱えた。

フェリスの表情はどこか浮かない顔をしている。


「何よ。そんなに私を運ぶのが嫌なの?」


「いいえ!そんなことはありません!」


慌ててフェリスが否定してくる。


「なら、何故そんな顔をしているのかしら?

まさか、しょうもないことじゃないでしょうね」


「いいえ、その…」


また、ウジウジしてる。

いい加減どうにかならないのかしら?


「ねえ、主の私に隠し事なんてしないわよね?」


「はい」


フェリスはその場に止まった。

後ろを歩いていたレイーヌとヒルクも止まる。


「何かあるなら言いなさい」


「あの。お嬢様は、僕が人を殺せば、僕の事を嫌いになりますか?」


何を悩んでいるのかと思えば…。

しょうもないことじゃない。


「当たり前でしょ。人殺しを傍に置いておきたくはないわ」


「そうですか……。

では、僕が人殺しをしていたとしたら、

お嬢様は僕を傍に置かなくなりますか?」


まさかフェリスは、人殺しを?


「フェリス、正直に答えなさい。

人を殺したことがあるの?」


重苦しい空気が流れる。

周りはうるさいはずなのに、急に周りの音が消えたみたいに

聞こえなくなる。


しばらくして、フェリスは震えながら言った。


「……はい」


まさか…。でもいつ?

私の記憶には、フェリスはいつも私の近くにいた。

どこかの誰かを殺しに行った風なことはなかったはず…。


「そう。どう言う事か、話してくれるわよね」


「はい」


こんな道端で話すのも、どうかと言う事になって、

ベンチのある、ひらけた場所に来た。

ベンチに座ると隣にフェリスが座った。


レイーヌとヒルクも気になるみたいで、

レイーヌなんて泣きそうになっている。


「さあ、話して」


「はい。


僕は魔族です。

そして、魔族は人間とは相反する種族。

神様やお嬢様に会う前、僕は一人の魔族として、

人間狩りをしていました。人殺しです。


魔族の中ではより多くの人間を殺した者こそが、

真の魔族と言われていました。

魔族の中でも、僕は決して下級ではありませんでした。


より高みを目指し、人間狩りを率先してやっていたのです」


魔族と人間狩り。

成る程ね。人殺しってこういうことだったのね。


「そう。フェリス訊くけど、今はどうなの?

私に隠れて人殺しをしてるとか……」


「それは決してありません!

僕が人を殺していたのは、神様やお嬢様に会う前の話です」


ならいいんじゃないの?

何を難しく考える必要があるのかしら?


「生憎、私はあなたの過去に興味はないの。

今のあなたは何?

唯の人殺しの魔族?」


「いいえ。僕は…」


「フェリス、あなたは私の執事でしょ?

魔族とか、人間とかの前に、あなたは私の執事なの。

だったら、主に従って主の為に、ただ動いていたらいいと思わない?」


そう言っても、フェリスはまだどこか納得していない様子だった。

バカ真面目に考えてるのね。


「それに、フェリスは私を殺す気があるの?


無いから、こうやって言ったんじゃないの?

だって、人殺しをしたことがあります。

何て言ったら、警戒されてしまうもの…」


「はい…」


フェリスは頷きながら答えた。


「なら、大丈夫でしょ?

それでも、自分が魔族ということが気に入らないなら、

魔族を辞めてしまえばいいわ。


私だって、もうとっくに人間を辞めてるし」


でもフェリスが魔族を辞めるなら、何になるのかしら?


「そう、ですね…。僕、魔族を辞めます!

でも、魔族と人間以外だと、何が僕に合うのでしょうか?」


フェリスが元気になった。

そこまで考える気はないから、適当に答える。


「そうね、唯の執事でいいんじゃないかしら?」


「お嬢様がそう仰るならそうします。

今日から僕の種族は執事です。

生涯ただ一人に仕え、主の為に全力を尽くす。

こんな所でしょうか?」


「まあ、フェリスがそれでいいと思うなら、いいんじゃない?」


自分だけの種族が出来て、何だか嬉しいみたい。

フェリスは、いつものように、ニコニコと笑みを浮かべていた。


「お嬢様が、改めて僕を執事と認めて頂いたようで嬉しいんです!」


「分かったから、買う物が他にもあるんでしょう?

早く済ませるわよ」


ぐすっぐすっと、鼻を啜るような音が聞こえて、そっちを見ると

レイーヌが号泣していた。


「良かったわね!フェリス。

お嬢様に、認めて、頂けて……」


「レイーヌ…。ハンカチを」


泣いているレイーヌに、ヒルクがハンカチを手渡す。

レイーヌは手渡されたハンカチで、鼻を噛んだ。

少し、鼻が赤くなっている。


「はあ…。しょうがないから、少し休みましょう」


しばらくベンチに座ったまま休憩することになった。

レイーヌが泣き止んだのは、しばらく経ってからだった。


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