城を抜け出すカインとアドレッド
今日はさっさと任務の見回りを終わらせて
あの城に行くつもりだ。
国王に言えば止められるだろうから
一人で行くことにした。
こんな個人的な事情にアドレッドを巻き込めない。
最悪怒られることも覚悟しなきゃいけないからな。
さて、誰にも見つからず抜け出せるかどうか…。
目の前には国王の城の城壁。
「この高さなら何とかなるだろう!騎士団長を嘗めるなよ!!」
よし、登るか!
気合を入れて城壁に足を掛ける。
この城壁には侵入防止のために側面がツルツルと滑らかだ。
だから俺はすべり止めが付いている靴を用意しておいた。
これで登れるはず、なんだが…。
「何だ?これ…。
全然、止めれてないぞ!?」
城壁に引っ掛かるものの、だんだん足は落ちてくる。
「おい!この靴作ったやつ誰だよ!!
不良品じゃないか!!」
クソッ!どうすりゃいいんだよ!
考えろ、何かないか……?
「おい」
「うわあぁぁ!って、お前かよ…。脅かすなって」
心臓止まるかと思ったじゃないか…。
城壁の前でしゃがみこんで考えていた俺に、アドレッドが声を掛けてきた。
そのせいで盛大に立ち上がって驚いてしまった。
恥ずかし……。
「な、何だよ?アドレッド。きき、奇遇だな!」
ヤバい、アドレッドの目はどう見ても俺を疑ってる。
アドレッドの目が、お前登ろうとしてただろう、と言っている。
俺の全身から冷や汗が出ているのが分かる。
「お前、バカだな」
「はあ!何だよ、アドレッド!」
「こっちに来い」
ヤバい、絶対連れ戻される…!
逃げようと後ろを向いた俺に、
アドレッドは俺の服の襟をつかんで引きずる。
俺は城壁から離されてしまった。
何かアドレッドがずっと無言で歩き続けてる。
俺を引きずりながら…。
絶対アドレッド怒ってる、よな。
どうしよう…。国王に知らされて自宅謹慎にでもなったら……。
騎士として終わるし、ますますあの城に行けなくなる!
しばらく歩いていたアドレッドが扉の前で立ち止った。
「あ、あのさ。アドレッド…。
このことは国王陛下に言う、んだよな。
その、見逃してくれ!…って言ったらアドレッドも罰があるよな…」
どうすりゃいいんだ…?
「国王には言わない」
「ほんとか!
でも、アドレッドに罰が……。
そうか!俺の姿は見ていないことにすればいいんだ!
俺が一人で勝手に出て行ったことにすればいいんだよ!」
そうだそうだ。
元々そのつもりだったんだから。
大丈夫だろう…。
「その代り、俺も行く」
「は?何言ってんだよアドレッド!
正気か!?」
アドレッドはいつだって、国王に忠誠を誓っていて、
俺が間違ったことをしようとしていたらいつだって止めた。
今回だって、アドレッドに見つかれば
そのまま連れ戻されるとばかり…。
「ああ、お前はどうせ俺が止めても行くんだろう?
なら、俺も行く。魔族がいるかもしれない城に
一人で行かせるわけにはいかない。
俺たち騎士にとって一番大事なのは国王陛下だ。
それに俺たち騎士をまとめる、騎士の頂点に立つ団長も大事だ。」
「アドレッド…お前」
「と言っても、お前は騎士団長としての実力はあるが
統制力は皆無だ」
「はぁ…。否定できないことが情けないよ。
でも、いいのか?お前までついてきて。
国王に逆らうことになるんだぞ?」
国王に行くなと言われた、
それに逆らう形になる。
もちろん共犯者であるアドレッドも同じ。
「お前一人をみすみす殺されに行かせるより、
お前と罰を与えられるほうがマシだ。
ほら行くぞ」
「ありがとな!アドレッド!」
アドレッドは扉を開けた。
王宮内の地下室に俺を連れて来たようだ。
「何で、地下に連れて来たんだよ?
城に行けないじゃないか」
地下室に続く階段を下りながら
俺はアドレッドに質問をぶつけた。
「お前忘れたのか?
この地下には街に続く緊急避難通路が繋がってるじゃないか」
「そうか!その手があったのか!
てか、よく覚えてたな。
お前に言われるまで忘れてたよ」
確か騎士団長に昇格した時にアドレッドと共に
この地下の通路を教えて貰った。
国王の身に何かあった時に騎士が率先して
国王を連れて行けるように。と聞いたような?
「お前、やっぱ頭いいんだな!」
「お前がバカ過ぎるんだ…。
どこにあの城壁を登ろうとするバカがいるんだよ……
我らが騎士団長がバカでは下に就く者が苦労するんだ」
そういって、ため息をつくアドレッド。
「返す言葉もありません…」
そのまま地下室から隠し通路を通る。
通路は人一人が通れるほどの大きさだ。
分かれ道を右へ左へ曲がりながら、
長い長い通路をひたすら歩くと
眩しい光が差し込んできた
「やっと外だ!
うーん!やっぱ外の空気はいいな!」
俺はぐーっと背伸びをした。
通路の中は滅多に人が通らないこともあり
埃っぽくて空気が悪い。
「ほら、さっさと行くぞ。
早く終わるに限るからな」
「分かってるよ」
やっと城から出られた俺らは森へと向かった。




