第46話『犬神家との食卓』
【5月3日(日)正午/犬神家前 河田亜沙美】
犬神さんの家の前に立つと、
呼吸のリズムが、いつもの自分に戻っていく。
玄関越しに家の中の気配が伝わってくる。
どこかで足音がして、食器がかすかに触れ合う音。
その音が、さっきまでの緊張をやわらかく解いていく。
犬神さんの家に来るのは、今日が初めて。
それでも、不思議と足は止まらなかった。
(家で、ちゃんと予習はしてきた)
お母さんと一緒に何度も卵焼きを巻いた。
卵を割る力加減、フライパンを傾ける角度。
火を弱めるタイミングも——体が、もう覚えている。
それでも最初は上手くいかなくて、
何回か焦がしてしまったこともある。
でも今は、「これなら大丈夫かも」って思えるところまで来た。
(……卵焼きなら)
手のひらを、ぎゅっと一瞬だけ握る。
ピンポーン。
インターホンの音が、思ったよりも軽く響いた。
「はーい!」
すぐに返ってきた、いつもの明るい声。
その一声で、肩の力がふっと抜ける。
軽い足音が近づいて、ドアが開いた瞬間——
「わふっ、わふっ!」
「わっ……!」
小さな影が、一直線にこちらへ駆けてくる。
「ゲンキ、だめだってば〜っ!」
玄関の奥から、犬神さんの慌てた声が重なった。
そのまま足元に滑り込んできて、
しっぽをぶんぶん振りながら、私の周りをくるくる。
「……ゲンキ、っていうんだ」
きつね色のふわふわの毛並みに目を奪われたまま、
思わず頬がゆるんだ。
「……かわいい……」
気づけば、もうしゃがみ込んでいた。
ゲンキは、くんくんと匂いを嗅いだかと思うと、
ぴょんっと前足をかけてくる。
小さな肉球が、膝にちょこんと触れる。
そのまま背中を撫でると、
やわらかな毛の感触に、思わず息がこぼれた。
「ごめんね。ほんと、落ち着きなくてさ」
「ううん……大丈夫。名前の通りですごく、元気だね」
自分でも気づかないうちに、口元がゆるんでいた。
玄関先で立ち上がると、その動きにつられるように、
家の奥から足音が近づいてきた。
「いらっしゃい。ゲンキが大騒ぎね」
やわらかい声と一緒に現れたのは、犬神さんのお母さんだった。
エプロン姿で、穏やかな笑顔。
「今日はありがとうね。料理の練習だって聞いて」
「あ、いえ……こちらこそ。
河田亜沙美です。今日はよろしくお願いしますっ」
名乗りながら、ぺこりと頭を下げる。
「どうぞどうぞ。靴、そこに置いてね」
促されるまま、玄関に足を踏み入れる。
床板が、きし、と小さく鳴った。
奥から、もう一人。
「こんにちは」
落ち着いた声で、犬神さんのお父さんが軽く会釈する。
「今日は卵焼きだって? いいねぇ」
「は、はい……頑張ります!」
そう答えると、
「お、いい返事」と、やさしく笑ってくれた。
その横から、少しだけ遅れて――
小学生高学年くらいの男の子が、ひょこっと顔をのぞかせた。
じっとこちらを見つめている。
「あっ、こんにちは。……お姉ちゃんの友だち?」
「はじめまして。河田です」
そう言うと、男の子は一瞬だけ視線を逸らしてから、
「あ、うん。諭です。よろしくね」
少しだけ間があって、それから落ち着いた声が返ってきた。
(……前に話してくれた、弟さんだ)
そのやり取りを見ていた犬神さんが、どこか誇らしそうに言う。
「今日はね、河田さんと料理するんだよっ」
「へぇ。……お姉ちゃん、足引っ張らないようにね?」
「ちょ、ちょっと〜〜っ!ちゃんとできるもんっ!」
ぷくっと頬をふくらませる犬神さんに、お母さんがくすっと笑う。
