第三章 01 悲鳴
第三章
01 悲鳴
ミーヤ、マアチ、ボウは顔を見合わせる。山の中、魔物の足音などを探して耳を澄ませていたが、聞こえてきたのは悲鳴だ。
「行ってみよう!」
聞こえた方向に進んでいくと、声はますますはっきり聞き取れるようになった。
「だーれーかー!! たーすーけーてー!!」
明らかに助けを求めている。
「魔物に襲われてるのかな?」
足を進めながら、ミーヤが言う。悲鳴をあげているのは一人で、女の人のようだ。
「仲間とはぐれたところを魔物に狙われたのか? 一人でトイレに行こうとしたとかさ」
辺りを見回しながら、マアチがうなずく。
「……それか、強い魔物と遭遇して、パーティが全滅しかかってるとか……あっ!」
ボウがそう言ったときだった。木の生い茂る山の斜面、頭上では木の葉が日光を遮り、目の前は木の幹が視界を遮る。見通しは悪いが、それでも視界の先に、不自然な動きをするものが見えた。
「たーすー、けーてえー!!」
腕で顔や体をガードし、体を丸めつつ、必死に逃げる女性が一人。
彼女に群がるのは、人間ぐらいの大きさの鳥。
翼は人間が両手を広げたほど。猛禽類のような足は、人間サイズになることで、太さと鋭さを増している。顔は鳥よりも人間に近いが、ゴブリンのようなつり上がった目、くちばしのように鋭くとがった口は、人間とは全く違う。
「ハーピーだっ!」
ボウが叫ぶ。
「ハーピー!?」
「初めて見た!」
ミーヤとマアチが声を上げる。葉獣やゴブリンより遙かに強い、中級者向けの魔物。この山の奥には出ると聞いていたが、今まで遭遇したことはない。彼女を追って浅いところまで来たのか。
「……やるぞ!」
ボウが剣を抜き、ハーピーに向かっていく。ハーピーはまだボウに気づかない。
「くらえ!」
ボウがハーピー一匹に斬りかかった。不意を突かれたハーピーは、片方の翼を切り落とされる。
「ギャーッ!」
鳥のような声を上げ、ハーピーが暴れる。体から離れた翼は溶けるように消えていくが、まだ倒せていない。
「ギィッ!!」
三匹のハーピーは顔を上げ、ボウと、ミーヤ、マアチを認識する。
「二人で弱ったこいつを倒せ! 二匹は俺がやる!」
ボウが剣を構え、無傷のハーピー二匹と対峙する。ミーヤとマアチはつばを飲み込み、片翼のハーピーを見つめる。
「あなたは下がってて!」
ボウはハーピーから目を離さず、逃げてきた女性に言う。
「あ、あーりー、がとうー、ございー、ますー」
彼女は切れ切れの声で答え、木の後ろに隠れた。ハーピーにつつかれた体を丸めていたのではっきりわからないが、大柄で太めの若い女性のようだ。
……よそ見している場合ではない。
「ハーピー! ……初めてだけど……」
ミーヤはハーピーを見つめる。
「……ああ! オレらで頑張って倒そうぜ!」
マアチも武者震いする。ミーヤとマアチ、二人なら、手負いのハーピー一匹を倒せるはず。ボウはそう判断して、任せてくれたのだ。
そろそろ魔物狩り屋としてレベルアップしていい頃だ。
このハーピーを絶対に倒す!
二人は気合いを入れた。




