第18話 団体戦!⑨(大会後)
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いやぁ、相手は強かった。
何級なのかはわからないけれど、勝てそうな雰囲気はあったように感じた。
感想戦をする。
相手の女の子は優しい口調で僕のまずかった指し手をいくつか教えてくれた。
プライベートな話も少しした。
どうやら、お隣の市から来たらしい。
チームメイトも同じ将棋教室からのメンバーということだ。
「どうして、そんなに強いの?」
と、単純に聞いてみた。
「男の子に勝ちたいの」
と、返事が返ってきた。
「運動でも負けない自信があるけれど、大人になるにつれてだんだんと勝てなくなるって。なら、今のうちに男の子にでも勝てるものを探していたら、将棋だったんだ」
「どうして、男の子に勝ちたいの?」
「うーん、男の子ってどうしても乱暴で幼いイメージが強いんだけど、何故かいつも上から目線なのよね。勉強で勝ったとしても、向こうは「勉強してないからだ」って言い訳して逃げるの。ゲームならなぜか言い訳をしてこないの。勝ってたら余計面白くなっちゃって」
「へぇぇ、そうなんだ?」
「でも、君は違うね。年下だけど、一生懸命指してた一手一手、嫌いじゃない。負けそうになっても諦めず向かってきた。棋力はきっと私の方が上だけど、危ない場面もあったし、楽しかった」
「うん、僕もとても楽しかった。なんだか、教えてもらってた気分だったよ」
「そうね、序盤は君の攻めを受けてみようって思ったの。私もまだ2級だけど、”級”のうちは攻めは強くても受けは弱いって教えてもらったから。予選の結果を見て、君は1勝しかしてなかったから、ちょうどいいなって」
「なるほど、練習相手だったんだね。僕はどうだった?」
「うん、初心者って感じはあったよ。でも、すぐ強くなると思うな。きっとまた大会で会いそうな気がするの」
なんだか、評価が高いな。
両隣はまだ対局が続いている。
結果が気になったので、感想戦はこれまでになった。
「ありがとうございました」
お礼を言って、高槻さんを見る。
表情は真剣そのもの。
だけど、さっきの試合と違って目がキラキラしている。
駒を持つ指使いも軽やかだ。
とても集中していて、楽しそうだ。
盤面を見る。
流石に決勝トーナメント。
僕らのチームはここまでかなと思わせるような、盤上の様子。
大駒4枚が相手の手駒となっている。
高槻さんは、桂馬と歩でなんとか攻める形にはなっているけれど、攻めきれるのかな。
金駒(※金や銀のこと)3枚でぎりぎりか1枚足りない感じがする。
「攻撃の駒は4枚あればなんとかなるよ」
高槻さんが以前言っていた気がする。
攻め駒は盤上と数えて確かに4枚だ。
いずれにせよ、もうすこし時間がかかりそうな内容だ。
反対側を見る。
茨木さんが戦っている。
戦況はお互いがノーガードで攻めあっている。
一手勝負と言うのだろう。
速い攻めを探すべく、持ち時間をしっかり使って、最後の玉までの距離感を計っている。
(ふたりともがんばれ)
僕は負けてしまったけれど、とても楽しかった。
1勝できたし、3戦目を除いて、対戦相手とも仲良くなったような気がする。
両脇の戦況を首を振りながらもじっと見守る。
先に終えたのは茨木さんだった。
「負けました」
茨木さんが頭を下げる。
これでトーナメント敗退決定。
茨木さんの表情は明るかった。
相手もいい勝負ができたのか、良い笑顔で茨木さんと見合っていた。
そのまま感想戦に入った。
1回戦敗退は決まったものの、最後の高槻さんの勝負はまだついていない。
盤上を見る。
どうやら、相手は大駒を捨てて高槻さんの守りを崩しにかかったようだ。
終盤戦において、大駒はたしかに金、銀より役割が劣ることがある。
駒自身が強すぎるのと、動きに個性的な動きで近距離では実力が発揮しにくい。
