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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース2:アイドルになりたい(ゆかり編)
20/109

第八話

■■■


「ゆかりちゃん! ついに決まったよ!」

 某月曜日、山本さんが鼻をフンフンさせながら興奮気味で楽屋に入ってきた。

「とりあえず座ってくださいよ~。どうしたんですか? ライブの話ですか? それともグラビア?」

「違うよ違う! ゆかりちゃん、青木直人あおきなおとくんのこと知ってるよね?」

「青木直人って、去年のチュノンボーイ優勝者ですよね? 超カッコいいって学校でも有名ですよ」

「さっすが女子の心つかんでるなぁ……僕もああいう風になれたら……ってずれちゃった! えぇっと……」

 山本さんがチュノンボーイか……う~ん……無理! 想像できない(苦笑)

「あ、そうそう! その青木くんとゆかりちゃんがドラマで共演することになったんだよ! ってかドラマの出演オファーが来たんだよ、ゆかりちゃん!」

「ド、ドラマ?! わ、私、ドラマに出演できるんですか??」

 私は山本さんのその言葉に驚き、嬉しくて目をキラキラさせてしまう。

「そうだよ! 深夜枠のドラマなんだけどね、主役が青木直人くん、そして夏目優香ちゃんちゃん! ゆかりちゃんは優香ちゃんの恋のライバル役で出演するんだよ! ゆかりちゃんのセリフもたくさんあるし、その気になれば主役の優香ちゃんを喰える可能性だってあるよ! まぁ、それは演技力がものを言うだろうけど。でもでもすごくいい話だろ?」

「うわー! やりたい! ぜひやらせてください!」

 私は目を輝かせながらもちろんこの話を二つ返事でOKした。

 そして撮影の日を迎える――――


■■■


 まず初めにこのドラマの内容を説明しよう。原作は巷で今大人気の萌え系コメディ漫画『萌え燃えしちゃっていいですか?』をドラマ化したものだ。主人公のワタル(高校二年生)は、超がつくほどのオタク。しかしワタルの外見は超イケメン。そのイケメンぶりから、クラスの女子から絶大な人気を誇る。もちろんクラスメイトはワタルがガチオタだとは知らない。でも一人だけワタルがオタクだと知っている女子がいる。同じクラスメイトで幼馴染の萌絵もえ。萌絵はそんなオタク三昧なワタルを少しでもまっとうな人間に更生させようとする。しかしワタルにずっと付きっきりの萌絵を見て、女子たちは嫉妬する。その中でも女子のリーダー、姫子が彼女に嫉妬心を燃やす。萌絵もワタルの近くにいるうちにだんだんとワタルのことを好きになっていく。そんなワタルはと言うと、アニメのキャラクターに本気で恋をしている有り様。とにもかくにもそんな三人のオモシロおかしな恋模様を描く萌え系コメディなのだ。

 主人公のワタルを演じるのはもちろんこの人、青木直人くん。ワタルの幼馴染の萌絵役を夏目優香ちゃん、そして私の役は萌絵の恋のライバルでクラスの女王様的存在、姫子!

「姫子かぁ! 台本を読んでると漫画に負けないくらいぶっ飛んでる役ね~(笑)でもでも面白そうな役! よーし、萌絵役の優香ちゃんに負けないくらいの勢いで演じてやるわよ!」

 私の目はスポ根野球漫画のようにメラメラと燃えていた。

「あのぉ、西園寺ゆかりさんですか?」

 私が闘志を燃やしていると背後から爽やかな男性の声が聞こえてきた。振り返るとまさにルックスも爽やかな男性が私の目の前に立っていた。はっきり言って誰もが認めるほどの超イケメンだ! 王子様フェイスの彼につい見とれてしまう。

「あのぉ……?」

「あ、はい?」

「西園寺ゆかりさんですよね?」

「あ、はい! 西園寺ゆかりです。あ、あの、あなた様は青木直人さんでよろしいんですよね?」

「はい。初めまして、青木直人です。今日はよろしくお願いします!」

「よ、よろしくお願いします」

 つい顔を赤らめてしまう私。

 もうバカバカ! 赤くなってどうすんのよ! 私と青木くんはあくまでも共演者なんだから恋とかそんなのはご法度よ!

 私は自分を引き締めるために両手で頬をパンパンと叩いた。

「ゆかりちゃん! また共演できてうれしいわ!」

 私の両肩を掴んでそう話しかけてきたのは夏目優香ちゃん。相変わらず優香ちゃんは今日も可愛いかった。

「優香ちゃん! 私も優香ちゃんとまた仕事が出来てうれしいよ! よろしくね」

「恋のライバル役としてお互いに頑張りましょうね!」

 なぜだろう。初めてのドラマなのに緊張しない……というのはウソだけど、でも今回の緊張はとても心地がいい緊張感。どちらかと言えばワクワク感の方が強いかも。台本もみっちり読んできたし成功させる自信がある! よし行くぞ!


