五十七話 美少女じゃなかったぴえん
席には父さん、母さん、俺、御子神さんが座っている。
「すみません、私まで…」
「構わないですよ、これまでのなぎの活躍などを聞かせてください」
そう父さんが言い、この晩餐は俺の話でくっそ盛り上がった。
ダンジョンでの活躍、人柄の良さ、囲んでいる人たちの話。それを聞いて母さんは
「あらあら!明日はお赤飯にするわね!」
これはアイシャの話が出た時だ。俺が優しくしていることを話してしまった。
父さんはというと
「…俺にもそうやって女性に囲まれた時期があった……ただな……。おまえどうやって美少女を手懐けた?教えてくれ」
この人たち……俺の両親だわ。
納得できてしまう自分が怖い。
夕飯を食べ終え御子神さんを門前まで送る。
仕事があるようで帰るようだ。
見送ったあとお風呂に入りリビングでぼーっとしていると
「なぎ、座りなさい」
そう真剣な声で父さんに呼ばれた。
父さんの対面に座る。父さんの横には母さんもいる。
「正直な……なぎにはダンジョンに行って欲しくないんだ」
唐突にそんなことを言われた。母さんも同じ意見なんだろう。
「川越ダンジョンのことを聞いてな。行方不明者がなぎだと聞かされた時は心臓が止まったかと錯覚したぐらいだ。…どうしてダンジョンに行く?」
…親からしたらもっともな疑問だろう。息子が命のやり取りをしている。いつ死ぬかもわからない危険な場所だ。それを知ったら俺が親なら絶対に止めることだろう。
だけど…
「ダンジョンが現れてから…生活の全てが変わったんだ。代わり映えのない世界に色も生まれた。ダンジョンと関わっている毎日がすごく充実してる。友達もできた。……魔物と戦うのは危険なことだとわかってるけど……これが俺の『やりたいこと』なんだ」
誠心誠意伝えた。
しばらく沈黙が続き……
「…ふぅ。今度友達を紹介してくれ」
「そうね。好きなことをして後悔しないように生きなさい」
…やっぱり俺の両親だ。両親が背中を押してくれる。これ以上のサポートはないだろう。
「うん。父さんも気にいると思う。…俺世界一の探索者になるから。応援してて」
あらためて決意を固め、最強の探索者を目指すことを両親に誓った。
5日ほどたった。今日は1月3日だ。
大晦日は特にやることもなく家族で過ごした。
笑ってはいけないを見てね。たまごが孵化することはなかった。
新年になると1日目から親戚が挨拶に来た。今までは挨拶だけだったけど見知った顔の人とは話をした。じんさんとかね。
来ることになっていた親戚がほとんど来たので今日は家族で初詣に行く。
1人おまけがいるが。
「ほら!早く!」
「わかってるよ」
由衣だ。毎年初詣は家族と由衣の4人だ。参拝列に並び順番を待つ。あまり大きいところではないのですぐに順番がまわってきた。
5円をいれ手を合わせお辞儀をして
(彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しいボンキュぼんの。彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい)
と唱える。
これだけ願掛けすれば…及第点だろう。
全力で祈っておいた。
額の汗を拭う。
「…絶対変なことでしょ」
「んなわけ」
「なら言ってみなさい」
「言ったら願掛けの効果なくなるんですぅ。知らないんですかぁ〜?」
「知ってるわよ。あんたのくだらない願いを叶えさせないようにしようと思っただけ」
こいつ…。これで俺が知らなかったらどうするんだ。彼女できないじゃんか。
「はぁ…。屋台寄って帰るか」
おみくじは基本引かない。
めんどくさいし信じてないから。
醤油だんごを買う。大好物。
ちなみに今は由衣と2人っきりだ。親はデートがしたいみたいで除け者にされた。
いつまでたってもラブラブだ。
(あれ…なんか涙が)
これは憎しみの涙だろうか。俺も彼女とイチャイチャしたい。
先に帰ることを連絡する。