「頼もしいわね、千陽」
その言葉に、犬神さんが照れたみたいに頬をかく。
その様子がなんだか可笑しくて、
私もつられて、つい小さく笑ってしまった。
足元では、ゲンキが相変わらず落ち着きなく、
くるくると回りながらこちらを見上げている。
「あとでね。いい子で待っててくれる?」
しゃがんでそっと声をかける。
「わんっ!」
言葉が通じたかどうかは分からないけれど、
ゲンキは一瞬きょとんと目を丸くした。
それでもまた、しっぽをぶんぶん振っている。
「ほんと元気だね。楽しそう」
思わずそう言うと、
「さっき公園まで走ったから、まだ楽しい気持ちが止まらないんだよっ」
犬神さんが、少し得意げに言う。
「きっと、“また一緒に散歩いこっ?”って思ってる」
「……通訳、だいぶ都合よくない?」
さとしくんが淡々と突っ込む。
「だってゲンキの気持ち、手に取るようにわかるんだもんっ」
そのやり取りを聞いて、お父さんもお母さんも楽しそうに目を細めた。
(……なんか、いいな)
こんなふうに笑い合える時間が、すぐそばにある。
だから――ここで、ちゃんと向き合いたいと思えた。
まだ笑い声の残るリビングを後にして。
「じゃあ、キッチン行こっか」
犬神さんに促され、私はそのままキッチンへ向かった。
足を踏み入れると――
冷蔵庫の低い駆動音。
換気扇のスイッチが入る、かち、という軽い音。
窓から差し込む昼の光が、白いカウンターをやわらかく照らしている。
「エプロン、そこにあるよ〜っ」
「ううん、大丈夫。持ってきてるから」
バッグからエプロンを取り出す。
(……よし)
エプロンの紐を、ぎゅっと少し強めに結び直す。
そのままシンクへ向かい、手を洗う。
さらさらと水の音。
指先の水気を拭き取って、ボウルに手を伸ばした。
「じゃあ、まず卵ねっ」
「うん」
卵をひとつ手に取る。
ひんやりした感触が指先に残った。
コンとボウルの縁で軽く割り、殻を開く。
……ちゃんと、割れた。
(よし)
続けて二つ目、三つ目。
ボウルの中で揺れる卵を見つめながら、砂糖をひとさじ、醤油をほんの少し加え、菜箸で静かに混ぜる。
「力入れすぎないのがコツだよ〜」
「……こう?」
「そうそう、その感じっ」
言われた通りに手首を使うと、
卵液の色がゆっくりと深まりながら、少しずつ均一になっていく。
(……思ったより、落ち着いてる)
自分でも少し意外だった。
「あ、あとね」
犬神さんが小さじを手に取る。
「ここでマヨネーズをちょっとだけ入れると、ふわっとするんだよ」
「え、マヨネーズ?」
「うん。冷めても固くなりにくいの」
とろり、と淡い色のマヨネーズが卵液に筋を描く。
そっと菜箸を入れて混ぜると、その線はすぐに卵の色に溶け込んでいった。
「……なんか、意外」
「大丈夫。焼くとちゃんと溶けるからっ」
フライパンを温める間、
犬神さんが横でコンロの火加減をそっと見てくれている。
じゅっ、と油をひいた音。
卵液を流し入れると――
ふわっと、やわらかな甘い匂いが立ちのぼった。
「……わ、もう匂いしてる」
思わず声が漏れる。
「でしょ? いい匂いしてもね、慌てないのがコツっ」
端が固まり始めるのを見て菜箸を差し入れる。
向こう側から、くるくると手前に巻く。
一瞬、手が止まった。
(……今)
思い切って返すと、端が少し崩れた。
「あ……」
「あるあるっ! 最初はねっ」
犬神さんは笑って、すぐフォローを入れる。
「形より火の通り! 中身だよ〜っ」
その言葉に――ふっと、肩の力が抜けた。
