第十話
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後日山本さん情報によると私が下ろされた理由は優香ちゃんの嫉妬心から来たものだと分かった。私と青木くんが仲良くしている姿を見て嫉妬した優香ちゃんは優香ちゃんのお母様にお願いして、私を下すように頼んだらしい。優香ちゃんのお母様のことだ。愛娘にお願いされたらどんなことでもするだろう。監督も言ってたけれどこれが大人の事情の正体だ。
とにかく理由が分かったことだけでも良かった……それに青木くんがあんなに必死になって私のために抗議してくれた姿を見たら――――
「っていやぁだーー!」
バシッ
「痛っ!」
「あ、ごめんなさい! つい、恥ずかしくなっちゃって……」
私は思い切り山本さんの背中を平手で叩いてしまった。
「青木くんのことだね。こうなったら青木くんに告白しちゃいなよ! ってダメダメ……マネージャー自らゆかりちゃんのアイドル生命を縮めちゃだめだよな……さっきのは聞かなかったことにしてね! はははっ……」
山本さんは途中からもごもご何かを言い始めたので正直『青木くんに告白しちゃいなよ!』ってところしか聞き取れなかった。
「だーかーら、私は別に青木くんのことは……何とも思ってないって言ったらウソになるけど……」
「わかった、わかった。とりあえず鏡見てみて。顔赤くなってるから!」
「もーう! 山本さんのバカ!」
「ほんとゆかりちゃんって面白いな! あ、ライブまであと三十分だからもうそろそろ準備しようか」
「了解!」
ここ最近の私はライブ活動に力を入れている。ちなみにドラマの話はあの一件からまだ一つも仕事をもらってない。でも私は女優になるためにアイドルになったわけじゃない。私は歌を歌いたいから、私の歌でみんなをハッピーにしたいからアイドルになったんだ。だから私は今後も音楽活動を中心にやっていくつもり。あ、でももちろんドラマや映画の話が来れば喜んで引き受けますよ(笑)
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「「「「「「「ゆかりん! ゆかりん! ゆかりんりん!! ゆかりん! ゆかりん! ゆかりんりん!!」」」」」」」
「みんな~ハッロー! みんなのアイドルゆかりんだよ~~!」
「「「「「「「「ウォーーーーーーーーーー!! ゆかりーーーーーーーん!!」」」」」」」」
「ではさっそく私の新曲聴いてください♪ 初めてのバラード曲です。『ユメノセカイ』」
♪♪♪気が付くと夢の世界にいた~あの人に出会うため~♪ 夢の中では「好き」って言えるのに~どうしてだろう? この世界では言えない~♪ 夢の中であの人と踊ってるの♪ 夢の中で一緒に笑ってるの♪ 夢の世界が本当だとずっと思ってたけど……でもこれは本物の世界じゃない~私が創った理想の世界……好きだよ、好きだよ~私の世界が永遠に~続きますように~♪♪♪
「「「「「「「ヒューーーーーヒューーーーーゆかりーーーーーーーーーーん!!」」」」」」」」
あぁ~気持ちいい……みんなが私を見てくれている。みんなが私の歌を聴いてくれる。みんなが私に声援を送ってくれる。本当に幸せ。このまま時間が止まってくれればいいのに……ん?! あの人、なんか見覚えのある……
「ゆかりちゃーん!」
え?! うそ……青木くん?!
なんと青木くんは私のライブをわざわざ見に来てくれた! しかも最前列にいる! ってなんで今まで気づかなかったんだ?! 途端に恥ずかしくなり、私は顔が燃えるように熱くなってしまった。
や、やだ……どうしよっ……青木くんの前で歌うのって超恥ずかしいんですけど! しかもラブバラードだし!
オロオロとしてしまう私に青木くんは気づいたのか声援を送ってきた。
「頑張れ! プロ根性見せろー!」
そうだ、私はプロなんだ……ここでまた歌えなくなるとかありえないよね!
目をつぶる。そして小さく深呼吸をし私は二番目を歌い始めた……
♪♪♪気が付くと私は現実にいた~戻りたくはなかったんだけど~どうしてだろう? このままじゃダメだって~思ってしまう自分がいた♪ 夢の中であの人と踊ってるの♪ 夢の中で一緒に笑ってるの♪ 夢の世界が本当だとずっと思ってたけど……でもこれは本物の世界じゃない~私が創った理想の世界……ダメだよ、ダメだよ~この世界を必ず現実に~しなくちゃね……♪♪♪
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「最高だったよ! 今日のライブ!! 初めて見に行ったけど、ゆかりちゃんのファンってたっくさんいるんだね~」
「あ、ありがとう……でも青木くん忙しいのに来てくれて……なんかごめんね」
青木くんに褒められるたびに頬を赤く染める私。もう私ったら単純バカ!
