第五章 血の道しるべ
明け方、部屋には冷たい空気がよどんでいた。
東の空が白く染まり、鳥の声が聞こえ始める。
けれど、この館だけは夜のままだ。
何かが起きる――そんな確信が、背筋を冷たくした。
ギィ……と、廊下の奥で何かが軋む音がした。
私は思わず息を止める。
しんと静まり返った館に、その音だけが浮かび上がる。
するとドンドンと玄関のドアを叩かれ心臓が跳ねた。
「朔之介起きろ!大変だ!」
蘭丸の声だ。
僕は急いで体を起こし、玄関に向かった。
玄関を開けた瞬間言葉を失った。
廊下には、赤い点々が続いていた。
昨日までの血の匂いがまだ残っているのに、
これは新しい。まだ乾ききっていない。
「朔之介これ血だよな?」
「あぁそうだな……誰かが運ばれてるのか?」
僕らは慎重に跡を追った。
血の点々は廊下の角を曲がり、
閉ざされた客室の前を通り過ぎ、
奥の方へと進んでいく。
途中、窓から朝焼けの光が差し込む。
しかしその光は赤黒く濁り、
血の跡と混じって館全体が真っ赤に染まったように見えた。
「戻ったほうがいいんじゃないか……」
蘭丸が小声で言う。
だが足は止まらなかった。
血の跡は館の奥の扉の前でいったん途切れ、その扉は半開きになっていた。
扉の隙間から、冷たい空気が吹き出してくる。
普段は鍵がかかっている地下への入り口だ。
嫌な予感しかしなかったが、俺は懐中電灯を取り、ゆっくりと階段を降りた。
階段はやけに長く感じた。
一段ごとに軋む音が響き、背後から誰かに見られているような気がした。
地下室に着くと、空気はさらに冷え込んでいた。
懐中電灯の光の先に、古びた家具と鏡が見える。
そこからさらに、赤い跡が奥の暗がりへ続いていた。
足音を殺しながら進んだとき――
そこに、彼はいた。
ミステリーサークル匠瑛士が、椅子に座らせれてる形で置かれていた。
喉を深く切られ、血が足元に広がっている。
その姿勢は不自然なほど整っていて、まるで舞台の人形を誰かが設置したかのようだった。
血の跡は、瑛士の足元から始まっていた。
誰かがここまで引きずってきてそして、見せつけるように置いた――そうとしか思えなかった。
息を呑んだ瞬間、壁の鏡に赤い影が映った。
人型の影が、ゆっくりとこちらを指差し、
まるで笑っているように首をかしげる。
次の瞬間、地下室の扉が強い風で閉じられた。
ライトが揺れ、影が消える。
残ったのは、血と死体の匂いだけだった。
「……人間の仕業だ」
蘭丸が震える声で言った。
「紅影なんかじゃない……誰かが、やってる。」
その時、後ろから足音が聞こえた。
振り返ると航が立っていた。
彼は死体を見るなり、ただ静かに息を吐いて呟いた。
「……四人目か」
その顔に、恐怖は全くなかった。
まるで、これが当然と言わんばかりに
「俺みんな呼んでくる」
と言い蘭丸は部屋を出た。
私はその場に立ち尽くす。
明け方の光が窓から差し込む中、四人目の死体は冷たく座っている。
耳の奥で、心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
やがて、足音とざわめきが近づいてくる。
「嘘だろ……」「またかよ……」
次々と顔を出す人々。
全員が言葉を失い、ただその光景を見つめていた。
「こりゃひでぇ?ー」
廊下を見て海助が言った。
「アリバイを聞くんだろ?」
蘭丸が僕を見ていった。
「あぁそうだけど。」
「あるわけ無いでしょ、ある方が怪しいわ」
碧華が言った。
確かにそうだ、夜から明け方アリバイがある方が怪しい。
「はぁはぁ」
「美桜さんなんで息切れてるんですか?」
「……運動してた……」
こんな朝に?本当かもしれないが怪しい、廊下に血の跡を作り死体を座らせ戻るこれはかなり疲れるはず。
「アリバイがなかったらなんもできないな。」
蘭丸が言った、その通りだどうしようか。
誰もが口を閉ざし、重苦しい沈黙が落ちる。
互いの顔をうかがい、視線が交錯するたび、空気が冷たくなっていく。
「……犯人は、この中にいるんだよな」
英雄がつぶやくと、全員が一斉にそちらを見る。
「じゃあ、あんたじゃないのか?」
海介が挑発する。
「違う!」
「証拠は?」
声がぶつかり、空気が裂けるようだった。
私は唇を噛む。
――誰も信じられない。次に殺されるのは、私かもしれない。
「落ち着けよ!冷静になれよ!」
蘭丸が声を上げる。
「そうだなとりあえず飯食べるか。」
英雄がそう言うと食堂に向かってった皆もそれに続いて食堂に向かった。
皆は黙々とご飯を食べ、終わったら部屋へ戻っていった。
僕も食べ終わり部屋へ戻った。
「いつの間に」
部屋には蘭丸が寝転がっていた。
「何かわかった?」
「人の仕業ってことだけだ」
「そうか」
廊下後を見た感じ死体発見1、2時間前ってところ
だろう。
怪しいのは息を切らしていた美桜たがさっきから僕が怪しんだ人が死んでいる、どういうことなんだ?死体が発見されたときの航の反応も気になる。
「あーもう無理」
頭が痛くなってきた、横になろうかな。
「どうしたんだ?」
「頭が痛い」
「薬もらってくるよ」
と言うと蘭丸は出ていった。
「ありがたいけど、うるさい」
少しすると蘭丸が戻ってきた。
「あったよー」
薬を飲み横になった。
なんも進展がない、まず何でこんな事するんだ?ミステリーサークルに恨みがあるのか?サークルに恨みがある人がいたら、サークルの人達も何か反応があるはず、でも何もなかった顔を変えているのか?
「……ろよ……すけ」
誰かが僕の体を揺らしている。
「……きろよ……のすけ……めし」
誰だ?
「起きろ!!!!朔之介!!!!昼飯!!!!!」
僕は飛び起きた。
「ふざけるな殺す気か?」
「何回も優しく声かけただろ」
推理の途中で眠ってしまっていたのか。
部屋のテーブルにご飯が置いてある。
「ここで食うのか?」
「安全のためだって、でも夜飯はみんなで食うって」
さっきのことを落ち着かせるためだろう。
「美味かった。てか朔之介頭痛いの治った?」
「うん」
トントンと扉が叩かれた
「食器回収に来ました」
食器を勝也に渡すついでにミステリーサークルのことを聞いた。
「ミステリーサークルの人達ってよくここに来るんですか?」
「あーたまに来るねそんなミステリーサークルを父親は嫌ってるよ」
「どうしてですか?」
「紅影みを見に来るからね、父さん嫌い何だよ紅影の噂」
英雄には一応殺す理由があるのか。
「ねぇ蘭丸海介さんに殺す理由あると思う?」
「さぁでも明るい人ほど暗い過去があるって言うよね」
よく海介さんと話していたが海介のことなんも知らないな。
「碧華さんは?」
「ここの常連なんでしょ?なんかここに関係してるんじゃない?」
確かにミステリーサークルと碧華さんは会ったことがあるはずそこで何かあったのか?
でも何もわからないのは変わりない聞く相手間違えたか、他に聞く人なんて居ないけど。
もう四人死んでしまった、そんな事をした犯人を何としても探し出そう。




