第6話 四神集結
生徒指導室。
午後三時四十分。
静寂が支配していた。
四人。
それぞれが違う椅子に腰掛けている。
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本城圭太。
藤川誠司。
五条聖斗。
平手大虎。
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誰も喋らない。
だが気まずさはなかった。
長い年月を経ても、
変わらない空気がそこにあった。
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最初に口を開いたのは圭太だった。
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「で?」
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一言。
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大虎が笑う。
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「相変わらず短ぇな」
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「余計な話は嫌いなんだよ」
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「知ってる」
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誠司が眼鏡を押し上げた。
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「本題に入ろう」
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聖斗が窓の外を見る。
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雪が降っている。
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「始まってる」
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その一言で、
全員の空気が変わった。
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圭太の表情が消える。
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大虎も笑うのをやめた。
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誠司が聞く。
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「どこまで確認できた?」
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聖斗は答えた。
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「被験者は最低でも二十八人」
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「そのうち消息不明が十九」
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「死亡確認五」
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「生存確認四」
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部屋が静かになる。
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四。
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つまり。
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ここにいる四人。
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それだけだった。
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圭太が舌打ちする。
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「胸クソ悪ぃ話だ」
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「まだ終わってない」
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聖斗が続ける。
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「誰かが動いてる」
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「北海道計画を再開させようとしてる」
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誠司が机に資料を広げた。
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古い写真。
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研究施設。
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白衣を着た人間達。
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そして。
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四人の幼い頃の写真。
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大虎がそれを見る。
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「消したはずだったんだがな」
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「完全には消えてなかったみたいだね」
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誠司が答える。
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圭太は写真を握り潰した。
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「見つけたらぶっ飛ばす」
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大虎が笑う。
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「お前は昔からそれしかねぇな」
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「文句あっか?」
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「ねぇよ」
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久しぶりに四人が笑った。
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その時だった。
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コンコン。
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扉が叩かれる。
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全員の視線が向く。
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ガチャ。
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「失礼します」
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入ってきたのは加東綾子だった。
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だが。
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四人は異変に気付いた。
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顔色が悪い。
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いつもの綾子ではない。
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「どうした?」
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大虎が聞く。
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綾子は息を整えた。
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そして言った。
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「一年生の男子生徒が……」
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「消えたの」
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全員の目が変わる。
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「消えた?」
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誠司が立ち上がる。
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「昨日の放課後まではいたの」
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「でも今朝から行方不明」
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「警察も探してる」
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聖斗が呟く。
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「始まったな」
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圭太が立ち上がる。
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「行くぞ」
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大虎も続く。
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「久々の仕事だな」
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綾子が驚く。
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「え?」
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誠司が静かに笑った。
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「先生」
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「その生徒はたぶん」
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「ただの失踪じゃない」
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窓の外。
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雪は激しさを増していた。
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そして。
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誰もいない校舎の地下。
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暗闇の中。
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一人の少年が目を開く。
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「やっと来たか」
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その瞳は。
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真っ赤に染まっていた。
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―第7話へ続く―
第7話
消えた一年生




