第04章 見ているより、ずっと有能なんだから
第04章 見ているより、ずっと有能なんだから
**
黒田が我に返って追いかけた時、瑠美奈の姿は既になく、運転手が迎えに来て連れ去った後だった。
彼女は後悔の念に駆られた。自分は一体、何を恐れていたのか。瑠美奈が長橋貴明に自分の正体をバラすとでも思ったのか? 十五歳の少女が、元暴力団の組長と知り合いであるはずがない。
私はなんて自分勝手なんだ!
私の因縁は終わったが、瑠美奈の苦難は今も続いている。あんな風に彼女を帰してはいけなかった!
黒田は瑠美奈の携帯に電話をかけたが、すぐに切られ、一通のメッセージが届いた。「もう連絡しないでください。」
**
八時、青山がノックして入ってきた。「社長、高田秘書はもう上がりましたが、いつまで残業されるんですか?」
「もう少しよ。青山、出前を頼んでくれる?」
「いいですよ。何がいいですか?」
黒田は少し考えて言った。「ねえ、三十分待って。一緒に二丁目のあの中華料理店へ行かない?」
「いいんですか!」青山は思いがけない誘いに喜んだ。「予約しておきます。」
**
数日後の土曜日の朝、黒田がマンションで荷物を整理していると、突然激しくチャイムが鳴った。モニターを確認すると、なんと瑠美奈だった。彼女はすぐにロックを解除して彼女を招き入れた。
ドアが開いた瞬間、瑠美奈は黒田の胸に飛び込み、長い間押し殺した声で泣き続けた。ようやく顔を上げると、絶望に満ちた声で言った。「助けてください。」
*
瑠美奈は黒田のベッドに座り、スカートをまくり上げて脚を広げた。太ももの内側には、はっきりとした噛み跡があった。それは新しい傷で、その下には古い傷が重なり合っていた。見るも無惨な光景だった。
黒田は怒りと胸の痛みを抑え、優しく言った。「怖がらないで。消毒してあげるわ。」彼女は救急箱を開け、脱脂綿に水を含ませて軽く拭い、乾いてからイソジンを塗った。
痛みで瑠美奈の体が強張った。彼女は微かに眉をひそめ、涙をボロボロとこぼした。
黒田はスカートの裾を整え、彼女を抱きしめたが、どう慰めていいか分からなかった。
「誰なの?」彼女は静かに尋ねた。
「凛空です。」
*
十三歳の時、ある晩、父と母が舞踏会に出かけた隙に、凛空が彼女の部屋に来て、口を塞ぎ、彼女をレイプした。彼女はそれほど激しく抵抗しなかった。凛空がすべてを計算済みで行ったことだと分かっていたからだ。祖父の部屋は反対側にあり、完璧な防音設備が施されていた。家には執事やメイドもいたが、彼らは凛空の行動を止めることはできなかった。祖父は高齢で、父は無能。桐原家を実質的に支配しているのは凛空だったからだ。
彼がこんなことをしたのは、歪んだ愛からではない。単純な憎しみからだ。彼の生母である父・雅臣の最初の妻、玲子夫人は、雅臣の放蕩にずっと苦しんでいた。だが最後に彼女を追い詰めたのは、雅臣が女子大生に恋をしたという事実だった。かつての自分と同じ、女子大生に。雅臣が離婚を切り出すと、彼女は庭にある樹齢百年の桜の木で首を吊った。
一年後、雅臣はその女子大生、璃子――瑠美奈の母――と結婚した。その時、彼女は既に妊娠していた。
だから、この妹に対して、凛空には憎しみしかなかった。
*
「私、やっぱり死んだ方がいいのかしら。」瑠美奈は黒田を見つめた。その大きな瞳は空ろで、その年齢には似つかわしくない絶望と厭世観に満ちていた。
「そんなわけないでしょ。」黒田の心は血を流していた。彼女は優しく微笑んで言った。「凛空が死ねば、問題は解決する。そうでしょう?」
