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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース3:両想いになりたい(エリカ編)
31/109

第七話

■■■


 午後六時。いつもの食事の時間が始まったのだが今日は食卓の場に重い空気が流れていた。ナイフとフォークが皿にカツカツと当たる音だけがこの部屋に響き渡る。エリカとゆかりはもちろんのこと、父親の総一郎と母親の洋子の間にも会話がない。


(パパとママ、ケンカしてるのかな?)


 エリカは二人の顔を交互に見つめる。それに気づいた洋子。


「エリカ、どうかしたの?」

「え? いや別に。なんでもない……」


 そう言ってエリカはちょっと大きめに切ったステーキを口に放り込む。その時にゆかりの顔をちらりと横目で見たのだがゆかりの表情は終始暗いままだった。

 そんなゆかりを見て罪悪感に苛まれるエリカは勇気を振り絞りゆかりに声をかけた。


「ゆ、ゆかり。あんたこれ好きでしょ? 半分あげるよ」


 しかしゆかりは無理して作ったような笑顔を少しだけ浮かべそれを断った。


「ううん、いい。お姉ちゃん食べて」


■■■

 

 夕食も食べ終わり自分の部屋に戻ったエリカ。


「あぁ……今日せっかくいい気持ちで夢の世界に入れると思ったのに。なんかビミョーな気分……」


 エリカはソファに寝転がり天井を見つめていた。


「あっ、ゆかりに聞こうと思ってすっかり忘れていたけど夢の世界に入ったらいいことばかり起こるんだよね?」


 ふとそんな疑問が頭に浮かぶもきっとそうだと信じ、エリカは深く考えないことにした。


「百万円払ったんだし、それだけの価値があるってことよね! 早く現実になる未来の世界を覗きこまなきゃ! っとその前に早くお風呂に入っちゃお!」


 そう言い下着を手に持ち、バスルームへ向かおうとするエリカ。自分の部屋のドアを開け廊下を歩き総一郎の部屋を通る。とその時――――


「ない! ない! なぜだ!!」


(ん? パパ?)


 総一郎の部屋から切迫した声が聞こえてきた。エリカは気になりその様子を見ようと総一郎の部屋のドアを少し開けて中を覗く。しかし中を覗いたところで総一郎の姿は見えない。


(もっと奥にいるのかな……)


 そう思いゆっくりと広い部屋の中へ入っていく。忍び足で総一郎の声が聞こえた場所をたどっていくとそこには金庫があった。


「あっ!」


 エリカはつい声を出してしまった。その声を聞いた総一郎は肩をビクッと動かしエリカのほうを振り向いた。


「あっ、エリカ!」

「パ、パ、パパ……」


 エリカの表情は強張り、体をプルプルと小刻みに動かしていた。


「ど、ど、どうしたんだ?」


 なぜか総一郎もエリカと同様に動揺している。


「い、いや……え……えっと……あ……」


 顔が強張っているせいかまったく言葉が出ないエリカ。


(どうしよう? バレちゃった? バレちゃったよね?! これからどうするんだろう?  警察呼んで犯人捜しするのかな……ヤバい! もしそうなったら……私……)


「ふ、風呂に入るんだろ? なら早く入ってきなさい」


 総一郎が額に汗をかき視線が定まらないまま口を開く。


「パ、パパ……あの……も、もしかして……け、警察呼ぶの……?」


 エリカはか細く声を震わせながら総一郎に恐る恐る尋ねた。


「な、なんでそんなことしなければならないんだ?」

「え……?」

「わ、私はただ、金庫の中を見ていただけだ……な、何も困ったことは起きてない……」


(え? どういうこと? パパは百万円がないことに気づいたんじゃないの? じゃぁ、さっきの発言は何だったの……?)


 エリカは動揺しながらも総一郎の発した言葉に対し疑問符を浮かべていた。総一郎のほうも今だに動揺していた。その証拠に目の焦点が定まらず脚が震えて今にも崩れ落ちそうな状態だった。


「な、何も大変なことは起きていない……何も起きてないんだ……そ、そんなことより早く風呂に入りなさい」


 エリカは総一郎の言葉と表情に懸念を抱きながらコクンとだけうなずき部屋を後にした。


■■■


(はぁ……さっきのは一体何だったの? お金が無くなったことにパパはビックリしてたんじゃないの? 明らかにパパ、動揺してた……でも何でもないって……どういうこと?)


 風呂から上がって部屋に戻ってきたエリカはソファにもたれかかり、先ほどの総一郎の発言について思考を巡らせていた。

 そんなことをずっと考えているうちに時刻は夜の十一時を回っていた。


「あっ! いけない、早く寝ないとっ!」


 そう言いエリカは机の引き出しを開ける。


「これを飲んだあと自分の世界が何もかも上手くいけばいいのに……うん。いくよね? 絶対に……」


 綺麗なアメジスト色の液体を数秒間眺めそしてエリカはそれを口にする。


 ゴクリ


「ん? 何も味がしない。これまさか水に色を付けただけなんじゃないだろうね?」


 空の瓶を疑惑の目でじろじろと見たものの今更疑ってもしょうがないと思いエリカはその瓶を机の上にコトッと置いた。


「まぁ、何かあればこの瓶を返せばお金が戻ってくるんだし。早く寝よっ!」


 そう言いエリカは部屋の明かりをリモコンのボタンで消した。電子音が静かな部屋に鳴り響く。


 ピッ


「星野君、待ってってね……」


■■■


「おい西園寺! 起きろ!」


 誰かが私を呼んでいる……


「はっ!」

「はっ! じゃないだろ? 今は授業中だろ! 寝るな! 授業に集中しろ!」

「すいません……」


 私、寝ちゃったのか……昨日は夢のような出来事があって、夜は全然寝れなかったんだよね……

 そう思いながら私は横にいる星野君の顔をちらっと見る。すると星野君も私に気づき軽く手を振った。とたんに昨日のことを思い出し顔が熱くなる私。

 星野君……私、昨日は本当にうれしかった……帰ってからこれは夢じゃないかと思い、何度もほっぺたをつねったよ。でもね……ほっぺがすごく痛かった。痛いのに嬉しいって生まれて初めてだと思う……