(……そうだった)
完璧じゃなくていい。
卵焼きは、向き合った分だけ、ちゃんと返してくれる。
――「おいしい」って言ってもらえますように。
*
二本目を焼き始めたころ、
犬神さんが冷蔵庫を開け、ゆっくりと何かを取り出す。
それは――
「さて……今日の主役っ」
「主役?」
「ブロッコリー!!!」
なぜか効果音が聞こえた気がした。
「……やっぱり出た」
「当然ですっ! 見て、このフォルム。この森感。底知れない可能性」
「森感って何!?」
ビシッ、と空中を指差す。
「栄養界代表選手の入場です!」
「代表なの!?」
「毛ヅヤ部門、集中力部門、メンタルケア部門――
三冠王っ!」
「部門が多い……!」
真顔で包丁を構える犬神さん。
とん、と小さな音がまな板に響く。
「緑の野菜はね、細胞レベルでテンションを底上げするの!」
「その理論、どこ情報?」
「わたし情報!」
即答だった。
包丁が軽快に動き出す。
「しかもね、ブロッコリーは美容にも効く!」
「……急に路線変わった」
「河田さん、最近ツヤ出てきたもん」
「えっ、どこが!?」
「なんかこう……内側から“きらーん”って」
「効果音付き!?」
「ブロッコリーは裏切らないからねっ」
「そんな忠誠心ある野菜初めて聞いた」
「むしろわたしが裏切らない! 一生ついていく!」
「野菜への覚悟が重い!?」
「しかもね、心にも効く!」
「心まで!?」
「落ち込んだときに食べるとね、“まあいっか”ってなるの!」
「だいぶ雑なメンタルケア……」
「でも効くの!」
「だからその根拠は?」
「わたしの人生!」
即答だった。
思わず、吹き出してしまう。
こんなふうに笑っていられるなら、ブロッコリーも悪くない。……好き、かも。
ブロッコリーを刻む音を横目に、二本目の卵を巻き終える。
火を止めてフライパンを脇に寄せると、次はポテトサラダ用のじゃがいもだ。
皮を剥いたじゃがいもをひとつずつ鍋に入れながら、
ふと、先輩たちの顔が浮かんだ。
「……そういえばさ」
ブロッコリーをボウルに移していた犬神さんが、
ぴたりと手を止める。
「先月ね、高橋先輩と九条先輩と一緒に、
学校の中庭でお昼ごはん食べたんだ」
「えっ、ほんと!? それ、どうだったの?」
「……正直、すごく緊張したよ。
場違いじゃないかなって、思ったし」
あのとき、
ちゃんと笑えているか、自分でもわからなくて。
ここに並んでいていいのかな、とほんの一瞬だけ思った。
でも——ふたりの声が、先にその場のかたさをほどいてくれて。
一拍置いて、それでも手は止めずに続ける。
「でもね、不思議だった。
ちゃんと……隣にいていいって、思えた」
「……うん」
「先輩たちがね、
“新しい扉はね、意外と静かに開くものなのよ”って言ってくれたの」
その言葉を口にした瞬間、
あの日の景色が、そっと重なった。
「……あの一言があったから、
わたし、生徒会に進むって決められたんだと思う」
少し照れくさくて、思わず視線を落とす。
「背中、押してもらった感じ」
犬神さんは火を弱めながら、ふっと笑った。
「背中押してもらったって思えるならさ――
それはもう、自分で歩いてるってことだよ」
その言葉が、静かに胸に落ちる。
「河田さんは、ちゃんと自分で決めたんだもん」
「……うん。ありがと、犬神さん」
*
ポテトサラダを混ぜているとき、
犬神さんが、ふと思い出したように言う。
「そういえばさ〜」
「どうしたの?」
「越智くん、メガネにしたんだよっ」
