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カインとアドレッド、フェリスと対面

丁度森に入ると言う所で、異変に気付いた。


「なぁ、アドレッド。この気配、魔族だよな?」


「ああ、そうだな。城の主かもな」


以前城に来た時には感じなかった魔族の気配が一つ。

女の子に会えるのか?


「こりゃ覚悟しなきゃいけないな。

アドレッド、お前だけでも引き返すか?」


「いいや、お前こそ引き返さなくていいのか?

今ならまだ間に合うぞ」


「冗談だろ?」


俺らは頷き合って城に向かった。

城に近づくにつれ、魔族の強さがヒシヒシと伝わってくる。


「この強さは魔族の中でも上の方だな」


魔王ほどの強さではない。

だが、魔族の中でも階級は上だろう。


「これほどの力を持つ魔族が何故こんな所に城を建てたんだ?

魔王にでもなる気か?

それにあの奴隷の女の子も気になる」


「女の事を考えるなら城の主を精々怒らせないようにしろ」


「分かってる」


アドレッドの言葉に頷いて答え、城を見据えた。

城の扉の前まで来ると、一度だけノックをした。


コンコン


ギギギ、そんな音が鳴りそうな扉が開いた。

中から出てきたのは女の子ではなく、

長身の男、恐らくこいつが魔族だ。


「この城に何か御用でしょうか?」


俺とアドレッドはとっさに腰にある剣に手を伸ばした。

目の前に現れればそいつの強さが本物だと分かる。


「お前がこの城の主か?」


「僕は違います。

今お嬢様はお休みになられています。

お嬢様に御用でしたら、この場はお引き取りください」


そう言って、魔族の男は頭を下げた。


今、この城の主は寝ている?

じゃあ、こいつは何だ?

話し方と服装からして執事か?

しかし…魔族が執事とは…。

魔族を従えてるなら、城の主はそうとう強いんじゃないか?

だが、魔力は感じない。

一体どういうことだ……?


「お前は?」


アドレッドが魔族の男に訊く。


「これは申し遅れました。

僕はお嬢様に仕える執事、フェリスと申します」


魔族の男はニコリと微笑むと、丁寧に腰から上体を曲げて挨拶をした。


「俺はドレン王国騎士団団長カインだ」


「同じくドレン王国騎士団副団長アドレッド」


お互いが名乗り合っても

俺とアドレッドは剣から手を離すことが出来なかった。

主が他にいるとはいえ、このフェリスと言う男も魔族に変わりないのだ。


「この城に奴隷の女の子がいるだろう?」


早速俺は要件を口にした。

相手が強いからと言ってビビッている場合じゃない。

一番は女の子なんだ。


「奴隷?」


「知らないふりをしてもこっちは分かっている!」


俺の声は少し震えていた。

しっかりしろ、俺!

こっからが肝心なところだろっ!


「奴隷の女などいませんが…」


魔族の男は不思議そうに答える。

そんなはずはない…。

まさか、隠し事をするつもりか?

それとも、もう女の子は捨てられたのか…?


「いや、前城に来た時に見たぞ!」


「カイン様にアドレッド様。

すみませんが、僕には覚えがありませんし、

現在、この城にいるのはお嬢様と僕だけです」


ってことは、捨てられたのか……?

俺はあの子を助けられなかったのか……?


「貴様!女の子の居場所を吐け!

じゃないと、斬るぞ!」


俺は腰に持っていた剣を鞘から出し、

剣の先を魔族の男の首に当てた。

もう、俺の中の恐怖は無くなっていた。

いや、無くなったわけではない。

この男に刃向うよりも、女の子を助けられない事の方が

俺には怖いことなのかもしれない。


「おい、カイン!」


俺にはアドレッドの静止の声は聞こえなかった。

俺はそれどころじゃなかった。


「うるさい」


魔族の男の後ろから声が聞こえた。

あの奴隷の女の子の声だ。

一瞬で頭に登っていた血が冷めていく。


「お嬢様、騒がしくしてしまい

申し訳ありませんでした」


お嬢、様…?

魔族の男の後ろから出てきた女の子を見てみると

手には枕を持ち、首には奴隷の首輪がなかった。

それにとても可愛らしい容姿をしている。


「別に…。何?またあなたたち?

