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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース3:両想いになりたい(エリカ編)
30/109

第六話

■■■

 学校の外にある噴水横のベンチに座っていたエリカは教室に戻ろうと腰を上げたものの、その気まずさに足がなかなか前に進まない。


(今日、どうしよう……このままサボっちゃおうかな? でもママに怒られちゃうかな……)


 その時、エリカはあの店のことを思い出した。


(あっ! そうだ……あの店に行かなきゃ……今すぐいかなきゃ! 行って私の願いを早くかなえなきゃ……)


 エリカは走った。ドリームショップがある街のほうへ向かい走った。が、途中で気づく。


(あー! 百万円! しまった……百万円がないと買えないじゃん! うちに戻って手に入れないと……)


■■■


 ギィー


 重厚な扉をゆっくりと開け、近くに誰もいないのを確認しこっそりと家の中に入る。


(ラッキー! 誰もいない! 今のうちに……)


 そう思い急ぎ足ながらも音を立てずに自分の部屋へと向かうエリカ。ちょうど自分の部屋への階段を上がろうとしたとき――――


「エリカお嬢様?」


 ギクッ!


 エリカの背後から聞こえてきた声に体がビクリと反応する。お手伝いの一人がエリカのそばまで行き、エリカに話しかけてきた。


「こんな時間にどうなされたのですか?」


 動揺していたエリカは振り向かずに階段を見つめたまま話す。


「いや、別に、あの……ちょ、ちょっと忘れ物しただけ!」

「あらまぁ! でしたらわたくし共に連絡を入れていただければ学校までその物を届けに参りましたのに」

「い、いいの、いいの! あなたたちにはいつも迷惑かけてるからね! こういうことはちゃんと自分でしないと! はははっ……あっ、急がないとっ! じゃ、じゃぁね!」


 さっさと話を切り上げたかったエリカは急いでいる様子を見せ、話をすぐに終わらせた。


 バタン


「はぁ……ギリギリセーフ……」


 エリカは自分の部屋のドアを開け、すぐ閉めるとそのドアにもたれかかり安堵の表情を浮かべた。


「さて、引き出しからあれを取り出しますか……」


■■■

 

 街の片隅にある一軒の小さな店。もちろんこの目立たない小さな店にほとんどの人は気が付かない。しかし夢を叶えたいと強く願うものだけが気づく不思議な店。


 ドン!!


「これで夢の液体売ってくれるんでしょ?」


 エリカは今、その不思議な店『ドリームショップ』に来ている。店を入ってすぐに百万円の札束をブランド物のバッグから取り出しカウンターに力強く置いた。そしてドリームショップの店員、夢子を睨み付けるように見ていた。

 しかし夢子はそんなエリカを気にもせず淡々と話を進める。


「はい、さようでございます。では百万円あるかどうか確認いたしますので少々お待ちいただけますか?」

「ごまかしてなんていないわ。ちゃんと一万円札が百枚あるわよ」


 夢子はエリカの目の前で器用に手先を使いながら手早く数えていった。


「はい、確かに百万円ちょうどございます。では西園寺様の夢の液体を取りに行ってまいりますので少々お待ちくださいませ♪」


 そう言うと夢子は踊りながら店の奥へと入っていく。


(これで、これでようやっと私の夢が……もうカウントダウンは始まってるのよね!)


