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第2話 条件があります

理事長室。


静寂。


時計の秒針だけが音を刻んでいた。


「条件があります」


本城圭太と藤川誠司。


二人の言葉に、


理事長の表情から笑みが消えた。


校長は唾を飲み込む。


教頭は既に顔面蒼白だった。


加東綾子だけが興味深そうに二人を見つめている。


理事長がゆっくり口を開いた。


「聞こう」


圭太が足を組む。


まるで面接官だった。


「まず一つ」


そう言って窓の外を指差した。


「野球部」


校長が頷く。


「はい」


「弱ぇーよな?」


校長の顔が引きつった。


札幌帝都学園野球部。


創部三十五年。


甲子園出場ゼロ。


北海道大会ベスト八が最高成績。


誰も否定できなかった。


「だから全部変える」


圭太が言った。


「全部?」


教頭が聞き返した。


「監督も」


「練習も」


「設備も」


「選手も」


理事長が目を細める。


「選手も?」


今度は誠司が答えた。


「甲子園へ行くなら当然です」


淡々とした口調だった。


「能力の無い人間に席は必要ありません」


冷たい。


あまりにも冷たい言葉だった。


綾子は思わず誠司を見た。


誠司は笑っていた。


だが目は笑っていない。


綾子は初めて寒気を覚えた。


この少年は危険だ。


圭太とは違う。


もっと別の意味で。



「二つ目」


誠司が続けた。


「僕達専用の部屋を下さい」


校長が首を傾げる。


「部屋?」


「使っていない部屋なら何でも」


「生徒会室でも」


「空き教室でも」


「構いません」


理事長は考えた。


「何に使う?」


誠司は少しだけ笑った。


「秘密基地です」



校長が拍子抜けした顔をする。


だが理事長だけは違った。


誠司は嘘をついている。


それが分かった。


しかし何のための部屋なのかは分からない。



「三つ目」


今度は圭太。


「入学予定者名簿」


「全員分見せろ」


部屋の空気が変わった。


「それは無理です!」


教頭が叫ぶ。


「個人情報ですよ!」


「だから?」


圭太が睨む。


教頭は言葉を失った。


猛獣に睨まれた小動物のようだった。



「安心して下さい」


誠司が助け船を出した。


「悪用する気はありません」


「僕達はただ探しているだけです」


「ある人物を」



理事長の眉が動く。


「誰だ?」


誠司は答えなかった。


代わりに立ち上がる。


そして窓の外を見る。


降り続く雪。


白い世界。



「必ずいます」


誠司が呟く。


「この学園に」



圭太が笑った。


獲物を見つけた狼のように。



「見つけたら面白ぇーぞ」



綾子だけが気付いた。


二人の視線。


それは甲子園にも、


学校にも向いていない。



もっと別の何か。



誰かを探している。



そしてその誰かは、


札幌帝都学園の中にいる。



理事長は背筋に冷たいものを感じた。


二人が入学してくる。


それは希望か。


それとも災厄か。


まだ誰にも分からなかった。



その夜。


理事長室に一本の電話が入る。


受話器を取った理事長は、


相手の声を聞いた瞬間、


立ち上がった。



「まさか・・・」



受話器の向こうから聞こえた名前。


それは。


誠司が探している人物だった。



聖斗。



―第3話へ続く―

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