「いくか」
「そうだ!今日から杏奈と新宿のダンジョン行ってみようと思ってるんだけど何か情報とかない?」
「…まだ正月なのにやる気満々だな。情報は無いけど知り合いならいるぞ」
「へぇ……女?」
やめて。ちょっと殺気が……
「男。ど変態の」
「…変態仲間作ってるの?」
聞き捨てならんな。
「…言っとくが由衣たち2人がかりでも何回やっても勝てないぞ。あいつはそういうやつだ」
武装庫なんてチートだしな。魔剣も持ってるし。
「…!!なぎ以外にも人外みたいなのっているの?」
「今はいないんじゃないか?ただ断言はできる。あいつはこっち側にくる」
今は期待だけで充分。いずれ近づいてくる。それが楽しみで仕方ない。
思わず笑みが溢れる。
「…楽しそうね。……そっか、ちゃんと友達見つけたんだね」
そう言い頭をぐりぐり撫でてくる。
悪い気はしないが…
「…人前だからやめてくれ」
少し恥ずかしかった。
「その友達君の名前は?容姿も教えて」
「如月 真琴。爽やかイケメンだな。物腰も柔らかくていい奴だ。腰に紫色の剣を刺してるぞ」
「見かけたらアドバイスもらうようにするわ」
実力が違うから会う可能性は低いが…支部で会うことはあるかもしれないな。
そうこう話していると自宅に着いた。
由衣は探索の準備をしたらすぐに出て行ってしまった。
昼過ぎだがだんご食いまくって腹は膨れてるのでたまごの様子を見るため自室に向かう。
「……きゅ………い」
「!?」
たしかに今聞き慣れない音が聞こえた。
自室まで走りドアを開けるとたまごがもごもご動いていた。まだ殻を壊せていない段階だ。
「頑張れ…!頑張れ!」
たまごから出てくるのを見守る。
たしか殻を破ったりするのはダメだった気がする。赤ちゃんが自力で出てこないといけない。
…魔物は知らないけど。
パキッ!
横の殻が少し割れた。
まだどんな魔物かわからないがたまごが30センチほどだから大きいのは出てこないだろう。
…魔物は知らないけど。もしかしたら殻から出た瞬間巨大化するかもしれない。
パキッ!
また殻が割れる。
「いいぞ!頑張れ!頑張ってでてこい!」
その後もパキパキ割れるが一度音が鳴り止んだ。
「どうした?休憩か?」
よく観察するとたまごが上としたで分かれていた。胴体真っ二つみたいな感じで。
「…きゅい!きゅい!」
そう泣きながらたまごから出てきたのは……
真っ白なトカゲ?だった。
体長は両手に治まるサイズ。背中から少しだけ二本の突起が出ている。まだ目が開いてなく鼻を頼りにしてるのかよちよちしてる。
指で優しくトカゲの頭を撫でる。
(トカゲの魔物か?ちびっこい。戦えるのか?)
可愛いことは確かだから写真を撮る。
手に乗せてみると甘噛みを始めた。
お腹が空いてるのだろうか。
「……何食べるんだ?」
とりあえず冷蔵庫からレタスとピンセットの先でちょっとだけ摘んだお肉を与えてみるが…食べようとせず指を噛もうとし続けている。
「おまえ…人肉が好きなのか?」
もしかしたらそういう魔物なのかもしれない。
その後も色んなものを食べさせようとしたが食べることはなくミルクも飲まなかった。
「…この赤ん坊手強いな…」
あと試してないものは…ダンジョンで手に入るものだ。だが生憎と手持ちには何もない。
「きゅい!きゅい!」
噛もうとしながら必死に訴えてるように見えるが……もしかして
「……MPか?」
炎纒を使い指先にほんの少しだけ炎をだす。
するとどうだろう。パクパクと食べ始めた。
「おぉ。おまえは魔力を食べるのか。なら魔石も食べるんじゃ…」
明日検討しようと思う。
げぷっ
ゲップした。
俺の指を握りながら満足そうにしている。
しばらくするとそのまま寝てしまった。
読んでいただきありがとうございます。
もし、この作品が面白いと思ったら下にある評価を押していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。