その名前に、鼓動がひとつ跳ねる。
でも——手は、止まらなかった。
「……えっ、ほんと?」
「雰囲気、ちょっと変わったかも」
ボウルをゆっくりとかき混ぜながら、
私は小さく息を整える。
「……越智くんって前から、そういうの似合いそうだなって思ってた」
言ってから、ほんの一瞬だけ顔を上げる。
「……あ、そうだ」
「なに〜?」
言おうか迷って、唇をいったん結ぶ。
けれど——いまなら、言える気がした。
「実はね……昨日、眼科行ってきたんだ」
「えっ!?」
「コンタクト、処方してもらって。
いま、家で着ける練習してる」
手は止めないまま、続ける。
「GW明けからは……
コンタクトで学校に行こうかなって思ってて」
言い終えたとき、
指先まで妙に落ち着いていた。
「そっかぁ……」
犬神さんが、やわらかく笑みを浮かべる。
「メガネ無しの河田さん、絶対似合うよっ」
「……ほんと?」
「うんっ。だって今、すごくいい顔してるもん」
「最近の河田さんね、迷ってない感じがする」
その言葉が、すっと自分の中に馴染んだ。
「……うん、ありがと。犬神さん」
誰かに追いつくためじゃない。
比べるためでもない。
私は――私のペースで、進んでいけばいい。
*
「……できた」
ポテトサラダを器に盛る。
卵焼きも、さっきよりずっときれいに巻けていた。
「うんっ、これは合格っ!よしっ、次いこ次〜!」
犬神さんが、嬉しそうにぱちぱちっと手を叩く。
「……えへへ」
今日は、ちゃんとできている。
料理も――気持ちも。ちょっとだけ、誇らしい。
卵焼きとポテトサラダを端に寄せると、
犬神さんが「よいしょ」と小さく言って、鍋を手前に引き寄せた。
「じゃあ、次はお味噌汁ねっ」
コンロに火をつけると、軽い点火音のあと、
静かな青い炎が立った。
鍋に水を注ぐ音が、やわらかく響く。
「今日のテーマはね、基本に忠実!ちゃんと時間かけよっ」
そう言って、
湯気の気配が立つ前に昆布をそっと沈める。
火を弱め、ふわりと削り節を落とした。
やがて、静かな時間のなかで、
やさしい香りがふっと立ちのぼる。
その匂いの向こうから――
リビングのテレビの音と穏やかな会話が、
やわらかくこちらまで流れてきた。
(……なんだろう、ほっとする)
思わず、小さく息がこぼれる。
「あ……」
「この匂い、落ち着くでしょ」
「うん……」
息を吸っただけで、肩の力がゆっくり抜けていく。
やさしい出汁の匂い。
わかめを戻し、豆腐を包丁で切る。
とん、とん。
その音が、さっきより少しだけ一定になっている。
「包丁、安定してきたね」
「……そう、かな?」
「うん。最初より、力抜けてる」
言われてみると、
包丁を握る手に余計な力が入っていない。
そんな自分に、少しだけ驚く。
味噌を溶くタイミングで、一瞬、手が止まる。
「……今でいい?」
「うん、今だよ」
おたまで少しずつ溶かすと、味噌がゆっくり広がっていく。
「……いい色」
「でしょ〜っ」
犬神さんが鍋からそっとすくい、
小さなお椀に移して私に差し出した。
「ちょっと味見する?」
湯気の向こうに、やわらかな琥珀色。
息を吹きかけて、そっと口をつける。
出汁のやさしさと、味噌のまろやかさが静かに重なっていた。
「……わぁ。ちょうどいい感じになってる」
火を止めると、鍋の中がしん……と静かになった。
——これなら、胸を張れる。
「じゃあ、最後は冷奴っ」
冷蔵庫を開けると、ひんやりした空気が頬に当たる。
パックから豆腐を出して、そっと水を切る。
