#20
「ゆうこちゃーん、2年の朝霧さんって人知らない?」
「朝霧はん? 悪いけどあたし、その人のことあんま知らんねんか。あ、でも、ウチのお姉ちゃんなら知ってるかもしれんわ。何にもお役に立てへんで、ごめんなぁ」
「わかった、ありがとね!」
まずA組の蔀屋ゆうこさん。けど、朝霧さんのことは知らないという。
「朝霧学はん? うーん、名前だけなら聞いたことあんねん……けどなあ。その人は名前しか知らんわ。かんにんな!」
「あー、そっか。こっちこそ無理に聞いてごめんヨ」
同じくA組の、ゆうこさんの姉リサさんもダメだった。名前だけしか知らなかったらしい。
よし、次はB組じゃい!
ヒロユキのやつなら顔は広そうだし、何か知ってるかも。
「おい、寺辺」
「何だ、マサキじゃねーか。オレに何の用だい?」
「おまえ2年生の朝霧さんって人知らね?」
「あー……朝霧さんね。オレなあ、この前の休み時間に廊下でアキヒコと話してたら、あの人にシメられて注意されちゃってさー……」
超高速でヒロユキの話から要点のみを抜き出し、
すかさずメモに書き記す!
「そうか、だいたい分かった。じゃあな!」
「お、おい、マサキ!? 人が話してるのに!」
▲▲△
小うるさい寺辺くんから逃げたところで、今度はC組……おっと、あとにしよう。
先にE組からだ。C組のレンは、最後の頼みの綱だからね。
E組には、この前体育の授業で競争した敦賀ミカさんがいる。
ガラは悪いが気のいいねえちゃんだ。面倒見のいい人なんだぜ。
「朝霧さん? この前C組のアヤちゃんがお世話になったらしいよ。刃野くんさえよかったらあとで寄ってみなよ」
「ありがとう!本当に感謝している!」
ぷう。先にE組の教室に入っておいてよかったぜ。
さて、皆さんお待ちかね。C組へ行こうじゃないか。
「颯爽登場!」
さあ、戦いだ!
まずはアヤさん。彼女のフルネームは、橘アヤさんらしい。
「えっと、確かに怖い感じの人だったけどすごく優しかったよ。
この前運動場で足くじいちゃったんだけど、その時に保健室までおぶってくれたんだ。エリノ先生の前ですごーくデレデレしてたっけ」
「ふむふむ。そっか、そんなことがあったんだね。続けて……」
実に興味深い。やっぱり、いい人なのかな。
「とにかく、女の子には優しい人だったよ。でもよくケンカしててケガ多いから、エリノ先生に厄介になってるみたい」
「ふむふむッ! そうかッ! なるほどッ!
じゃあ、これからエリノ先生にも聞きに行くね。アヤさん、今日は本当にありがとう!」
「いえいえ。どういたしまして~♪」
アヤさんに別れを告げ、俺はきれいな女神様が待つ保健室へ――
「マサキ……ぃいいいいいいいいいいィ!!!」
「あうおー!?」
そこにレンがゾンビさながら、いきなり飛びかかってきたではないか。
「アヤちゃんにハナシ聞いておきながら僕はスルーしようたって、そうはいかないぞ……!
さあ、聞きたいことがあったらドンドン聞いてくれ。僕たち、友達だろ?」
ちょっと悩んだ。けど、すぐに答えを出した。
「すまん、もう情報はじゅうぶん集まった。なので君に話すことは何もナッシング。アディオス、アミーゴ! ハッハー!」
「ともだちィイイイイイイイイイイイイ!!」
我が友の悲痛な叫びを聞きつつも、その足は既に保健室へと進んでいた……と。