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懲罰部隊の装甲歩兵   作者: 犬尾剣聖


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44/45

44話 上陸作戦

大分前に書き溜めしていたものです。

やっと手直し終えましたので投稿します。

よろしくお願いします。









 火宝山にある大隊本部跡は、もぬけの殻だった。大隊本部が丸ごと居なくなっていたのである。

 わざわざ後方から連れて来た高射砲部隊までもが、高射砲を置き去りにして誰も居なくなっている。

 様子がおかしいとマノン達がそこに来てみると、他の中隊メンバーも来ていて、呆れた顔をしていた。

 その中には見慣れた顔、バーバラ伍長も居た。


 マノンの姿を見つけたバーバラ伍長が歩み寄ると、険しい表情で話しかけてくる。


「おい、マノン。奴らは何処へ行きやがったんだい!」


 こっちが聞きたいと思いながらも答えるマノン。


「炎宝山へでも行ったんじゃないの。少なくてもここよりは安全だしね。それか、元の後方部隊へでも戻ったのかしらね。どっちにしろ逃げたってことでしょ」


「くそっ、結局は誰が大隊長になっても同じって事かよ」


「これで私達はこの島を出ることが出来なくなったわね」


 そうマノンが言うと、バーバラ伍長はハッとした様子で言った。


「そうだ、そうなると補給物資はどうなるんだ。まさか、もう来ないってことか」


「そうね。敵が集結してるらしいから、補給艇も来れないんじゃないの。ってゆうか、懲罰部隊だけしか居ないこの島によ、わざわざ補給艇なんか来るわけ無いでしょ。それに戦略的な価値も薄いこんなちっぽけな島、普通に放置でしょうね」


 それを聞いたバーバラ伍長や、周りに居た兵士達の顔が青ざめる。


 そこへアイナが何かを見つけたらしい。


「マノン少尉宛の封書があったよ〜」


 アイナから受け取った封筒には、マノン宛の命令書が入っていた。大隊本部がいなくなるとここで一番階級が上なのは、少尉であるマノンということになるからだ。つまりこの部隊の指揮を執ることになる。


 早速マノンが命令書を見てみると、「火宝山を死守せよ」と書かれているだけだった。大隊長であるニーナ・ストリング中佐のサインもある。

 さらに手紙が入っており、大隊本部要員は師団命令で炎宝山へ行くと記されていた。

 

 それを聞いたアイナがつぶやく。


「結局、上層部の連中は皆んな同じってことだね〜」

 

 リナも愚痴る。


「今度あったらぶっ殺す」


 ・

 ・

 ・


 その3日後の事だった。

 

 マノン達のいる火宝山ではなく、師団司令部がある炎宝山へ敵陸戦艇が群がった。ゴブリン軍の陸戦艇による、猛砲撃の始まりである。


 マノン達の懲罰部隊がいる火宝山の近くにも、敵陸戦艇が十数隻配置されてはいるが、攻撃はしてこない。

 その代わりに、敵飛空艇による爆撃が始まった。

 

 懲罰部隊の何人かで置き去りされた高射砲を操作し、空に向けて撃ってはみたが、操作するのがやっとで狙いを付けるどころではない。敵飛空艇にかすりもしない。砲弾は敵のいない、遥か低空で炸裂していた。砲弾の高度調整が出来ていないのである。

 最初は高高度からの爆撃だったが、対空砲火が弱いのが敵にバレてしまい、段々と低空爆撃を始めた。


「一機、低空で突っ込んで来るぞ!」


 誰かがそう言ったと同時に、黒色の塊が4つ落ちてきた。125kg爆弾である。

 その内の一発が高射砲を直撃。高射砲を操作していた何人かは、その一発の爆弾で全滅した。

 

 敵の爆撃はさらに激しさを増し、他の高射砲も次々に破壊されしまう。マノン達は陣地の中で、大人しくやり過ごすしかなかった。

 だが戦闘に慣れていない兵もいて、精神的に病むものも出た。


 それが3日ほど続くと、遠くの炎宝山の空までも無数の煙でドス黒く染まるのが確認された。恐らくここ、火宝山よりも激しい攻撃が続いているものと思われる。

 だが炎宝山の心配をしていられる程、マノン達には余裕がない。


 狭い面積の火宝山では、生えていた草木が全て消えるほどの爆撃を食らっていた。それは地形が変わるほどである。

 幸い火宝山は要塞化していた為、殆んどの戦力は地中深くで温存している。とは言っても、突撃兵中隊と外骨格を纏《まと》った猟兵中隊、そしてマノン達の装甲歩兵中隊だけしかいない。

 死傷者も皆無ではなかったが、十分に戦えるほどの戦力は残っているとマノンは考えていた。

 前回の攻撃では敵の装甲歩兵が空挺降下して来たが、今回はそれは無いようだ。

 