 エリカは一生懸命笑いをこられながらも抑えきれず、つい顔がにやけてしまう。


「西園寺様、お待たせいたしました! これが西園寺様の夢の液体でございます。」


 その液体をまじまじと見るエリカ。


「へぇ、きれいな色ね~」


 その液体はまるで宝石のアメジストような綺麗な紫色をしていた。


「では、飲み方のほうをもう一度説明いたしますか?」

「大丈夫! わかってるわ。それよりも早く頂戴!」

「かしこまりました。では西園寺様、百万円と引き換えにこの夢の液体を受け取ってくださいませ♪」


 そう言うと夢子は夢の液体をエリカに差し出す。エリカはそれを素早くさっと取り、バッグの中に入れる。そして何も言わず店を後にした。


 バタン


 そんなエリカの後姿を見届けながらにこりと笑い挨拶をする夢子。


「ご利用いただき誠にありがとうございました♪」


■■■


「やったー! ついに夢の液体が手に入った!」


 店の外でうれしさのあまりエリカはガッツポーズをとる。しかし周りの視線が気になり、顔を赤らめその場から走り去って行った。


「ふふふっ♪ 西園寺様、本当にうれしそうですわね♪」


 一方、店の中で水晶玉を見ながら笑みを浮かべる夢子。


「しかし、波乱万丈な世界はこれからでございますよ。西園寺様の心のコントロールが鍵となりますわね。うふっ♪」


■■■


 学校が終わる時間までぶらぶらした後、エリカは家に戻った。


「「「「「お帰りなさいませ、エリカお嬢様」」」」」


 使用人たちが一斉に挨拶でエリカを出迎える。


「ただいま~♪」


 そのうちの一人が横の人の耳元でささやく。


「今日のエリカお嬢様、やけに機嫌がいいと思わない?」

「私もそう思った!」


■■■


 自分の部屋に戻ったエリカは早速、ドリームショップで手に入れた夢の液体をうれしそうに眺めていた。


「これですべて上手くいく! 私と星野君はラブラブなカップルになるのよ!」


 その時、ノックの音がゆかりの部屋に響き渡る。


 トントントン


 エリカは手に持っていた夢の液体を急いで引き出しの中に入れ、それを隠した。


「お姉ちゃん入るよ」


 そう言いながら入ってきたのはエリカの妹、ゆかり。


「な、何よ? 急に」

「ノックしたから急じゃないじゃない? もしかして……何か隠した?」


 ゆかりは疑うようにエリカの顔を覗きこむ。


「べ、別に何も隠してなんかいないわよ! そ、それより何か用なの?」


 明らかにゆかりの質問に動揺するエリカ。ゆかりはそれに気づきフッと笑みを浮かべる。


「はははっ! お姉ちゃん、わかりやすい! あ、いやぁ、くるみちゃんの新作DVDが最近出てさ、私もう見たからお姉ちゃんに貸そうと思ってこれ持って来たんだけど」

「あぁ、それならもういいわ」

「え? いいの? お姉ちゃんの意中の相手がくるみちゃんのファンなんでしょ? その人に貸してあげてその人の心を鷲づかみにする作戦はもういいの?」

「何? その作戦? 私一度もそんな作戦立てたことないんだけれど……」


 ゆかりの言葉にエリカは苦笑いを浮かべる。


「でもくるみちゃんで仲良くなろうとしてたでしょ?」

「フフフッ。もうそんなことしなくてもいいのよ。ってかそれよりもまだ横山くるみのファンなの? あんたが好きな青田くんだっけ? その人の彼女なんでしょ?」

「青田って誰よ……? 青木くんよ、青木くん! あぁ、まぁそうだけど、アイドルやってるくるみちゃんは私の今でも憧れの存在だから……ってかくるみちゃんの話、パパから聞いた?」