大駒の攻撃が、そのまま、大勢が押し切られるように高槻さんの玉を迫っていく。
「参りました」
高槻さんも頭を下げた。
これで僕たちの大会は幕を閉じた。
・・・・
「いやぁ、よくやったよ。私たち!」
「そうだね、みんながんばったね!」
と高槻さんと茨木さん。
帰り道で反省会だ。
親たちは僕たちの後ろを歩いている。
途中で負けたので、日はまだ明るい。
(まだ明るいのに、このまま帰ってもつまんないな)
僕はそんなことを考えていた。
「夕飯までまだ時間がありますし、水無瀬さん、私の家に来ませんか?」
と、高槻さんのママからのお誘い。
僕のママもすっかりと仲良くなったみたいだ。
ママは一瞬悩んだみたいだけれど、
「たっちゃん、高槻さんところ行く?」
と聞いてくれた。
「うん!」
と元気に返事した。
高槻さんちは一軒家だ。
駐車場もあって庭もある。
なかなか広い。
おじいちゃんの家みたいだ。
「おじゃまします」
と家の中に案内された。
広い部屋だ。
テレビとソファー、食事用のテーブル、椅子が置かれている。
僕たちはソファーに集まり、ママたちはテーブルのところに腰かけた。
「じゃあ、やろうか」
と高槻さんは将棋盤と駒をもってくる。
(本当に将棋が好きなんだ)
とすごく感心した。
「優ちゃん、負けた局の棋譜、覚えてる?」
「うん、覚えているよ」
「じゃあ、その検討から始めようか」
「わかったよ」
と、よくわからないことばが飛び交う。
棋譜?検討?
「ああ、水無瀬君は初めてだね。最初は見ててね」
と、茨木さんがさくさくっと自分と相手の駒を進めていく。
「この場面なんだよね。よくわかんなくなっちゃった」
と茨木さん。
「なるほど、ぱっとみたところ優ちゃんがちょっと優勢っぽいけれどね」
「そうなの、でこう指したら、相手がこう指してきて・・・・」
「ああー、確かにこれはいい手だね」
ふたりのやり取りを見ている。
すごい、対戦した内容を覚えているんだ。
この初手から投了までの試合の内容を棋譜というみたい。
楽譜の親戚みたいだね。
「二人とも、その棋譜っての、覚えてるの?」
と尋ねる。
「全部じゃないけれどね、序盤はだいたい同じ流れになるから覚えやすいんだよ」
と高槻さん。
「棋譜を覚えると負けにくくなるね。だって、この手で負けたってのを覚えているから違う手を探すよね?」
と茨木さんも教えてくれる。
(なるほど)
こうやって二人は強くなっていったんだ。
「水無瀬君はまだ早いかもね。私ができるようになったのも最近だもの」
「そうそう、焦らなくていいよ。続けていたら自然とできるようになるから」
と僕に対してフォローが入る。
後ろは後ろでママたちが楽しそうにお話ししている。
妹は床の絨毯の上でお昼寝をしていた。
「検討はここまでにしてっと。水無瀬君、改めて今日は付き合ってくれてありがとね」
と高槻さんが改めてお礼を言う。
「大会中も言ってたかもしれないけれど、雛ちゃん、必死で探してたからねー」
「出られる大会は出たいよね? 個人戦は強い子がたくさん出てくるけれど、団体戦は強い子ばかりがそろうことはなかなかないから」
「二人はどうして将棋を始めたの?」
僕は二人に改めて聞いた。
「お父さんが好きなの。将棋」
と高槻さんが答えた。
「たくさん対局するうちにお父さんに平手で勝ちたいなって思って将棋教室に通ってるの」
「私は雛ちゃんに誘われて始めたよ」
「優ちゃん、いつの間にか私より強くなってるしね」
「あははは」
「ふーん」
お父さんか。
僕の中の”おとーたん”も将棋が好きだったな。
「いいね。そういうの」
僕はそう答えた。
「そういえば、水無瀬君ところのお父さんは?」
と、茨木さんが尋ねる。
「別の所に住んでる。たまに会ってるよ」
「そうなんだ」
と、高槻さんは答えた。
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