私たちはライブが終わった後二人でこっそり抜け出し、今、ライブ会場近くのカフェでお茶を飲んでいる。青木くんはすでに有名人なので帽子とメガネで変装し、一方、私はまだそれほど有名ではないのでNO帽子、NOメガネのままでオッケー。なんか自分でこんなこと言うのもなんだな……(苦笑)まぁ、変装とか面倒だしね。アハハハッ……
「なんで謝るんだよ~? 俺が勝手に見に行ったんだからさ。それにあんなにファンがいてなんか……なんか……嫉妬しちゃうっていうか……」
最後の方がよく聞き取れなくて聞き返した私なのだか――――
「え? い、いや、なんでもないから」
と言って青木くんは自分のコーヒーを一気飲みした。しかし――――
「熱っ!!」
「ちょ、ちょっと大丈夫? またなんで熱いコーヒーを一気飲みしちゃったわけ?」
「ごめん! もう大丈夫」
そう言いながら青木くんは顔を真っ赤にさせていた。
「ふふふっ! 青木くんってときどき面白いことするよね~」
「え? いやだって! あんなこと何度も言えないよ……」
「え……?」
まだ青木くんは顔を真っ赤にしたまま目を伏せている。一瞬時間が止まった気がした。
もしかして青木くん……青木くんも……
その時、青木くんは顔を赤らめながらもゆっくりと口を開いた。
「あのさぁ、ゆかりちゃんは知らないと思うけどうちの親父、西園寺グループの社員だったんだよ」
「えっ? そうだったの……?」
青木くんからその言葉を聞いた途端、私は罪悪感で胸がいっぱいになった。パパの元社員の息子さんが目の前にいてこの言葉が出てこないはずもない。私はその場から立って頭を下げた。
ガタン
「ご、ごめんなさい! うちの会社があんなことになっちゃって……」
「ちょ、ちょっと、なんで謝るのさ? 謝る必要なんて全くないよ。というかゆかりちゃんは関係ないだろう? 人生何が起こるか分かんないんだ。だからゆかりちゃんのお父さんを責めるつもりなんて毛頭ないし……ってか早く座ってよ!」
「でも本当に申し訳なくて……」
「でも親父がゆかりちゃんのお父さんの会社に勤めてくれて俺は本当に嬉しかったよ。って言うのもある時西園寺グループでの大規模なパーティーが開かれてね、その時家族全員でそのパーティーに参加させてもらったんだけどその時にゆかりちゃんもいてさ、初めてみた時に俺一目ぼれしちゃって……確か二年前だったからあの時俺は十七歳だったんだ。だからゆかりちゃんは十四歳だよね。この子と将来デートできたらいいなぁとか本気で思ってたんだよ。はははっ……バカみたいだろ? この間のドラマ撮影の時、『初めまして』なんて言ったけれど実はあの時は二回目だったんだよね。だから台本を見て君の名前があった時、正直信じられないと思ったよ。まさに奇跡だって。神様ありがとう! なんて心の中で言ってたしね。はははっ……だから……」
青木くんは何かを決心したかのようにつばをゴクリと飲みそして今度は青木くんが席を立ち私に伝える。
ガタン
「だから、このチャンスを逃したくないんだ! ゆかりちゃん、お、俺ともし良かったら……つ……付き合ってください!」
「青木くん……」
私は目を潤ませ青木くんの告白に答える。その答えはもちろん――――
つづく
こんにちは はしたかミルヒです!
突然ですが皆様、カレールーの隠し味に何を入れていますか?よく聞くのは、牛乳、コンソメ、チョコレート、あとはインスタントコーヒーとか...ちなみに私は必ずはちみつを入れています!(はちみつがない時はジャムでもOK!)いつもテーブルスプーン一杯くらいいれるんですけど、まろやかになって甘口カレーが好きな私にぴったりのカレーが出来上がります♪甘口カレーが好きな人はぜひお試しあれ♪
ってなことで第十話を読んでくださりありがとうございます!
次回は夢から覚め、現実の世界に戻った話です。はたしてゆかりは自分の未来に満足できたのでしょうか?
お楽しみに♪