「これはね、頑張りすぎない担当」
「……それ、ちょっと救われるかもっ」
「でしょっ?」
お皿に盛って、刻みねぎを少し。
「はいっ、河田シェフ!本日のメニュー、完璧に仕上がりました〜っ!」
「……ふふ。悪くないでしょ?」
並んだ料理を見て、思わず口元がゆるむ。
(……やった)
卵焼き。
お味噌汁。
ブロッコリーとポテトサラダ。
冷奴。
派手じゃないけど、ちゃんと“ごはん”だ。
「みんな呼んでくるね〜っ」
犬神さんが声を上げると、
キッチンの外が少し賑やかになる。
*
「できたよ〜!」
その声で、家族が順番に集まってくる。
お父さんが席を引き、お母さんが湯のみを並べ、
さとしくんは黙って椅子に腰かけた。
湯気の立つ味噌汁。
ふんわりと甘い卵焼き。
淡い色のポテトサラダ。
緑が映えるブロッコリー。
それから、ちょっと救われた冷奴。
テーブルの真ん中に、やさしい色が並ぶ。
「それじゃあ……」
お母さんが、にこっと笑う。
「いただきます」
「いただきます!」
声が重なった。
箸を取る。
一番に伸びたのは、卵焼きだった。
そっと持ち上げると、まだほんのりと温かい。
ひと口。
じんわりと、卵のやさしい甘みが広がる。
「……おいしい。ちゃんと向き合えた味だ」
そんな言葉が出たことに、少し驚いた。
「ほんと? よかったぁ〜っ」
犬神さんが、嬉しそうに身を乗り出す。
お父さんも一切れ口に運び、
「うん、これはうまいな」とうなずいた。
さとしくんは少し遅れて、ぽつりと。
「……ちゃんと、ふわふわだね」
それだけだったけど、
胸の奥が、そっとあたたかくなる。
箸をそっと置き、今度は味噌汁をひと口すする。
出汁の香りと味噌のやわらかさが、体の芯までゆっくり染みていく。
向かいから、やさしい声が届いた。
「味噌汁もいいわね。味、ちょうどいい」
「……ほんとですか?」
お母さんは、もう一口すすると、にこりと笑う。
「うん。ちゃんと料理と向き合った証拠ね」
その言葉に、もう一度料理を見つめる。
テーブルに並んだ景色が、少しだけ誇らしく思えた。
いったん置いた箸を、そっと手に取る。
ポテトサラダは、ほろりと崩れるやわらかさ。
ブロッコリーにも自然と箸が伸びた。
ふと視線を落とすと、
足元ではゲンキが尻尾をぶんぶん振っている。
「ゲンキ、ちゃんと待ってね〜っ。あとであげるから」
犬神さんに止められてしょんぼり座る姿に、
やわらかな笑いが広がる。
その輪の中で、私も自然と頬がゆるんでいた。
「河田さん、料理向いてるんじゃないか?」
お父さんが、湯のみを置きながら言う。
「えへへ……まだまだ練習中です。
でも、楽しくて仕方なくて」
自分で言ってみて、少しだけ驚いた。
“練習中”は変わらない。でも、そこに迷いはなかった。
少し間があって、さとしくんがぽつりと。
「……また作ってくれるなら、歓迎だけど」
「ほらね。ちゃんと届いてるよ。“また”って言ってもらえるの、嬉しいよねっ」
犬神さんが、にこっと笑う。
「……うん」
並んだお皿が少しずつ空いていく。
そのたびに、心も満たされていく。
向かいでは、お父さんとお母さんが穏やかに笑っている。
隣の犬神さんは、どこか誇らしそうで。
さとしくんは何事もなかったみたいにポテトサラダをつついている。
足元では、ゲンキが変わらず尻尾を揺らしていた。
(……また、料理したいな)
笑ってくれる顔を見るたび、
もう少し上手くなりたいな、って思う。
この笑顔の中にいられることが――
いまは、ただ嬉しかった。




