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30。賃貸契約できました!

「はあ……もういい。とりあえず、おかえりマヤ。ーーところでお嬢さん」

「へっ、わ、私ですか?」


ーーび、びっくりした〜。

こっちに会話が回ってくると思ってなくて、すっかり油断してたわ。


「こっちの書類なんだが、一通りの確認とサインを頼む」


そう言って書類を全て渡される。



「上の奴らは先に確認してサインも終わってる。ただ、最終的な契約者はお嬢さんになるから」


ちゃんと確認してくれと言われパラパラ(めく)っていくと、そこここに走り書きのようなマゼンタのサインと、流暢なシアンのサイン。


ーーやっぱり、自分達で字、書けたんじゃないのよ。


書けないから代わりにとお願いされた例の申請書のサインは、()()()()()私に書かせた線が濃厚ね。


まんまとハマった昨日の私、もう少し疑ってほしかったわ……



気を取り直して、手元の書類を始めから確認していく。


重要事項説明書に、賃貸借契約書と入居申込書。

物件に関する基本情報、家賃に手数料、明渡しや修繕に関しての取り決め、各種禁止事項に保険の申込書ーー


……さすが自称リアリストな私の夢。

びっくりするほど忠実に現実を再現している。


リアリティを追求した結果、ファンタジーな夢の世界を見事に台無しにしているわね……


自分に呆れながらも、ひとつずつ内容を確認し、サインを書き込んでいく。


猫は契約できないからマゼンタとシアンは同居人って扱いで、表立った契約者は私になるのみたい。


ーーただ”契約”って言葉に少し身構えてしまう。……昨日のこともあるし。


いやいや、夢の中のことに深刻になっても仕方ないわ。



記入漏れがないかもう一度最初から確認してから、おじ様に書類を返す。


「書けました。確認もちゃんとしましたので、大丈夫かと」

「ああ、ありがとう。こちらでも再度確認させてもらうよ」

「はい、お願いします……あの、ところで」


でもちょっと心配だから、一応聞いておこう。


「ーー血判って、必要ないですよね?」

「ーーは?」

「それで、手続きが終わったら紙が光って消える、とかもないですよね?」


……昨日のアレは、結構心臓に悪かった。

万が一同じことがあるなら、先に心積(こころづも)りをしておきたい。


「あっはは、ソフィアさんたら! 血判なんて今時やらないわよぉー」


それってどっかのマフィアの血の掟ってヤツかしら?ソフィアさんって物知りね!


マヤさんがコロコロと楽しそうに笑った。


あ、この世界にもマフィアいるんだ……そしてマヤさんもなんでそんな事知ってるんですか。


マヤさんって何か引き出しが多いというかーー不動産屋以外の顔も持っていそう。

そのうち聞いてみようかしら。


「? 別に直筆のサインならそれで構わんし、拇印を押すなら普通にインク台を使えばいい」


リュウのおじ様は少し考える素振りを見せたが、引き出しからインク台を出して渡してくれた。


良かった、今日は指先を切らなくてもいいのね。


チラッとガーゼの巻かれた自分の親指を見て、ほっと息を吐いた。


顔を上げると、おじ様とバッチリ目が合う。


「ーーまさかとは思うが。その指、アイツらに怪我させられたのか?」

「ええと……まあそうです」


なんか必要だったからとナイフで切られましたと言えば、急におじ様が苦虫を噛み潰したような顔になった。


マヤさんはマヤさんで天を仰いで「アイツら後で絶対シメてやるわ」と不穏なことをのたまっている。



……?


あの命名申請書の提出って、マヤさんとリュウおじ様もやっているのよね?そのハズよね?


だとしたら、『あの二匹なんてことしてやがる』みたいなこの空気は一体なんなのだろうーー



二人の不穏な空気に一抹どころでない量の不安を掻き立てられ、私は頰を引きつらせたのだった。

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