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1500度の告白  作者: REI-17


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第02章 世界には本当に、これほど完璧な人間がいるのだ

第02章 世界には本当に、これほど完璧な人間がいるのだ

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日曜日は快晴で、六月ともなれば少し汗ばむ陽気だった。黒田は東屋に座って本を読んでいた。

九時過ぎ、紫陽花が両側に咲き乱れる小道に、ほっそりとした人影が現れた。桐原瑠美奈だ。彼女は画板を背負い、画材箱を手に提げて、一族の墓碑の前で足を止めた。

鈴木夫人が銀牙を連れて散歩から戻り、休憩のために東屋に立ち寄った。瑠美奈の姿を見て、感慨深げに言った。「瑠美奈お嬢様、またお母様のお参りに。本当に切ないわね。雅臣少爷と璃子夫人は仲が悪くて、数年前に璃子夫人は鬱を患って、最後は薬の飲み過ぎで意識が朦朧として階段から転落して亡くなったそうよ。まだ四十前だったのに。」

黒田は衝撃を受けた。名門に嫁いだ女の誰もが幸せになれるわけではないと知っていたが、このような結末はあまりに悲しい。

瑠美奈の心の中にどれほどの寂しさがあるのか、彼女は頻繁に墓地を訪れては、墓前の雑草や落ち葉を整え、果物を一つ供えていた。それが終わると、瑠美奈は適当な切り株を選んで腰掛け、紫陽花の茂みに向かってイーゼルを立て、絵の具を調え、真剣に写生を始めた。

*

鈴木夫人が銀牙を連れて去った後も、黒田は本を読み続け、時折瑠美奈の方へ目を向けた。

彼女の姿は、大学時代の高島先輩を思い出させた。高島先輩も瑠美奈と同じく裕福な家庭の出身で、容姿端麗、多才多艺、大学のアイドル的存在だった。黒田が初めて学園祭で彼女のバイオリン演奏を見た時、その姿に深く心を奪われた。

世界には本当に、これほど完璧な人間がいるのだと思った。

何とか口実を作って彼女と知り合いたいと願ったが、間もなく長橋金融による暴力的な取り立てに遭い、果てしないトラブルに巻き込まれた。学業に支障が出ないよう、目の前の困難を乗り越えることに全精力を注ぐしかなかった。それが彼女の人生における唯一の活路だったからだ。

たとえそんな出来事がなかったとしても、高島先輩のような「高嶺の花」は、ただ仰ぎ見ることしかできない存在だった。

昨年、先輩は財務大臣の息子と結婚した。今や彼女のいる雲の上は、仰ぎ見ることさえ困難な場所だった。

*

六月の天気は変わりやすい。先ほどまで晴天だったのが、急に暗雲が太陽を覆い、数分もしないうちに雨が降り出した。

瑠美奈は写生を中断して画材を片付け始めたが、雨脚は速く、大粒の雨がパチパチと音を立てて落ち、描きかけの筆跡を滲ませた。

「嫌だわ。」彼女は小さく不満を漏らし、片付けを急いだ。

そこへ突然、後ろから緑色の傘が差し出され、彼女と画板を覆った。

*

黒田は片手で傘を差し、もう片方の手で瑠美奈の画材箱を持ち、彼女を東屋まで連れて行って雨宿りをさせた。

「本当にありがとうございます。私は瑠美奈、桐原瑠美奈です。あなたは……?」

「黒田成美です。」黒田は下の方を指差した。「あそこの別荘で週末を過ごしているんです。瑠美奈さん、実は納骨の日にあなたをお見かけしました。お母様のこと、本当にお気の毒です。」

「母はとても苦しんでいましたから。死ぬことでしか安らぎを得られなかったのかもしれません。」瑠美奈は淡くと微笑んだ。その笑顔には数えきれないほどの悲しみが湛えられていた。

黒田はどう答えていいか分からなかった。

「初対面の方になんてことを。ごめんなさい。」瑠美奈はうつむき、何気ない仕草で目尻を拭った。「黒田さん、お母様の墓地のこんなに近くに住んでいらっしゃるなんて、羨ましいです。桐原家もここに別荘があればよかったのに。」