「彼は死にません。」瑠美奈は天井の隅に視線を向けた。「警察へ行って真実を話しても、桐原家は必ず彼を守りますわ。彼は後継者だから。桐原家には彼が必要だけれど、私は必要ないんです。私は気が狂うか、精神病院に入れられるだけ。お母様も、もし死んでいなければ、きっと気が狂っていたわ。」
「警察へ行く必要はないわ。私が解決する。」
「黒田さん、何を言っているんですか!」
「私のこと、瑠美奈も少しは知っているんでしょ? だから私を信じて。これ以上は聞かないで。」
瑠美奈は頷いたが、それでも不安げだった。
「心配しないで。ところで、運転手に送ってもらったの?」
彼女は首を振った。「いいえ、タクシーで来ました。本当は……に行こうと思っていたんですけれど、」彼女はその絶望的な言葉を飲み込み、また目を赤くした。「黒田さんがマンションの住所を教えてくれていたのを思い出して。この近くを通りかかった時、急に、離れるのが惜しくなって……。」
黒田は彼女を強く抱きしめた。「そんな馬鹿なことを考えちゃダメ! 全部私に任せて。私はあなたが見ているより、ずっと有能なんだから。」
**
桐原凛空が頻繁に出入りする高級バー「アルケー」は、東京の裕福な御曹司たちが集まるランドマークの一つだ。
凛空が個室に入ると、友人の白井が既に二人の女性を連れて待っていた。
「よお、凛空。」白井は立ち上がり、向かいの席を指した。「こっちへ座れよ。」
二人の女性も立ち上がり、熱心に挨拶をした。
凛空は礼儀正しく微笑んだ。「新しい顔ぶれだな、秀明。紹介してくれよ。」
「こちらは鳴海さん。銀座で陶芸スタジオを経営しているんだ。今夜は僕のパートナーさ。」
「もう、そんな言い方……。」鳴海は可愛らしく白井を叩いた。
「陶芸が本当に好きなんだな。」凛空の言葉には皮肉が混じっていた。
しかし、白井は気にしなかった。「親父みたいに、年寄りが作った『芸術品』をコレクションする趣味はないよ。僕が好きなのは美人が作った陶芸、それと美人そのものだ。」そう言って、彼は鳴海と意味深な視線を交わした。
「冗談はそれくらいにして、こちらの女性は?」凛空が黒田を見た。
「ああ、彼女は富原さん。スタジオの生徒だよ。及川が今夜、納得のいく相手が見つからないって言うから、鳴海さんに頼んで連れてきてもらったんだ。あんたは相変わらずお高く止まってるな、凛空……いい加減、愛してはいけない相手のことは諦めたらどうだ?」
凛空は眉をひそめた。「及川はどこだ?」
「もうすぐ来るよ。」
*
酒を酌み交わす中、黒田は密かに桐原凛空の一挙一動を観察していた。白井の言う「愛してはいけない相手」とは、瑠美奈のことなのか? 彼女は怒りに震えた。「愛している」など、侮辱も甚だしい! 自分の所業を「愛」だと思っているのか?!
お開きになり、凛空は一人で去り、鳴海は白井の車に乗った。
及川は黒田を見た。「富原さん、安心して。僕は無理強いはしない。君が僕に興味がないのは分かっているよ。ずっと凛空を目で追っていただろう。」
「そんなことはありません。」
「否定しなくていいよ。凛空がいれば、女の子が惹かれるのは無理もない。でも、あいつには心に決めた奴がいるんだ。君らみたいな雑多な女には興味がないのさ。」
「雑多な女」と呼ばれても、黒田は全く気にしなかった。目的は達成したのだ。及川とこれ以上関わる必要はない。彼女は微かに微笑んだ。「及川さんに見抜かれているのなら、取り繕う必要はありませんね。身の程知らずなのは分かっていますが、どんなに難しいことでも、試してみないことには始まりませんから。さようなら。」彼女は背を向けて去った。
及川は笑った。こういう裏表のない人間は嫌いではない。「富原さん、気が向いたらいつでも連絡してくれ。」
**




