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異世界へ夢を乗せて

 西を目指し始めた2人。

最初に目指したのは最前線の街からひと山越えた町マックラー。

山道とはいえ人間が入って久しく、だいぶ整備され歩きやすくなっている。

マックラーまでは2日ほどかかる道のりである。

トウニはこの世界のことには疎いので季節が同じように訪れるのかわからないが、感覚的には穏やかな秋といった心地で周囲を見ていた。

木々は紅葉しており近くに見えた小川はきれいなものだ。

川魚だっているかもしれない。

大自然を満喫しつつ歩く旅は存外楽しく童心に帰るようだと彼は思った。

しかしこれをレンに言えば遊び気分でいるな、緊張感をもてと怒られるだろうと考え黙っていた。

「なあトウニ」

「なんですか」

「いい景色だな」

「え...」


 予想外のレンの言葉に驚きを隠せなかったトウニはまじまじと彼女を見た。

彼女は穏やかな顔をして景色を眺めていた。

トウニは自分が何か試されているのかと疑ったがどうやらそうではなさそうだった。

「なんだ?」

「いや、自分もそう思っていたけどそれ言ってらなんか小言返されるんじゃないかと」

「そうだな。言っていたら小言を返した」

「この気持ちはなんと言って表せばいいのか。自分の立場の低さを改めて知ったっす」

「そうか。いいことだな」

「気分良さそうですね」

「私がか?」

「だっていつもならもっと怖い顔して言いそうだから」

「確かにそうかもな」

「というか、気が抜けてないっすか」

「ああそうだな。この道は人の通りもそこまで多くない。ここの景色は好きでな、私にとって数少ない気を抜けるところなんだ」

「お気に入りってことか。いいすね、そういうところがあるって」

「ああ。ここで戦が起こらないように、といつも願ってしまう」

「ふーん、そうなるといいすね」


 彼女が言った通りマックラーまでは穏やかに進み町に入ることができた。

自分たちが魔王軍の者であることは容易く分かることではない。

だがわかる者にはすぐに気づかれると言われている。

それがどういう理屈なのかはわかっていないため気が抜けないのである。


 町中を進み宿をとる。

「ひゃー、つっかれたー。この後はどうするんですか?」

「ああ、夜になったら町を偵察してくる。それまではここで待機だ」

「りょうかーい。じゃあちょっと腹ごしらえに」

「待機と言っただろうが!」

「それはレンさんであって自分ではなく」

「お前がうろついたら私が警戒している意味がないだろうが」

「大丈夫っすよ。自分のこと魔王軍に属してるって知ってるの魔王さんとレンさんとパトラだけだから。実質2人」

「それは、確かにそうなのだが、人間の中には勘のいい奴がいてわかるというのだ。気をつけようがない」

「じゃあなおさらいいじゃないですか。気をつけようがないなら」

「だから人気のない夜に活動を」


 レンは最後まで言わずにナイフを抜いた。

トウニもこれはまずいと気づき降参のつもりで両手を上げた。

しかし彼女は構わずナイフをトウニの首に押し付けた。

「いいか、我々は潜伏しているのだ。意味がわかるか。迂闊な行動は軍全体を脅かすことになるのだ」

「ですね、はは、仰る通りにございます、頭の回りが悪いものでして、いま、気づいた次第にございます」

「そうか。それは危ないところだった。理解できないなら無用な首を切るしかないと思っていたのでな」


 夜になるとレンは1人で出かけて行った。

トウニも恐る恐る外に出てみると特に罠も騙し討ちもなく自由であることがわかった。

自由。

いまそれを満喫できることが何より嬉しく、彼は思わずはしゃいでしまっていた。

ずっと宿の中でレンと一緒であったため緊張しっぱなしでありろくに休めなかったため今更に空腹を感じていた。

「おなかすいたー。なんか美味しいのないかな。お?おお、串焼きじゃん。こっちの世界に来てからなんかこれが好きになっちゃったのよね。へへ、どぉんな種類があーるのっかな」


 トウニが宿に戻ると未だそこは無人であった。

ゴロリと横になり深呼吸をしていると眠気が一気にやってきてトウニを遠い世界へ連れて行こうとする。

「なんてぇ考えてると、また異世界に行っちゃいそうだぜぇー」

そうして彼はぐっすりと眠った。

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