 ドラマはワタルとアニキャラ『みいたん』のアブナイ妄想(深夜枠なのでちょっとくらいのエッチシーンはOK)からはじまりヒロインの萌絵が家まで迎えに来たときに玄関のチャイムの音で目覚める。起きたばかりでまだ何も学校に行く支度をしていないワタルに萌絵が叱咤するシーン。

「では、最初のシーンいきます! よーいアクション!」


 カチン!


 撮影は順調に始まった。

 青木くん、初めて主演務めるのに堂々としてる。まさにワタル本人だよ。上手いなぁ……

 ちなみに私はこのドラマ出演が決まってから、原作の漫画を読みまくった。

 うわ! 優香ちゃんも上手! 萌絵がそのまま漫画から飛び出してきたみたい……とにかくかわいい!

「カーーーーーーット!」


 カチン!


「上手くいってよかったね、直人くん!」

「うん、次のシーンも頑張ろう!」

 二人がお互いを見つめながら話してる……美男美女だからすごく絵になるけど、なんだろう? このモヤモヤ感……いやいや、みんな共演者なんだ! さっきも言ったでしょ! あくまでも共演者! そこに色恋ごとを持ち込んじゃダメ! ゆかり、しっかりするんだ!

 また私は自分を引き締めるためにもう一度頬を二回叩く。

「ゆかりちゃんどうしたの? 気合入れ? 面白いね!」

 そこに声をかけてきたのはなんと青木くんだった!

「え? いや……まぁ……はい……そ、そんなところです……」

 途端に顔を真っ赤にする私。

「次のシーンから姫子も登場するからね。一緒に楽しもうね!」

「は、はい!」


「では次、教室でのシーンいきまーす! スタンバイオッケーっすか?」

 自分は姫子。姫子なんだ……ゆかりよ、姫子の仮面をかぶれ……ん? これってかの有名な演劇漫画? そう思った瞬間私の目は白目になった。シャキーン!

「ゆかりちゃん?」

「はっ!」

 優香ちゃんに現実の世界に引き戻され黒目に戻った私。

「準備はいい?」

「あ、はいOKです!」

「では本番行きまーす! 教室でのシーン、よーいアクション!」


 カチン!


 ガラッ

 教室の戸を開け、ワタルと萌絵が同時に入ってくる。

「おはよう」(ワタル)

「おはよー!」(萌絵)

 教室の窓際で女子たちが会話。

「最近、あの二人一緒に登校してくるわよね?」(女子A)

「萌絵がワタル様の家に毎日迎えに行ってるらしいわよ!」(女子B)

「ほんと?! 何様のつもりなのかしら? 姫子さんもそう思いま……」(女子C)

 女子たちが姫子の顔を見て血相を変える。

(私は姫子……よし発動しろ!)

「あ、あのアマァ……よくもワタクシを差し置いてワタル様と……!」(姫子)

「……姫子さん?」(女子A)

 姫子、大きい声で叫ぶ。

「許せませんわ!!」(姫子)

 みんな姫子に注目。姫子はツカツカと萌絵とワタルのもとに近づく。

「ちょっとそこのボブヘアのオンナ!!」(姫子)

「え? わ、わたしのこと?」(萌絵の後ろにいた牛乳瓶厚底メガネのモテない女子)

 ちょっとあっけにとられながらも仕切り直して萌絵に指差す姫子。

「……ちがーう! あなたよ! 萌絵さん!!」(姫子)

「私……ですか?」(萌絵)

「はっきり言わせていただきますわ! ワタクシのワタル様にちょっかい出さないでいただきたくてよ!!」(姫子)

「ちょっかい?」(萌絵)

「そうよ! ゴキブリのように毎日ワタル様の近くをウロチョロしてるでしょ? ワタル様が迷惑していますわ!!」(姫子)

「そうなの? ワタル?」(萌絵)

「いやぁ、別に、萌絵のことなんて気にも留めてなかったけど……」(ワタル)

 ワタルの言葉にショックを受ける萌絵

「え……?」(萌絵)

「ほ~ら、ごらんなさい! ワタル様はあなたに興味が全くなくってよ! ワタル様にとってあなたは虫以下なのよ! オーホッホッホ!!」(姫子)

 真面目な顔で言葉を発するワタル。

「あの……俺は……みいたんがいれば幸せなんだ!」(ワタル)

 ひどく動揺する姫子。

「み、みいたん? だ、誰でございますの? みいたんって誰ですのよー??」(姫子)

 頭を抱え込む萌絵

「はぁ、またそれか……このオタクが……」(萌絵)

「カーーーーーーーーット!」


 カチン!


「ゆかりちゃ……」

「ゆかりちゃん!!」

 優香ちゃんが私に声をかけてきたのと同時に青木君も私に声をかけてきた。青木くんの方が声が大きいかったので、優香ちゃんの声はかき消される形となってしまう。

「ゆかりちゃんの演技めちゃめちゃ良かったよ! まさに姫子そのものだね!」

「あ、ありがとうございます……」

 なぜだろう? 青木くんに褒められると本当に嬉しい……でもなんだか恥ずかしい!