二度と来ないでと言ったはずよ」


「お前…。この城の主だったのか?」


驚いて訊いてみると女の子は当然と言わんばかりに言った。


「そうよ。私以外に誰がいるの?

フェリスは私の執事だし」


信じられない。

一瞬で城を建てた魔族の正体が

こんな全然魔力を持たない普通の女の子だったとは…。


「アドレッド、俺の苦労って何だったんだ?」


「知らん」


アドレッドが素気ない…。

まあ、そうだよな。

元々、俺が奴隷の女の子がいるとか言わなきゃよかったんだからな。


「迷惑よ。帰って」


「そっか。奴隷じゃないのか…。

はあー、良かった」


ああ、何か安心すると力が抜ける。

俺はその場に座り込んだ。

それを女の子は訝しげな目で見てくる。


「分かったら帰って」


女の子は迷惑そうに言った。

でも、奴隷じゃないんなら良かった。


「俺はてっきりお前が、奴隷なんじゃないかって。

それで城の主に扱き使われて

ボロボロになってるんじゃないかと…」


俺の脳内では女の子が、

毎日生きてるのか分からないぐらいボロボロになりながら

過ごしている場面が浮かんでいた。


「そうだ!その魔族の男は大丈夫なのか!?

執事とか言ってるが、暴力とか振るわれてんじゃないのか!?」


俺は立って女の子の両肩を掴み、揺さぶりながら訊く。


「何ですか?それ。

誰がそんなことをおっしゃったんです?」


執事の男が訊いてくる。

執事の男はとても不愉快そうな顔をしている。


「別に。フェリスは私が扱き使ってるから」


女の子は俺の手を叩きながら言った。


「そうなのか?それなら、いいんだが…。

いやー、ほんと俺の勘違いで良かった!」


ほんと、ほんと良かった!

むちゃくちゃ安心できた。


「あ!俺、国王に怒られるんだった!

絶対、国王にはいないことバレてるよな?」


「そうだろうな」


「ほんとすまん!アドレッド。

俺の勘違いでお前を振り回して」


俺は顔の前で両手を合わせ、アドレッドに謝った。

今回一番アドレッドに迷惑掛けたよな?

これで、罰が重かったらどうしよう?


「はぁ……。ついていくと言ったのは俺だ。

それに、今更だろ」


「でも……」


アドレッドはいつだって自分の言動に責任を持っている。

だから、俺を責めないことは分かる。


「それとも、お前は罰を受けるのは嫌なのか?

仕事が増えるなら、騎士としての役割に勤めることが出来る。

訓練が増えるなら、騎士として強くなることが出来る。

自宅謹慎なら、仕事を休める。

そう思えば、罰というのも悪くない」


何か最初の2つはアドレッドらしい。


「ああ、そうだな」


アドレッドの言葉に自然と笑みが浮かんだ。


「いつまでそこにいるの?帰って」


今のやり取りをずっと見ていた女の子が

俺らに帰るように言う。


「そういや、どうしてここに城を造ったんだ?」


ちゃんと理由を聞いていなかった。

前に城に来た時に訊こうと思っていたことだったが、

結局訊きずじまいだった。


「帰ってってば」


「教えてくんね?」


「帰りなさい」


どんどん"帰れ"の言葉を積み重ねていくうちに

言葉に棘が出てくる。

ダメだこりゃ。

話す気はないらしい。


「なあ、何でそんな邪険に扱うんだ?」


「フェリス、追い払って」


「はい、お嬢様」


もう、言っても無駄だと感じたのか、

俺らを執事に任せたようだ。

女の子は踵を返して城の奥に戻り、

城の扉を執事が閉め、俺らに向き合った。


「どうやらお嬢様はあなた方がお嫌いなようですね」


「ああ、人間が嫌いと言ってた」


「なあなあ、なんであんなに人間を嫌いになったんだ?

親を人間に殺されたとかか?」


多分人間に対して何か悪い記憶があるんだろう。

同じ人間なのに。

少なくとも俺はあの女の子と仲良くしたいと思ってる。

不安要素が消えたとはいえ、女の子をほっておくことは

俺には出来ない。


「それは僕の口からは言えません。

あなた方を街までお送りしましょう」


俺とアドレッドが並んで歩き、

その後ろを監視するようについて執事が歩いてくる。

空気が重い……。

男の無言の視線もそうさせるが、

主に俺が国王の罰が気になってドキドキしていた…。





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