二十七話
あれから五年の月日が経った。
私は無事美大に進学して、ちらほらちょっとした仕事のオファーが来るようになっている。それだけで食べていくにはまだまだなので、大学とバイトを両立しながら生活する日々だ。
佐々木くんは、大学に進学して美術教師を目指しているという。理由を聞くと、柴崎先生の放任主義と、私のコンクール作品のアドバイスを受けて自分もバランスのとれた教師になりたいと思ったそうで、なんだか気はずかしい。私の背中を押してくれた彼とは、今でもたまに連絡をとっているけれど、少し生意気な口をきくようになった。高校の頃からは想像もできなかった関係性を築けているのは、間違いなく彼のおかげだ。
この五年間でLGBTQという言葉が出てきて、あの小説の、私と同じなのかもしれない女の子に投げかけられたであろう言葉への理解も、進んできたように思う。
普通とは何か。気づけば頭を支配するようになった、終わりのない疑問。それは、まだ答えが見つかるものではないのだろう。
けれど、あのバンドが歌っていた、普通じゃないことが普通だということは、間違いではないのかもしれないと最近になって理解できた。
私は、きっと普通じゃない。けれど今、普通の幸せな日常を生きている。
今日はクリスマスであり、記念日なので、五年前と同じケーキ屋さんでケーキを買って帰る。
実家を出た私には、同居人がいる。
玄関の扉を開けると、五年前から少し伸びたウルフカットの彼女が、変わらない笑顔で私を出迎える。
「おかえり、紬」




