第十一話
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次に俺がやるべきこと。それは、親父に謝らなければいけないこと。しかし今の気持ちが複雑すぎて正直会う気がしない。でも謝らなければ俺の気持ちが収まらない。俺は、茜に電話した。
プルルルルルッ、プルルルルルッ。
「もしもし、ノボル?」
「もしもし、茜……あの……さっきはゴメン!」
「え?」
「いや、あのさっき途中で病室から抜け出しちゃったろう?」
「あぁ、気にしてないよ。だってお義父さんから突然あんなこと言われて気が動転しないほうがおかしいもんね……」
「お、親父は……?」
「お義父さんなら帰ったわよ。まぁ私も自分家にもういるのだけれど」
俺はため息をついた。まだ病院にいるのなら急いで駆け付けたかったんだけれど……
「そっか……」
「あ、そうそう。お義父さん、ノボルの入院費払ってから病院を後にしたけれど、お礼言ったほうが良いかもね」
「え? 親父が? お、俺の入院費を??」
親父……
「早く、お義父さんの所に行ってあげなさいよっ!」
そう、俺も一刻も早く親父の所へ行きたい気持ちは山々なのだが、親父が一体どこに住んでいるのか全く知らない。
「茜、親父の住所わかる?」
「もちろん、メモの準備はいい?」
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俺は走った。茜から住所を聞いたあと俺は親父に謝り、そして入院費のこともお礼を言わなければいけないと思い全力で走った。そして――――
「見つけた……ここが親父の住むアパート……」
築三十年以上は優に過ぎているであろう今では珍しい木造二階建てのアパートだ。表札には『金子和夫』と書いてある。
よし!
俺は気合を入れて父の住む二階三号室のドアをトントンとノックした。
…………
「あれ? いないのかな?」
もう一度ノックする。
「お、親父? いるのか?」
すると――――
ガチャ!
「ノボル?! お前、ど、どうしたんだ??」
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俺は初めて親父の家に上がった。六畳一間の俺の住んでいる部屋から見ればかなり狭い家だ。
「狭いかもしれないけど適当に座ってくれ」
そう言うと親父は俺のために冷たい麦茶を小さな食卓テーブルの上に置いてくれた。
「さ、サンキュ……」
なぜか緊張して麦茶を持つ手が震えてしまう。
そして親父も俺の近くに座った。
「「…………」」
親父も俺も何もしゃべれなかった。きっと親父も緊張しているのだろう。しばらくの間沈黙が続く。
「お、親父!」
でも俺はここで麦茶を飲みに来たわけじゃない。そう、俺は親父に謝るためにここに来たのだ。
俺は親父の顔をじっと見つめそして――――
「ノ、ノボル?? き、き、急に、ど、土下座なんてどうした?!」
親父に土下座をし、精いっぱい謝った。
「本当に今まですいませんでした!! これが俺の今の気持ちです!!」
「ノボル……そ、そんな、よしてくれ! 早く顔を上げるんだ!!」
親父は俺の土下座をしている体勢を元に戻そうとした。
「ほんと、俺……今まで真実を見ようともせずのうのうと暮らしてた。というか俺の父親なんてもういないんだって覚悟して生きていた……でも実際は全く違っていて……」
俺の感情が涙になって出てくる。もうこの涙は止めることはできなかった。
「……?! お、親父?」
次の瞬間、親父は俺を抱きしめた。力いっぱいに。ちょっと息苦しくなるくらいに。
「もう何も言うな。俺はずっとノボルのことを見てきた。ノボルは分かってくれると、きっといつか俺のことを分かってくれる日がくるとずっとそう信じてきた。そして今日、ようやっと俺の願いが叶った。俺はそれだけで十分幸せだ……俺の手でもう一度ノボルを抱きしめられる日が来るなんて、本当に俺は今、最高に幸せだよ……」
そして親父は俺の肩を涙で濡らした。
「俺も親父に抱きしめられて幸せだよ……」
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ジリリリリリリリリッ、ジリリリリリリリリッ
「はっ!」
目覚まし時計の音で現実の世界へ引き戻されたノボル。
「何て長い夢を見ていたんだ……」
そして自分の身体をおもむろに触ってみる。
「やっぱり、ここは元の現実の世界……」
大人ではないことを確認したノボル。
「俺の夢……あれが本当に事実であれば、俺はプロ野球選手になって、茜と言うかわいい女性と婚約する。そして、親父は不倫なんかしていなかった。でも母さんは……」
それを考えた瞬間ノボルは気持ちが悪くなり部屋にあるゴミ箱に吐いてしまった。
「オエッ……マジかよ、母さん……」
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ノボルが居間に行くとすでに母親は朝食の準備を済ませていた。
「おはよう、ノボル」
そう笑顔でノボルに挨拶をする母親。
「お、おはよ……」
ぎこちない挨拶。それにノボルは母親の顔を見ることをしない。
「どうしたの? 具合でも悪いのかい?」
母親がノボルの顔を心配そうにのぞき込む。
「べ、別に……」
ついぶっきら棒に返事をしてしまうノボル。
「あら、そう。まぁ、今日は土曜日だからゆっくり休めばいいよ。その前にご飯の準備できたから食べよう」
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朝食を黙々と食べるノボル。しかし一切母親に話しかけることはない。
「ねぇ、今日、ノボルが好きなアニメが入るよ!」
「……うん……」
「あっ……えぇっと今日のバイトは何時に終わるんだい? 母さん、録画しておこうか?」
「別にいいよ」
ノボルのそっけない返事に不安げな表情になってしまう母親。
「ノボル……一体どうしたんだい? 昨日まであんなに元気だったのに。何か悩みでもあるのかい? う~ん、なんかいつものノボルじゃない気がして母さん、調子が狂っちゃうよ……」
するとノボルは頑なに閉ざしていた口をようやっと開いた。
「母さん、俺に何か隠し事してない?」
「え??」
まさかそんな言葉がノボルから発せられるとは思ってもみなく、母親は目を丸く見開く。
「すでに親父とは離婚してるんでしょ……?」
「な、なんでそんなこと……なんでお前が知ってるんだい??」
「……知られたらマズいの?」
「あ、いや、まぁ、ノボルにはあとで言おうとしたのだけれど……確かに離婚したよ。あ、いやでも悪いのは父さんの方だからね! 女作っちまうんだの……」
「生活保護受給してるでしょ? そのお金はどうしてる?」
「え……? な、なんで……??」
カラカラカラン……
母親は思わず箸を落としてしまった。
「よく来る役所の人にそのお金あげてない?」
ノボルがその言葉を発した瞬間、母親は血の気が引いて顔が真っ青になっていた。
「あ……え……」
「あの男と別れたほうが良いよ。俺がいなくなる前に……」
そういうとノボルは箸をテーブルの上に置きその場からすっと立ち居間を後にした。
一方母親は呆然とし抜け殻状態になっていた。
「な、なんで……」
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ノボルは早々と歯磨きをしスクールジャージに着替え、家を出た。
「おっといけない!あれをもって行かないと!」
ノボルは街中を走った。無我夢中で走った。そしてたどり着いた先は――――
つづく
こんにちははしたかミルヒです。第十一話を読んで下さりありがとうございます!このお話ももうそろそろ終わりを迎えます。ノボル、お父さんと仲直りできてよかったですよね。現実の世界も幸せになれればいいですけど...
ってなことで次回は、ノボル...に行って何かをするお話です。一体どこに行くのでしょうか?お楽しみに♪
ミルヒ