「俺さぁ、姉貴の影響で原作の漫画のファンになっちゃってさ、かなりハマっちゃってるだけど、姫子のキャラ、結構好きなんだよね! だからゆかりちゃんの姫子を見た時、かなり驚いたよ!」

「そ、そうなんですか?! 実は私も姫子のぶっ飛んだキャラが好きで……姫子の行動ってなんだか憎めませんよね!」

「ねぇ、ところでその髪ってカツラ?」

 そう言いながら私の髪をまじまじと見てくる青木くん。恥ずかしさのあまり一歩下がってしまう私。

「ち、ちがいますよ! じ、地毛です。ヘアアイロンで縦巻きにしたんです」

 しばらく青木君と話をするうちにわかったことがあった。

あれ? 私、青木君と自然に話してる?! それになんだか青木君と話してると心地いい感じ……

 その時ふと誰かの視線を感じた。なんだかすごく視線が痛い。でも気のせいかな……と思ったその時……

「直人くん! 次の撮影始まるよ! 早くスタンバろう!」

 優香ちゃんが青木君の背中をポンッと押しながら準備を促す。

「おう、そうだな! ゆかりちゃんは?」

「あ、次のシーン、わた……」

「次のシーンは私と直人くんだけだよ! 早く早く!」

 私の言葉を遮り優香ちゃんが青木くんに話す。なぜか優香ちゃんは私の顔を一切見ようとしない。

「二人ともがんばってね!」

「おう!」

「…………」

 私が声援を送っても優香ちゃんは返事もせず、その代りなぜか冷たい視線を私に送ってきて私と目が合うとすぐにそらし青木くんの方を向いてしまった。

 優香ちゃん……? もしかして怒ってる? でもなんで……?

「次のシーン始めまーす! スタンバイオッケーっすか?」

「では、ワタルと萌絵の放課後のシーンいきまーす! よーいアクション!」


 カチン!


 撮影は順調に進んでいった。でも私は優香ちゃんのあの態度が気になって仕方なかった。自分は何か優香ちゃんに失礼なことでもしたんじゃないのかとか、それとも私の演技に優香ちゃんが納得いってないとか……そんなことを考えているうちに頭が痛くなってきた。

 うぅ……ヤッバイ……かなりひどくなってきた……

「カーーーーーット!」

 下校シーンの撮影が終わって戻ってくる二人。仲睦まじく話し合っている二人を見てなぜか切なくなってしまうが――――

 頭痛いよ……次のシーンは姫子も登場するし、どうしよう……

「どうしたの? 大丈夫? 顔色悪いよ」

 なんと私の体調の悪さに気づいた青木くんが私の側に来て話しかけてきてくれた。

「いや、ちょっと頭痛が……あ、でも大丈夫です。大したことないんで。はははっ……」

「いや、でもどう見ても大したことありそうな顔色だよ? 熱でもあるんじゃない?」


「え?!」


 そういうと青木くんは私のおでこに手を当てた。

 ど、どうしよ~! 余計に目が回る~~!

 私の顔色は一気に青から赤へと変わった。

「やっぱり、熱いよ。ちょっと監督に言って次のシーン後回しにしてもらおうか? 先に別のシーンやっても問題ないと思うし」

「い、いや、でもみんなに迷惑かけるし……」

「でもそんなんじゃ、姫子の演技できないだろ? 体調を万全にしてからじゃないとあのぶっ飛んだ演技はできないよ! 監督だってそんな状態での姫子の演技は許さないと思うよ」

「青木くん……」

「さぁ、行こっ!」

「ちょ、ちょっと直人くん、待ってよ!」

 青木くんが私を休憩室に連れて行こうとした瞬間、優香ちゃんが不安そうな声で青木くんを止めた。

「なに?」

「い、いや、この後すぐ本番はいるよ?」

「すぐ戻るから。先にゆかりちゃんを休ませてあげないと!」

 青木くんがそう言った後優香ちゃんが一瞬私を睨み付けた。

 ゆ、優香ちゃん……? あぁ、きっとこんな時に具合悪くなる私に怒ってるんだ……

「あ、青木君、私なら大丈夫。一人で行けるから……だから早くスタンバイして?」

「いや、でも……本当に大丈夫?」

「あ、ほらマネージャーの山本さん戻ってきたし! 山本さーん! ね、だから青木くんは私じゃなく撮影に集中して」

「無理しないでね。早く元気になってね。俺、ゆかりちゃんの演技大好きだから……」

 そういうとなぜか青木くんは頬を赤く染めた。それにつられて私も顔を赤くする。

「直人くん、早くしてよ! 撮影始まるよ!」

 待ちかねて青木くんの腕を引っ張る優香ちゃん。

「じゃ、じゃぁ!」

 つづく

こんにちは はしたかミルヒです!

最近、ClariSクラリスの歌にはまっていまして毎日聞いております!俺妹の主題歌にもなったIronyも好きですし、三枚目のアルバムの中に入っているTimeという曲もめっちゃ好きです!もちろんまど☆マギの歌も好きですよ!ってか彼女たちの歌声は透き通っていてそれでいて超かわいい!

ってことで第八話を読んでいただきどうもありがとうございます!

次回、ゆかりは、芸能界の怖さを知ります...

お楽しみに♪

ミルヒ

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