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安芸の魔術師さんと光る風  作者: WA龍海


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19/19

光る風と笑う魔術師


 ハルの精神崩壊を防いでから、約一週間後。

 私と小天さんはまたしても左手に魔力を注ぐため、広島市を離れていた。


「んじゃ、やってこーか」

「よろしくお願いします」


 いつも通り、散策前の定型文のような挨拶を交わす。

 今日来ているのは東広島市にある公園。普通の公園と違うのは、なんといってもすぐ隣に大きな古墳があるところだ。


「三ッ城古墳。広島ん中じゃ最大の前方後円墳よ。大昔の大豪族の墓じゃないかって言われとって、出土品からは大和政権と深い関わりがあったんじゃないかって話よ」

「へー……こういう文化史跡って厳重に管理されてるイメージだけど、勝手に落ちてる物拾ったりしていいの?」

「どうじゃろうね。まあ今回は何も集めたりせんでええよ。ここの土地の魔力自体がそこそこ濃いぃけえ、素材なしでもやれるし」


 小天さんはそう言うと、園内の緑の上を歩き出した。



         ◆◆◆



「今日もありがとう、小天さん」

「こちらこそ、弁当美味しかったよ! 帆風天才! 料理長!」

「ただのアルバイトだって……」


 二人で東屋に腰を落ち着けて、談笑する。

 いつものように作業を終え、小天さんは貧血と空腹でダウン。そのまま少し休んでから、私の作ってきた弁当を食べることとなった。

 一つ料理を口にする度、「天才……?」とか真顔で言い始める小天さんは、正直見ていて面白かった。


「……」


 弁当箱を片付けてから、自分の左手を見つめる。

 ハルの一件があってからというもの、左手の光量はより一層強まってしまった。

 小天さんによると……ハルの魔力を全て取り込んだ結果、纏わりついている魔力がさらに強化され、比例するように光も強くなったとのことだ。


「完治まで遠ざかったなー……」

「そうじゃねえ。まぁわしも付き合うし、なんとかなるって!」


 根拠のない励ましに「そうだね」と相槌を打つ。

 考えなしに言っているようなのに、小天さんの言葉はやけに安心感がある。実際、ハルの件もなんとかなったわけだしな。

 毎回付き合ってくれて、助けてくれて……あ、そうだ。


「そういえば小天さん、前に訊いたけどさ……」

「ん?」

「結局、なんで私のために色々してくれてるの?」


 いつかの質問をもう一度投げかけてみる。

 小天さんはいつも頑張ってくれている。私の左手の光を無くしたいという願いを叶えるため、寝ないで作業をしたり、友達を助けてくれたり……驚くほど真摯に、一生懸命に。


 そんな彼女の目的は何なのか。

 魔術の研究? ただの興味? 後にお金を請求する? ……どれもピンとこない。

 色々と考えてみたけど、結局分からずじまいである。


「……えーっと、そうじゃねぇ……」

「内緒ってのは無しだからね。ちゃんと説明するって言ったんだから」


 海浜公園で言っていたことを掘り返すと、言葉を詰まらせて苦笑いを浮かべた。

 それから少し考え込むような素振りをしてから、諦めたように長く息を吐いた。そんなに言いたくないことなのだろうか。

 訊いたらまずかったかな、なんて思っていたら、小天さんは少し慌てたように口を開いた。


「ああいや、言いたくないとかの話じゃないんよ? 結構くだらん理由ってだけじゃけえさ」


 そう言って立ち上がり、息を吸って吐く。

 それからこちらを向いて……私に人差し指を差し、こう言った。




「──ただの一目惚れ、ってやつよ。じゃ、帰ろっか!」




 にっこりとした笑みを残した後、踵を返して歩き始める。

 私は……少し呆気に取られてから、慌てて荷物を持って後を追いかけたのだった。




第一章(仮)、お終い。

次回更新は未定ですが、機会がありましたらまたいつか。

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