温泉だいすき?(2)
「リューくん、露天風呂入ろ~♪」
「……えっと、ぼく、おさんぽに行ってくる! マサムネ、行こう!」
「わうん!」
せっかく温泉に来たんだけど、ケーコのおさそいを断ってマサムネと旅館のお庭へ出る。
ぼく、ちょっとだけ苦手なんだ、温泉。だっておうち(神殿)のお風呂より熱いんだもん。寒いときに入るのはいいんだけど、今日みたいに暑いときに入るのはちょっとね。
でもケーコってば、ほんとに温泉が大好きなんだよ。暑くても寒くてもここに来ると一日に何回もお風呂に入るんだ。夜になると「ツキミザケ」とか言って露天風呂でお酒を飲み始めちゃうしさ。
そしていつも決まって同じ歌を歌うんだ。「ニッポンジンノココロ」なんだって。あれ、一体なんの歌なんだろう??
「わうぅん!」
「あ、マサムネ! お池に入っちゃだめだよ」
マサムネは池の中で泳いでいるおさかなに夢中で、お庭の小さな赤い橋の上でぴょんぴょんしてる。今にも飛び込んじゃいそうだ。
本当はぼくだって、ぴょんぴょんしたいけどがまんしてるんだぞ。でもあぶないからぴょんぴょん禁止だってケーコに言われたんだもん。おとといベッドの上でぴょんぴょんしたらベッドがこわれて足の先をちょこっと切っちゃったの。びっくりしたー。治癒魔法が使える侍女さんがいてすぐに治してもらったんだよ。
最近ケーコのおひざにも座らせてもらえないし、大きくなるってちょっと不便?
でもね、ぼく早く大きくなりたいんだ。
だって、大きくなったらケーコをおよめさんにできるんだって。およめさんはだんなさまとずーっと一緒にいるんだよ。
ユリシアお母さまはお父さまのおよめさんなんだ。だからお父さまとお母さまはずーっと一緒なんだって。
なのでぼくも早く大きくなってケーコをおよめさんにするんだ! でも、大きくってどこまで大きくなったらいいのかな?
ちょっと前にこっそり人型になってみたらものすごーく小さかったんだ。せっかくケーコより大きくなったのに、人型だとあんなにちっちゃっくなっちゃうなんて!
だからあれから人型にはならないことにしたんだけど……
「ねぇねぇエリゼ。どのくらい大きくなったらケーコをおよめさんにできるのかなぁ? ここの屋根くらい? どうしたら早く大きくなれるの?」
おさんぽについてきてくれた侍女さんに聞いてみる。
「ぼくほかの子たちより成長が遅いってほんと? イセカイジンのケーコのせいだって、神官さんが言ってたんだよ。ぼくが大きくならないとケーコのせいになっちゃうの?」
すると侍女さんが
「まあ……。リューシオン様の成長が遅いだなんてことはないんですよ。ましてやケーコ様のせいだなんて。そのようなこと絶対にございませんわ」
だって。
「心配なさらなくても、今までどおりたくさん食べてよく眠ってきちんとお勉強されれば、成人される年にはちゃんとご結婚できますよ」
えーっ。成人しないとダメなの?
ぼく今14さいだから50さいになったらってことはあと……いち・にい・さん……36年? そんなにかかっちゃうの?
……なんだかちょっとがっかりしちゃったよ!
読んでいただきありがとうございます。
7/29 サブタイトルを変更いたしました。