死にたがり
「なんでそんなに死にたがるの?」
ふと、知人に投げかけられた言葉。
別に、特別嫌なことがあった訳じゃない。
なにかに絶望してる訳でもない。
ただ、自分が生きる意味を、生きている価値を見いだせないだけ。
ついでに言うと、大して生きたいとも思っていない。
生きている価値もない人間が、酸素を無駄に使ってるだけ、地球に悪いでしょ?
でも、苦しいのも痛いのも嫌。
1人で死ねるほどの度胸は持ち合わせていない。
「さて、どうしたものか。」
「どうしたものかじゃないよ。帰る時間、また明日ね。」
そう言ってさっていく知人。
「じゃあね。」
また明日。なんて言わない。だって、明日なんて来なくていいと思ってるから。
そんなことを考えながら青信号を渡って歩く。
キキーッ
すぐ近くで響いたブレーキ音。
同時に投げ飛ばされる自分の体。
「ああ、やっと。」
やっとこの時が来た。
やっとお迎えが来た。
「さよなら。世界。」
辺りがガヤガヤしてる・・・。
うるさいな。やっとあの世に来れたのに、こんなにうるさいとは。
「かわいいな。」
「目開けないのかなぁ」
なにやら近いところで話されている。
目を開けてみれば、想像していたあの世ではなかった。
何これ。
「わぁ!目が空いた!かわいい!」
「生まれてきてくれて、ありがとう。私の宝物。」
・・・。
今なんて?
生まれてきてくれて??
ああ、最悪だ。
何が楽しくて生まれてたてからやり直さなきゃいけないんだ。
神は存在しなかった。ま、元々信じてなんかいなかったけど。
「このこの名前は??」
ニッコニコの笑顔で私を抱いている人に問いかける男の子。
「名前はエヴァ。エヴェ・フローレスよ。お兄ちゃんとして守ってあげるのよ?」
「もちろん!エヴァ!僕が守ってあげるからね。」
エヴァとは、ヘブライ語で”命”。
ここの言語が何語かは知らないが、なぜこんな名前をつけられなきゃいけないんだ。
「うぇ・・・うう・・・」
泣きたくなってきた。
一旦何も考えたくない。
寝よう。
私は考えることを放棄して目を瞑って眠りについた。
◇◇◇
晴れた空の下。
ヴィリト帝国の帝都にあるフローレス公爵家の屋敷で、公爵夫人であるマリ・フローレスと令息であるアベル・フローレスはお茶をしていた。
マリは大きなお腹をさすりながら、もう1人の我が子に会えるのを今か今かと待っていた。
穏やかな様子が一変。陣痛が始まると急いで場所を移して、お産が始まった。
生まれた子供は、ハニーゴールドの髪を持つ女の子。
初めての妹に興奮がおさまらないアベルは赤子を撫でる手が止まらない。
「かわいい」
赤子の目が開かれれば、見えてくるのはフォレストグリーンの瞳。
少し深い緑の瞳が、涙に濡れ潤んでいる。
そんな妹の姿に、アベルは幼いながらに妹を守り抜くことを決意した。
たとえそれが、どれだけ生に無頓着な妹だったとしても。




