#13
「……こちらマサキ」
「どうやら潜入できたようダナ」
「ああ。現在、目の前にTHを発見した。ヤツの尾行を続ける」
「……健闘を祈るぞ」
氷室大佐を隣にたずさえ、俺は今回のターゲットであるHTを追っている。
――HT、許すまじ。
ヤツは、世界の歪みだ。
世界の歪みは――破壊するっ!!
「大佐、THは保健室へ入ったようだ。これからやつを追い詰め、駆逐する」
「健闘を祈るよ……って、オイ! いつまでやらせんだ?」
――なんて、メ〇ルギアごっこをしながら俺達はTHを尾行していた。
「えー、それはひどいな。キミがそんなにノリの悪いヤツだったなんて、見損なったよリョウ」
「あのなー……もう目の前なんだし行ってこい。ホラ! 早くしないか!」
「へーい」
いよいよ悪くて厄介でうっとうしいお友達とご対面サ。
さあ、突入だ!
―保健室―
「失礼しまー……」
「失礼チョリーッス!」
むかつくのでヒロユキの声を大声で遮ってやった。ハッ、ざまあねぇな。
――まあそれはさておき。
作戦はこうだ。こうだ。こうだああああああああああああああああああ!
ヒロユキと一緒に保健室へ入り、シメる。
以上。
「あら~、マサキくんと、それにヒロユキくんね~」
このおっとりした、黒糖のように甘く、ふわふわしたウールのようなゆるーい声の持ち主は、
他ならぬ、六波羅商業の天使。保険医の『山科エリノ』先生だ。
彼女の名を聞いてピンと来なかったかな?
そう、いたよねぇ。俺のクラスメイトに、学級委員の山科エリカさんが。
そう、エリノさんは彼女の実の姉なのだ。これ、ホント。ウソじゃないよ。
「へへ、エリノ先生。あのぉー、そのぉー、なんつうか、そのね、ヒザすりむいちゃってェ」
「そうなんだ~。先生が診てあげますね~」
「ギギギ! くそッ、寺辺ェ……」