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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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後鳥羽上皇は責任を逃れたい

北条義時は内心不安を抱えていた。幕府軍が鎌倉を発った直後に義時の邸に雷が落ち、下働きの男が一人死亡した。

「落雷は幕府の運命もこれまでという前兆だろうか」

義時は狼狽して大江広元に尋ねた。

「恐れることはない。かつて勝利を収めた奥州合戦では落雷があった。幕府にとって落雷は吉兆である」

広元は義時を安心させた。このエピソードは吾妻鏡に掲載されている。『吾妻鏡』は執権北条氏を正当化する目的で編纂されたと考えられている。執権北条氏は源氏将軍の権力を事実上簒奪した。さらに承久の乱では臣下が上皇の追討軍を破り、上皇を罰するという君臣関係の観点では逆賊の所業をなした。

この北条氏を正当化する論理として、北条氏が徳のある政治を行い、天が北条氏を認めているとした。北条氏に対立する勢力が滅びる直前には大抵不吉な出来事が描かれる。この点では易姓革命を正当化する中国の歴史書の雰囲気がある。この吾妻鏡も承久の乱では自然現象の不吉を人為が打ち破った。結果は幕府軍の圧勝であった。


幕府軍は東海道、中山道、北陸道の三方から京に攻め上った。上皇方は効果的な迎撃ができず、各個撃破された。上皇方は文字通り上皇方であって朝廷の勢力を結集したものではなかった。


後鳥羽院は元々、安徳天皇が健在の時に三種の神器の継承なく即位しており、伝統重視の公家からは正統性を疑問視される弱点があった。平家滅亡後も草薙剣が失われたままであった。これを克服するために後鳥羽院は日本刀の作刀にのめり込んだ。


後鳥羽院は寺社勢力とも距離があった。平家滅亡時は寺社勢力も平家に反発していた。これに対して後鳥羽上皇は寺社の権益も抑制しており、寺社勢力の熱烈な支持は得られなかった。


京の最終防衛線は宇治川になるが、宇治川の戦いでも上皇方は敗北した。敗報が伝わると後鳥羽上皇は保身第一の無能公務員体質を丸出しにした。上皇方の武士の山田重忠らが最後の一戦をしようと御所に駆けつけた。ところが、後鳥羽上皇は門を固く閉じて言い放った。

「武士達を入れると御所が関東方に攻撃されてしまう。武士達は勝手にどこかに落ち延びよ」

武士達が勝手に挙兵したもので、自分の責任ではないとの論理である。この返事は上皇に好意的に解釈すれば「お前たちにしてやれることは無い。逃げよ」となる(細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書、354頁)。武士達の華々しく戦って散るという玉砕思考を戒めたかったのかもしれない。仮に、そのような意図があったとしても、それが武士達に通じることはなかった。

「大臆病の君にだまされた」

重忠は激怒した。

一方で後鳥羽上皇の近臣の藤原秀康は言葉通りに逃亡し、大和国や河内国に潜伏した。後鳥羽上皇と秀康には阿吽の呼吸があったのかもしれない。


後鳥羽院は幕府軍に使者を送り、承久の乱は謀臣の企てであったとし、義時追討の院宣を取り消し、藤原秀康や三浦胤義らの逮捕を命じる院宣を出した。

この無責任さは後白河院と重なる。後白河院は源義経に源頼朝追討の院宣を出しながら、義経が敗北すると取り消した。頼朝は日本一の大天狗は誰のことかと激怒したが、後白河院を実力で排除することはしなかった。後白河院を幽閉した平清盛や木曽義仲の事例を失敗と考えたのかもしれない。

これに対して北条義時は異なった。後鳥羽院は隠岐国、順徳院は佐渡国に配流となり、政治の舞台から姿を消した。

土御門院は承久の乱に関与しておらず、幕府の処罰対象外であった。しかし、「自分だけ京にいる訳にはいかない」と言い、自主的に土佐国に配流となった。


三上皇の配流は前代未聞のことである。そもそも天皇の地位にあった人物を流罪にすることがタブーである。保元の乱では、そのタブーを破って四百年ぶりに崇徳院を讃岐国に流罪にした。崇徳院の先例があるから、承久の乱も上皇の流罪になった。崇徳院の祟りを想起したくなる。承久の乱の失敗の原因を崇徳院の怨霊の祟りとする解釈も生み出した。


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