「桐原家なら、それは難しいことではないのでは?」

「黒田さんは桐原家のことをご存知なのですか?」

「少しだけ。明治時代から桐原家は数々の遠洋航路を所有し、莫大な富を築いただけでなく、日本の西洋文明化を推し進めた、社会の進歩の貢献者ですから。」

瑠美奈の表情がわずかに強張った。一族の栄光は遠い過去のことで、父・雅臣の代には、とうに腐敗し衰退した気配が漂っていた。

黒田も十五歳の少女には少し重い話だったと気づき、話題を変えて瑠美奈の絵について話し始めた。

*

雨はやむ気配がなかった。

瑠美奈は空を見上げ、諦めたように言った。「今日はもう無理ですね。また来週来ます。その頃まで紫陽花は咲いているかしら?」

「ええ、紫陽花の花期は比較的長いですから。」

「それを聞いて安心しました。」数分後、瑠美奈の運転手が迎えに来た。

黒田は彼女の荷物を運ぶのを手伝った。

車が出る間際、瑠美奈は窓を開けた。「黒田さん、また来週。」

**

「また来週」。この「約束」に黒田は密かに心を躍らせたが、次の週、瑠美奈は現れなかった。

彼女は東屋に座り、午後二時まで本を読み続けたが、心の中で自嘲した。あれは単なる社交辞令だったのだ。なぜ真に受けてしまったのか。

お腹がグーと鳴った。彼女は本を片付けて別荘に戻り、カップ麺にお湯を注いだ。

iPadを開いてYouTubeで見たい番組を選んでいると、突然チャイムが鳴った。

「鈴木さん?」黒田はインターホン越しに尋ねた。

相手は少し沈黙した。「いいえ、瑠美奈です。」

「瑠美奈さん! ちょっと待ってください。」彼女は少し慌てて、急いでドアを開けに行った。

瑠美奈は白い日傘を差し、申し訳なさそうに微笑んでいた。「ごめんなさい。黒田さんと約束していたのに、午前中に急用ができてしまって。お電話番号も知らなかったので……。」彼女は手に持った綺麗な紙箱を差し出した。「お詫びのしるしに、白桃の水羊羹を持ってきました。」

明確な約束だったわけではないのに、瑠美奈がこれほど真摯に謝るので、黒田はひどく恐縮した。「瑠美奈さんが謝るなんて。何時とは決めていませんでしたし、まだ約束の時間内ですよ。」

「黒田さんは、本当にお優しいのね。じゃあ、これをお友達になった記念の贈り物にさせてください。」

「お友達? ふふ、いいですよ。」黒田は、よく知らない少女をいきなり自宅に招き入れるのは失礼かと考えた。「じゃあ、少し待ってください。荷物を持ってくるので、一緒に東屋へ行きましょう。」

「でも、私……。」瑠美奈の顔に困惑の色が浮かんだ。「少し……ごめんなさい、黒田さんのお手洗いをお借りしてもいいかしら?」

「もちろんです。どうぞ、こちらへ。」

*

「ジュースか、蕎麦茶か、どちらがいいかしら?」黒田は、冷蔵庫に健康的な飲み物しか入っていないことを詫びた。

「蕎麦茶をいただけますか。」

「分かりました。」黒田は蕎麦茶を取り出し、瑠美奈と自分の分を注いだ。

「ありがとうございます。」瑠美奈が鼻をくんくんさせた。「黒田さん、何かお料理を? とてもいい匂いがしますわ。」

黒田は恥ずかしそうに言った。「実は、カップ麺なんです。きつねうどん。」

瑠美奈の目がパッと輝いた。「インスタントラーメンですか? 私、食べてもいいかしら?」

黒田は少しためらった。「お客様にカップ麺なんて……。」

「でも、私、一度も食べたことがないんです。すごく食べてみたくて。」瑠美奈は心から期待しているようだった。

「ああ、そういうことなら。」黒田は笑った。彼女はうどんを二つの小さな器に取り分け、一つを瑠美奈に渡した。

「ありがとうございます。では、いただきます。」瑠美奈は嬉しそうに器の中の半切れ油揚げを箸で摘み、ゆっくりと味わった。「ん、美味しい!」

その興奮した表情は演技とは思えなかった。家での高級な料理や食材があまりに日常すぎて興味を失い、かえって庶民的な粗野な味わいが新鮮に感じられたのだろう、と黒田は思った。

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