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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース10:小説家になりたい(芽衣子編)
106/109

第二話

   ■■■


「夕食のときはありがとね」


 私はお礼を言うため、直人の部屋に入り、ルルを手に抱えながらベッドに腰を下ろし、直人に感謝を伝えた。


「べつに礼を言われるようなことはしてないよ」


 勉強机の椅子に座ってパソコンの画面を見ながら直人は笑みを浮かべてそう言った。


「でも私ってお母さんの言う通り本当ヘンだよね……」

「そう……かな?」


 直人はそこで椅子をくるりと回し私のほうに体を向け首をかしげる。


「だって私、友達も全然いないしそれに……」


 そう言って私はルルをじっと見つめた。そして直人は私を見つめる。


「姉貴は友達、欲しいって思うの?」

「いや、そういうわけでも……」

「自分がそう思わないならそれでいいじゃん。ルルと一緒にお話ししたり、買い物したりするのが楽しいんだろ?」


 すると直人は何を思ったのか、私の手の中にいるルルをそっと自分の手に取り笑顔でルルを見つめた。そんな直人の様子を視界に入れつつ、私は直人の問いに答える。


「でも私……普通の人とは違う……普通の人はこんなことしてない……でしょ……?」

「なぁ姉貴、普通って何だと思う?」


 直人は私の目を透き通った目でまっすぐと見つめた。その視線に私は思わず下を向いてしまう。


「普通って……普通って言うのは……常識的なこと……かな……」

「その常識って誰を基準にしてるの?」

「誰って……一般的な考えを持った人たち……」

「一般的な考えって何? どうしてみんな一緒の考えじゃないといけないの?」

「そ、それは……」


 どうしてかって言われても……。

 すると直人は戸惑った私を見て軽く笑いながら頭をかき、陳謝してきた。


「姉貴、攻めてごめん。そうなんだよな……。同じ考えを持っている人たちの中に一人でも違う考えを持っている人がいればその人を排斥する。ほとんどの人間ってのが排他的な集団なんだよ。まぁ、そう教育されたからね。特に普通の考えでは~とか、常識では~とか言っている人は出る杭を打つコミュニストだ。みんな同じ考えを持たなけならないなんてナンセンスな話だよ……」


 そう言ったあと直人は私にルルをそっと返した。


「ルルと一緒にいて幸せならずっとそうしたほうがいい」


 そして直人は私にニコリと微笑んだ。それがうれしかった。


「直人……」


 なんで私泣いているんだろう? うれしいことなのに……。笑えばいいじゃない? 今すごくうれしいんだから……。こんな素敵な頼もしい弟を持っている私って本当に幸せ者なんだ。直人にはほんと感謝しないといけない……。

 そんなことを思いながら手で涙を拭いていると、直人は私の顔を見て、ふっと微笑を浮かべ椅子からガタリと立ち上がる。

 なにするんだろう? と頭に疑問符を浮かべていると直人は両腕を目一杯上げこう言い放った。


「だから俺も一生オタってやるーーー!!」


 なお……と?

 私がポカンと口を開けたその直後、直人のジーンズのポケットからカランと何かが落ちた。


「これ……なに?」


 そう言いながらきらりと光るそれを拾い、私はそれが何なのか目で確認する。

 この瓶、どこかで見たことがある……。

 すると直人が鼻をこすりながらちょっと照れくさそうに私の質問に答えた。


「あぁ、これは俺の願いをかなえる夢の液体」

「夢の液体?」


 あぁ、そうか、この小瓶はドリームショップの……。


「これを飲めば、ゆかりんと両想いになれるんだ」

「ゆかりんってコスプレアイドルの?」

「そう、コスプレアイドルのゆかりん」

「それってほんとのこと?」


 そう言いながら夢の液体が入った小瓶を直人に返した。


「今日、ドリームショップっていう店に入ったんだけどその店は客のかなえたい夢をなんでもかなえてくれる夢の液体を売ってる店なんだ。信じられないと思うけど実際にそういう店があったんだよ。それでこの液体を手に入れたってわけ」

「へぇ……そんな不思議な店があるんだ……」


 ドリームショップのことは寺田さんから聞いていて、すでに知っていたけれど直人には知っていることを隠してしまった。すると直人は私にこんな質問をしてきた。


「姉貴はどんな夢をかなえたい?」

「私は……」


 思ってもみないことを聞かれたので私は戸惑い、思わず手に持っていたルルに視線を移した。そして数秒の沈黙の後、私は直人に一言こう言った。


「ルルをくれた友達にもう一度会いたい……」


■■■


「ボス、コーヒーをお持ちしました」


 そう言って緑の艶やかな髪をなびかせた女性はあの者にコーヒーを差し出す。するとあの者は「うむ」と頷き、そのコーヒーを手に持った。芳醇なコーヒー豆のにおいが湯気とともに香り立つ。するとあの者が珍しいことに彼女にコーヒーを差し出し、こう言った。


「お前も飲むか?」

「お気持ち大変うれしゅうございます。しかし、私はコーヒーが苦手なのでございます」

「そうか」


 そう一言いうとあの者は口角を上げニヤリと笑った。そしてコーヒーに口を付けないままあの者が座っている玉座の前にある小さなテーブルの上にコトリと置いた。


「もう行ってもいいぞ」

「はい、では失礼いたします」


 彼女はあの者に一礼をし出て行った。するとあの者はコーヒーを再び手に持ち、そしてなんと、それを床に捨てた。近くにいた猫がそれをペロリ、舐めた。すると猫はあっという間にころりと倒れた。


「フッ、俺の嗅覚は鋭いんだ。これは夢子と月子の負のエネルギーから作り上げた毒薬。しかし月子は頼もしいヤツだ。はははははっ」


 不気味な笑い声はこの地下室に大きく響き渡った。


 続く

こんにちは、はしたかミルヒです!


第二話を読んでくださりどうもありがとうございます!

ここもようやっと日が照って、暖かくなりました。やっぱり暖かくて明るいのはいいですよね。気持ちがいいというか。一日中どんよりしていると私自身もどんよりしちゃって気が滅入ってくるんです。天気に左右される私の気持ち...(-_-;)あぁ、今日は散歩しよう!

ってなことでまた明日朝7時に♪

ミルヒ

※土日は朝7時に投稿します。


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