 そう私は昨日、星野君に告白された。


 放課後


「エリカ!」

「ほ、星野君?!」

「なにビックリしてんの? 帰ろっ!」


 だ、だって星野君、今私のこと、西園寺じゃなくて『エリカ』って呼んだよ?! 何なの? この心の底から湧き出る幸せ感! なんとも言えない! これが例のリア充ってやつ?! 


「……リカ? エリカ? おーい!」

「う、うわっ!」


 星野君の声で現実の世界に引き戻されて思わずのけぞってしまう私。


「なーにさっきからボーっとしてんのさ?」

「い、いや、だって……」


 私は今の真実をかみしめるたびに嬉しさと何とも言えない恥ずかしさが込み上げてくる。


「エリカ! 顔が赤くなってるぞ!」

「ちょっと、そんなこと言わないでよ。よ、余計に赤くなっちゃうじゃない……」


 案の定、私の顔は茹でダコそのものだった。


「さっ、行こっ!」

「うん!」


  

■■■


 土曜日、今日は待ちに待った初デートの日。昨日、下校途中に星野君からデートのお誘いを受けたのだ。その日、家から帰って私はすぐに行きつけのブティックに足を運んだ。あれでもないこれでもないと悩みに悩んだ挙句、ようやっと選び抜いた服を今、私は身にまとっている。白い生地の中に細めの黒いリボンがあしらわれた膝丈ほどの清楚な印象を漂わせるワンピース。その下には少しカジュアルダウンさせるために黒いくるぶしまでのレギンスを穿く。その上に薄い桃色の長袖ボレロを羽織る。


「うんうん、いい感じ!」


 自分の部屋にあるスタンドミラーに向かってポーズを決める私。


「ちょっとだけ予算オーバーしちゃったけど、買った甲斐あるよね! よしバッチリ! あっ、化粧まだしてないや~! ってもう九時半?! やっばーい!」


 私は急いで身支度を済ませ、時間が差し迫っていたので歩くのは諦めてお手伝いの華子さんに車を出してもらった。


「エリカお嬢様、準備ができましたよ!」

「ありがとう!」

「約束の時間は十時でございましたよね? 早く参りましょう!」


 私は、後部座席に座り一年前に買ったちょっと古いけどお気に入りのプルガリの腕時計を見る。


「華子さん五分前! 間に合う?」

「駅前でございますよね? 任せてください!」


 そう言うと華子さんは後ろを振り向き親指を立ててウインクをする。そして思い切りアクセルを踏んだ。


 キュルキュルキュルキュルウイーーーーン!! 


 とてつもないような車の悲鳴が聞こえてきた。


「うわーー!! ちょっと! あぶないよーーーー!!」


■■■


 十時ちょうど、駅前に到着。あまりの怖さにシートベルトを締めた上に窓の上にあるハンドグリップを手の汗とともに握りしめていた。


「エリカお嬢様、到着いたしました」


 華子さんは涼しげな顔で後ろを振り向き私に笑みを投げかけた。


「し、死ぬかと思った……」


 無事に到着したことで安堵したのか私は抜け殻状態になっていた。意識がもうろうとしながらもドアハンドルを引く。


「華子さん、ありがとう。今度は安全運転でお願いね……」


 車を降りて、華子さんに軽く手を振った後、私は星野君の姿を探した。

 星野君、まだ来てないのかな? 

 私が一分ほど星野君のことを探していると、星野君が家のほうから走ってやってきた。息を切らしながら星野君は私に謝ってくる。


「はぁはぁ……エリカ! うんぅ……ごめん! ちょっと遅れちゃった……」

「全然! 私も今来たところだから! それよりもちょっと休んで!」


 私は両手をぶんぶんと横に振りながら星野君をいたわる言葉も添えた。


「ほんと? よかった……ってかマジでごめんな……」

「もーう、気にしないでって言ってるでしょ! ちょっと座る?」


 私はめいっぱいの笑顔を疲れている星野君に捧げる。


「大丈夫だよ! もう落ち着いたから。それよりも早く出かけよう」


 星野君もかがめていた体をもとの姿勢に戻し私に微笑みを返してきた。


(う~ん! 星野君ってばなんてカッコいいの! スリムジーンズに赤のネルシャツ。そこからチラッと見える黒のシャツ。そして赤茶色のハンチング帽! 私服、超決まってる! 私の好みのスタイルだわ♪ そんなカッコいい私服を引き立てるのがこの中性的な甘いマスク、透き通った声、まさに美男子の中の美男子よ!!)


「エリカ?」


 星野君はうっとりしている私の顔を覗きこんできた。

 恥ずかしすぎて思わず私は声をあげそうになる。


「キャ……か、顔、近いよ!」

「どうしたの? 顔真っ赤にして」

「は、早く行きましょ!」


 つづく

こんにちは、はしたかミルヒです!

最近”みかちゃんフォント”というフォントを知りました。すっごく可愛いんですよ!文章を可愛くしたい場合にはもってこいですね!

ってなことで第七話を読んでいただきありがとうございます!

次回は、ついにエリカと純のデートが始まります。でもそう簡単には上手くいかないのがこの物語です(笑) お楽しみに♪

ミルヒ

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