45話 敵を蹴散らせ!
外骨格を纏った猟兵は、対重装甲用の有翼弾を次々に発射した。
命中率は悪いがそれを複数発射する事で、面制圧という効果で力を発揮している。
その威力は絶大で、当たれば重装甲の多脚戦車をも破壊し、当たらなくても着弾付近にいた歩兵ならば、その爆風で甚大な被害が出る程だった。
今や火宝山では守る側の、懲罰部隊が有利な状況となっていた。
しかしそれも弾薬が続くまでである。
懲罰部隊に配られた弾薬量は、決して多くはない。一般部隊に配備するのを優先し、懲罰部隊へは後回しが当たり前である。
弾薬がなくなれば、当然の事ながら何も出来なくなる。
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ここは火宝山の港付近。
港付近は特に岩場が多く、敵の上陸艇が何艇も岩に乗り上げて座礁していたり、仕掛け機雷で動けなくなった陸戦艇などが多く見られた。
それでも何艇かは何とか港まで到達し、大型の多脚戦車や装甲歩兵を多数上陸させていた。
港からなら重多脚戦車でも上陸させられる為、敵も装甲部隊を港に集中させたようである。
そして敵上陸部隊は、重多脚戦車を先頭に島の中心部へと進み出す。
そこへ瓦礫と思われた所が突然、バタンと蓋のように開いた。そしてそこから噴進砲を担いだ装甲歩兵が顔を出す。
突撃兵による待ち伏せ攻撃だ。
そして噴進砲を発射。
その一発が合図かの様に、あちこちの穴から噴進弾が発射される。
噴進弾は重多脚戦車を正面から襲った。
多脚戦車の中でも重装甲仕様の機体なのだが、放たれた噴進弾は対重装甲用の特殊榴弾。
命中すると高熱噴流で装甲を貫き、火炎魔法が多脚戦車の車内を焼き尽くす。すると車内に留まり切れなくなった噴流が、多脚戦車の開閉ハッチを車内から吹き飛ばす。
するとハッチから外へ火炎が噴き上げ、砲身からも炎と煙が噴出する。数秒後には多脚を折り曲げるようにして地面に倒れ込み、しばらくの間は炎を噴き続けた。
あれでは生存者は居ないだろう。
同じ対重装甲用の特殊榴弾が直撃した装甲歩兵などは、もっと悲惨だった。オーバーキルなんてものじゃない。元のハング型の元型を留めていない。
しかし特殊榴弾は数に限りがあった。
特殊榴弾が撃ち終われば後は通常弾しか無い。噴進砲の通常弾では、多脚戦車の装甲を貫通する確率は30%くらいだろうか。早い話が当たりどころによる。
ある程度の装備を整えた突撃兵を配置はしていたが、相手が多脚戦車となると重連射銃では刃が立たない。多脚戦車がそんな掩蔽豪の突撃兵を吹き飛ばす。
炎を避けて外に飛び出した突撃兵の一人が、ゴブリン歩兵の連射銃の銃弾を浴びて肉片と化す。
弾薬の消費と共に、徐々にゴブリン軍は島の中心部へと侵攻して行く。
こうなると辺りには屍が散乱し、両軍問わずに気が変になる者が続出し、誰もがここは地獄だと確信していた。
しかしその時点でまだ島の中央部にる装甲歩兵は、深く掘られた穴の奥で、虎視眈々と機会を伺っていた。
幸いな事に敵は混戦状態であり、さらに同士討ちを避けて敵の陸戦艇からの砲撃もない状況だ。
そこで装甲歩兵中隊の全機の無線に、マノンの声が響く。
『奴らを蹴散らせ!』
その声を合図に、穴の中にいた装甲歩兵が次々に外に出て行く。
そこへ再び無線からマノンの声。
『帰る場所はここしかないってこと、忘れないでよ!』
まさにその通りであった。ここは逃げる場所は何処にも無い、砂漠に囲まれた孤島。
敵はゴブリンで、捕虜条約なんてものは無い。つまり捕まれば死を意味する。それは誰もが知っている。
だから死に物狂いで戦う。
とは言っても殆どのパイロットは、元後方勤務者であり素人同然。アラクネ部隊に来て、初めて実戦を経験した者が多い。加えて懲罰部隊の士気は低い。
勢いがあったのは最初の10分ほど。
そこからは、奮戦虚しく次々に撃破されていった。
『第2小隊っ、下がらないで!』
無線からはマノンの怒声が絶えない。
マノンはアイナとリナの3人で行動しているのだが、彼女らに付いてこれる味方装甲歩兵はいない。
『マノン少尉、飛空艇が、飛空艇が降下して来ますっ』
『そんなの放って置きなさい。同士討ちが怖くて爆弾は落とせないわよ。どうせ連射銃で掃射する程度よ』
そうは言っても至近弾でもあれば、新米パイロットは恐怖する。
『いやっ、もうやめて〜!』
『被弾、被弾しましたっ』
『退却よ、退却〜』
とうとう第2小隊が下がり始めた。
そうなると恐怖の連鎖で、第3小隊までもが後退を始める。
そして味方が後退すれば敵は前に進む。
そこへリナからマノンに無線が入る。
『マノン少尉、どうするんだ?』
すかさずアイナが割り込む。
『放って置いても良くない〜?』
『そうね、今は自分の身は自分で守る時よね』
そう言いながらマノン機は、目の前のハング型のコクピットに30ミリ弾を叩き込む。
『アイナ、2時方向!』
『うわわっ、危なっ……マノン少尉、ありがと!』
アイナが機体を捻り敵弾を躱す。
この3人だけは確実に敵を倒していく。
他の装甲歩兵とは別格であった。
懲罰部隊でなければ、エースパイロット認定されていたであろう。
どのくらいの時間が経っただろうか。
気が付けばマノン達は港近くまで来ていた。
味方もそうだが、敵も統制を失っている様だ。
多脚戦車の残骸の影に、震えながら隠れるゴブリン歩兵達。
敵の機体であるハング型が1機、地面に座り込んでいるが攻撃をしてくる気配は無い。良く見ればパイロットは乗ったままである。戦う気が無いのか、コクピットハッチを全開にし、虚ろな目のゴブリン兵がボーっと空を見つめていた。
その前を整然と通り過ぎるマノン達。
『そう言えばマノン少尉、各隊からの連絡が途切れているよね?』
そう言ってきたのはレナ。
『そうね、全滅はしてないと良いけど、かなりの損害はあったはずよね。敵の陸戦艇の動きはないし、南側は大分落ち着いたみたいだけど、北側はどうなったのかしらね。静かそうだけど』
そんな会話をしている時だ。
『マノン少尉、あれ見て。港のずっと左の方!』
無線からアイナの慌てる声が聞こえた。
マノンが港の左方向へ機体を向けると、破壊された敵艦艇や座礁して動けない艦艇が数隻見える。港と違って数は少ないが、その艦艇の中に上陸艇が数隻見えた。
殆んどは破壊されているか座礁しているかなのだが、幾つかはまだ生きている艇もある。アイナはその動ける上陸艇に、目をつけたのである。
港の敵艦艇から、離れているのがポイントである。
マノンはそれを理解して返答した。
『なるほど、あの上陸艇の位置なら港の敵にバレないかもね。試してみる価値はありそうね』
彼女たちの考えているのは、敵の上陸艇を奪う事。そしてこの島からの脱出である。
さて、ストックはなくなりました。
しばしお待ちください。
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