フェリス戻ってくる
今、私はヒルクを部屋に呼んで作戦会議と言う名の
話し合いをしています。
部屋には元々ベッドしか家具がありません。
それはどこの部屋も同じらしく、
お嬢様の部屋でさえベッドしかないのは、凄く驚きました。
ベッドしかないこの部屋で二人してベッドに腰を掛け話し合う。
「ヒルク、いつまで続くのかしら、こんな生活」
「しょうがない…。フェリスが帰ってこないんだ」
今はお嬢様の昼食が終わり、
片付けをした後、ここに戻ってきた所です。
「ねぇ、やっぱりフェリスを探すべきじゃないかしら?
お嬢様、フェリスがいなくなった日から
全然元気ないじゃない?」
「確かに、ずっとぼーっとしているような気がするな」
そう、お嬢様からフェリスが城を出たという話を聞いてから数日が経った。
その日から、今まで口数の少なかったお嬢様が
さらに話すことがなくなってしまった。
お昼の後のお話タイムが無くなってしまったせいでもあるんだけど…。
それでもお風呂で、背中をお流しする時
お嬢様に話しかけても、ええ、ぐらいしか返さなくなってしまった…。
「そうと決まれば、早速行くわよ!ヒルク!」
「待ってください!レイーヌ」
私はヒルクの言葉も聞かずに部屋を飛び出した。
後ろからヒルクの声が聞こえるけど、
ここで止まれば折角の決心が揺るいでしまうわ!
がちゃ
「あっ…」
玄関を開けた先には、今から探しに行こうと思っていたフェリスがいた。
「レイーヌ、待ってください…。外は危険、で…す?」
後から出てきたヒルクは私の隣に立って、
玄関にいた私たち3人はしばらく固まっていた。
「フェリス!帰ってきたのね!!」
「いえ、僕は……」
私はフェリスの腕を掴んで城の中に連れて行こうと思ったけど、
フェリスがその場から動こうとしなかった。
「どうしたんだ?」
「すみません、僕はもうお嬢様には会えません…」
力なく俯いて答えるフェリス。
何よ…。そんな風にしてたんじゃ、お嬢様と仲直りできないじゃない!
「フェリス!何を言ってるの!?
そんなんじゃ、お嬢様にウジウジするな!って言われてしまうわよ?
それに、ここに戻って来たってことは、気になるんでしょう?
お嬢様の事が……」
「……」
フェリスは俯いたままで何も言わない。
このまま、城にいて貰わなくちゃ。
お嬢様のためにも…。
「あのね!フェリス。
お嬢様、フェリスがいなくなってから元気がないのよ…。
お散歩もしなくなったし、午後のお話タイムもなくなったの。
食べる時とお風呂に入る時と
お手洗いへ行く時以外はもうベッドの中なのよ?
それにちゃんと寝れていないようだし…。
あなたが帰ってこないと、お嬢様、いつか病気になっちゃう!」
「!病気……」
よし!反応した、もうひと押し!
「治癒魔法じゃ、病気は治せないし…。
近くの街に行って医者を呼ぶとしても、私はエルフでヒルクはハーフエルフだから…
街に行った途端奴隷商に捕まれば、お嬢様の病気を治すようにお願いできない…。
フェリスがいなきゃ、お嬢様が死んでしまうわ!」
「お嬢様が……?」
「そうよ!」
まあ、死ぬって言うのは少しばかり大袈裟ではあるけど…。
フェリスが戻って来てくれるならいいわよね?
「お願い…。戻ってきて!」
何も言わないヒルクを肘でついて目線で訴えた。
「ああ、フェリスが戻って来ないと
お嬢様はずっと元気がないままだろうしな」
「ね?ヒルクもこう思ってるのよ?」
フェリスは俯いたまま、顔を上げない。
「フェリス……?」
フェリスの顔を覗きこんでみると、フェリスは静かに涙を流していた。
えっ、と…フェリスが泣いた?
「ぼ、僕は…なんてことを……」
「ふ、フェリス?」
フェリスは両手で顔を覆うと体を震わせていた。
「僕は、お嬢様を傷つけただけではなく。
お嬢様を危険な目に合わせていただなんて……!!」
えっ……。どうしよう。
まさか、こんなことになるとは…。
ちょっと言い過ぎたわね…。
さすがに死ぬのはありえないかしら…?
「フェリス?落ち着いて…ね?」
「ごめんなさい…お嬢様、僕はお嬢様に会わせる顔がありません!」
両手で顔を覆ったまま頭を左右に振り乱し始めたフェリス。
「フェリス!お嬢様だってきっと許してくれるわ!」
「いいえ!こんなどうしようもない僕なんて、
きっとお嬢様は許してくれません!!」
うそ…。どうしたらいいの?
どうしたら、フェリスを説得できるの!?!?
「うるさい!私の睡眠を邪魔しないで!」
「お、お嬢様……」
後ろからお嬢様の声が聞こえてきて一瞬ビクッとなった。
フェリスはお嬢様を見つめている。
「レイーヌ、ヒルク。お風呂の用意はしたの?
私、言ったわよね?さっさと用意してねって」
「「はい…」」
そういえば、お嬢様はそんな事を言っていたような気がする…。
やることはさっさと終わらせていたから、
自然とお嬢様の言葉を守っていたけど…。
「それと!フェリス!!」
「は、はい!!」
フェリスはお嬢様に何を言われるのかビクビクしているみたい。
「ここ数日、ロクな物を食べてないの。
夕飯はちゃんとした物を作って」
「お嬢様、僕は……」
フェリスは何か言い渋っている様子で、
不安そうにお嬢様を見ている。
「何?まさか、私の言う事が聞けないとでも言うつもり?
フェリスは、私の何なの?
言ってみなさい」
「僕は……お嬢様の………」
お嬢様はフェリスの目の前に立った。
「もう忘れたの?フェリス。
あなたは!私の!し・つ・じ!でしょ!?」
お嬢様はフェリスの胸あたりを人差し指で一文字一文字
刻むように突いた。
「はい!!」
フェリスは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「分かったなら、私を部屋まで運んで。
ここまで来るのにも疲れるんだから……」
「はい、お嬢様!」
お嬢様はフェリスに運ばれていく。
残った私はヒルクに言った。
「良かったわ!
一時はどうなることかと思ったもの。
ね?ヒルク」
「ああ、フェリスが帰って来てくれたお蔭で
お嬢様もいつもの調子に戻ったみたいだしな」
私とヒルクも後を追いかけるように城に戻った。