「え? くるみちゃんの話って何?」


 エリカはきょとん顔で尋ねる。


「ほら! くるみちゃんのお父さんがパパの会社で働いてるのかどうか? 聞いてみるってお姉ちゃん言ってたじゃん!」

「あ、あぁ~……そうだったわね……」

「もしかして、ってか絶対にお姉ちゃん、忘れてたでしょ?」


 ゆかりは頬を膨らませエリカを軽く睨み付けた。


「ば、ばか! この記憶力のいい私が忘れるわけがないでしょ!」

「わかったわかった。とりあえず私がパパにそのこと聞いてみるから」


 ゆかりが半ばあきれ顔で言葉を発する。


「それで話し戻すけど、もしかしてお姉ちゃん、その好きな人……えぇっと星田君だっけ? その人と両想いになったってこと?」

「あんた、それワザと間違えたでしょ?」


 ゆかりはバレたかと言うような顔をしながらテヘッと笑ってごまかした。


「これから両想いになるのよ。星野くんと!」


 「星野くんと!」のところを強調し、もう間違えるなよと顔で訴えかけるエリカ。ゆかりはそんな顔をするエリカに少々ビビりながらも疑問に思っていることを訪ねた。


「これから両想いになるってまだなってないってことでしょ? なんでそんなに自信満々なの?」

「え? いやぁ、まぁ……それにはいろいろとわけがあるのよ……」


 エリカは珍しく頭をポリポリかきながら明後日の方向を見て答えた。


「……ねぇ、お姉ちゃん」


 何かを悟ったかのようにエリカに語りかけるゆかり。


「な、何よ?」

「夢の液体買ったでしょ?」


 ビクッ!


「バ、バカ! か、買うわけないでしょ! そんなもの……」

「お姉ちゃんってば、ほんとわかりやすい! もうしゃべらなくてもいいよ。答えは分かったから」

「ちょ、ちょっと! 勝手に決めないでよ!」


 ゆかりは腕を組みエリカの部屋をうろうろと歩き回りながら話す。


「あんなに夢の液体を信用してなかった本人が買うとはねぇ~」

「だーかーらー! 違うんだって……」


 エリカはゆかりの言葉に必死に反論するもなかなかうまく言葉が出てこない。ゆかりがエリカの正面でピタッと足を止め顔を覗きこむ。


「ねぇ? それでいくらで買ったの? 十万円? もしかしてそれ以上とか?」

「言わないわよ!」


 エリカはそっぽを向いて答える。


「やっぱり! 夢の液体買ったんだね!」

「ちょ! うぅ……だましたね!」

「ほんと、お姉ちゃんって引っかかりやすーい!」

「マジでむかつくんだけど!!」

「それで夢の液体はどこに隠したのかな~!」

「ゆかり……」

「何よ? そんな低い声出しちゃって。男みたい! クック!」

「早く私の部屋から出ないとどうなるかわかってるんだろうね」


 エリカは俯きながらも強い口調でゆかりに言葉を吐く。しかしゆかりはそんなエリカの言葉に屈することもなく夢の液体を歌を歌いながら探そうとしていた。


「お姉ちゃんの~夢の液体は~どこ? どこ? どこかな~♪」



「出ていけ! さもないと殺す!!」



「?!」


 エリカの発した言葉はピンクを基調とした可愛いらしいこの部屋の一面に響いて伝わる。一瞬時間が止まった。ゆかりは目を見開き、口を開けたまま微動だにしない。


「あ……え……え……」


 驚きのあまりうまく言葉にならないゆかり。その光景を目の当たりにしてエリカはようやっと我に返る。


「あっ! ゆかり! ごめん! い、今のは違うの! 冗談! 冗談よ!」


 ゆかりはもちろんのことエリカも自分の発した言葉に動揺しておりオロオロしながらゆかりをなだめようとしたのだがゆかりは何も言わずエリカの部屋を出て行ってしまった。


 バタン


「ゆかりー! ごめん……」


 ゆかりが出た後の部屋のドアを見つめたままその場に立ち尽くすエリカ。


「なんでこんなこと言っちゃったんだろう……」


 つづく

こんにちは、プロットがなかなか書けないはしたかミルヒです!

プロット最後まで書くのってほんと難しいですね。正直プロット書かないでやってきたんですけど、そんなことするとやはりどこかでつまずいてしまうんですよね……苦手だけどしっかりやらねば!

ってなことで第六話を読んでくださりありがとうございます!

エリカちゃん、怖いですね。夢の中でも何かやらかしてしまいそうですね......

次回、父親の総一郎が金庫の中のお金がないことに気づいてしまいます。エリカは一体どうなってしまうのでしょうか?そしてついに夢の中の話がスタートします!

お楽しみに♪

ミルヒ

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