 爆撃が終わると警戒機を数機空中待機させて、それ以外の攻撃飛空艇はいなくなる。

 代わりに駆逐艇が数隻近付いて来て、これ見よがしに火宝山の周囲をグルグルと回り始めた。

 ただし火宝山の周囲は岩場が多く、地形を熟知した先導役がいないと危険である。それであまり接近は出来ないでいるようだ。

 しかし、ここで我慢し切れずに射撃を始めると、敵の思うツボである。射撃地点がバレてしまい、陸戦艇からの集中砲火となる。

 

 だからマノンは未だに反撃禁止命令のままだ。絶対に撃ち返すなと、全部隊に厳命してあった。


 だが所詮は懲罰部隊の兵士だ。

 彼女らの首輪を管理する大隊本部からの命令でなければ、そう簡単には従わない。ましてや大隊本部が逃げたとなれば、それはなおさらだった。


 散々敵の爆撃を受けてうっぷんが溜まっている彼女らの目の前を、敵の陸戦艇が堂々と通るとなれば撃ちたくなるのも分からなくもない。


 突撃兵中隊の掩蔽壕《えんぺいごう》のひとつから、数発のロケット弾が放たれた。やはり我慢出来なかったのだろう。

 その内の1発がたまたま敵の駆逐艇に命中。船体前部から炎が上がった。

 ロケット弾を放った突撃兵達から「わっ」と歓声を上がり、無線で他の中隊へその声が響く。


『やってやったよっ、皆も見たでしょ!』

 

 しかし、その後の敵の反撃が物凄かった。

 駆逐艇さらには軽巡洋艇が加わり、ロケット弾を放った地点へ遠距離からの猛砲撃が始まった。

 特に軽巡洋艇の主砲である、15センチ砲の威力は抜きん出ていた。それは飛空艇の爆撃よりも凄まじかった。


『狙われてるっ、反撃するわよ……きゃあああっ』


 悲鳴と共に無線は切れた。


 ロケット弾を放った掩蔽壕《えんぺいごう》に、15センチ砲弾が直撃したのである。その猛攻撃で付近は完全に地形が変わり、地中深くまで掘った退避壕まで潰されてしまった。


 そこでマノンの声が無線から聞こえた。


『ああなりたくなかったら、命令があるまで攻撃はしないようにね』


 そしてしばらくすると、再び敵の駆逐艇が島の周囲を回り始める。だがもう、敵に向かって攻撃をする者はいない。

 しばらくすると、敵陸戦艇からの砲撃も弱まってきた。そして残存兵力を確かめる様に、時々数発の砲撃があるくらいになる。


 そして今度は敵の上陸部隊が輸送艇から放出され、小型揚陸艇が火宝山へと集まり出し、遂に上陸作戦が始まった。

 岩場を避けながらゆっくりと近付いて来る小型揚陸艇。

 

 そんな状況になっても火宝山では、時々放たれる敵の砲撃の爆発音だけが響くだけである。

 それは敵が島に上陸しても同じであった。


 ゴブリン歩兵と装甲歩兵のハング型が何事もなく上陸すると、警戒しながらも島の中央へと進み出す。遅れて数機の多脚戦車も上陸した。

 その時点でゴブリン上陸部隊の殆んどの兵士は、人族の防衛部隊は砲撃と爆撃で全滅したのだろうと考えていた。上陸が始まっても火宝山からの攻撃がなければ、そう思うのも当然である。


 ゴブリン兵の殆どが身を低くすることも無く、火宝山の中央へと向かい出した。完全に油断していたと言える。


 そんな中で突如、無線機からマノンの声が響いた。


『攻撃開始!』


「待ちかねたよ!」


 忍耐の限界だった懲罰部隊の兵士達は、掩蔽壕《えんぺいごう》の銃眼から狂ったように攻撃を始めた。


 目の前まで接近していた敵ハング型へ、怒りを込めた砲弾を発射する突撃兵中隊の兵士。

 対空用の40ミリ三連双連射砲を使って、敵の掃射を始めたのだ。


 敵の上陸部隊は大混乱だ。

 どこにいるか分からない隠蔽《いんぺい》された地下の陣地は、コブリン兵士達にとっては恐怖でしかなかった。

 

 歩兵や装甲歩兵にとって40ミリ連射砲の威力は強力だ。軽く地上を掃射しただけで、ゴブリンのミンチが大量に出来上がる。


 そして猟兵中隊の兵士はと言うと、外骨格を纏った機動歩兵となり、大型の有翼弾射出機を抱えて待ち伏せをしていた。



 









久しぶり過ぎの投稿。

設定忘れています。

ミスがなければ良いのですが……




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