↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記編  作者: 井氷鹿


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/9

お前誰だよ

 俺の記憶が無い事を王子に伝えたら、子供らしく声を上げて驚かれた。

「うっそ~っ」 

「ボクの名前、分かる?」

 知らないと首を振ったら、

「え~~っ」 

「じゃ、ここも何処かも分からないんだ」

 表情もコロコロ変わって、面白ぇ。綺麗な顔だけに、見飽きないなぁ。

「何も覚えてないの?」 

 そうだと頷いたら、今度は真剣な顔で聞かれた。

「記憶を失くしたのは、毒を食べたから?」

 毒? 毒食べたのかこのガキ。っていうか、子供に毒食わせたのかよ。

 知らぬ間に口を押さえてたようで、王子が心配げな顔で近づくと左右の手首を掴む。

「?」

「ボクの為に危ない目にあったのに、何も言わず戻って来てくれてありがとうギュンター」 

 そう言って俺を抱きしめて来た。背丈があまり変わらないから、顔が近い。それを押し付けてくる。

 ほっぺが柔らかいなぁ。それに、とてもいい香りだ。

「もう絶対、君を危ない目には遭わさないから。ボクの事、許してくれるかい」 

「もちろん! 記憶が無いから、気にしてないというか」   

 いやいや、王子は悪くないし。子供に気を使われると、何か落ち着かねぇな。

「もう元気だから、うん」 

 泣くんじゃねーぞ、頼むから。

 取り敢えず、肩を抱いて顔を引きはがす。

「ボクの代わりに、君は毒の入った菓子を食べたんだよ。ボクにと出された菓子を君が受け取って、半分にして」

 とその時の様子を、再現するように両手でそのお菓子とやらを割る仕草をして見せた。

 うっ、ぼんやりとしたギュンターの記憶が重なって見える。

 そう、お茶会に呼ばれて勧められた焼き菓子だ。

 君の手から渡して欲しいと言われた、あの焼き菓子。

 それを食わせろと、誰かに言われた、のか? 浮かぶ影。こいつ誰だ?

 その時の情景が脳裏に浮かぶ。どこか別の屋敷の庭先のテラス。

「じゃぁ、殿下とボクとで半分こしましょうか」

 そう言って、ギュンターが手に取った焼き菓子。

 半分に割って、陛下が手に取る前に齧りついたんだ。

「毒味ですよ」

 などと言って、笑いながら。

 気が付くと俺の手は空を掴み、それを食べようとしていた。

 ギュンターの心が蘇ってくる。

 ……ああ、そうか。彼は、分かって口にしたのか。

 自分の記憶と言うより、誰かに見せられてるような映像に近い記憶。

「毒を食べさせようとしたのは……」 

「ギュンター、もしかして、思い出したのかい」

 殿下の手が、頬に触れる。

「君は、全ての元凶は自分だと、そう考えてたんだよね」

「それは良くわからない。ぼんやりとしか思い出せないから」

 俺は、ギュンターじゃないからさ。

 そのうえ、彼が死にたがっていたなんてどう伝えればいいんだよ。

 わずか十歳かそこらの子供が、死にたいなどと考えるなんておかしいだろう。

「正直に話すと、記憶がほとんどないんだ」

 聞く話だけでも、俺だけじゃなく王子の命も狙われてヤバそうなのに。

 記憶がないって、大丈夫なのか俺いや、王子。

「やっぱり、毒のせいなのかい」 

 聞かれても返事のしようがないから、黙って首を振った。

 きっと、その毒で本物のギュンターは亡くなったんだろう。

 それを伝えたら、王子は悲しむだろうか。

 頬に添えられた王子の手を取り、そっと握りしめる。

 王子の表情がふっと柔らかくなった。

「見た目はギュンターなのに、違う人みたいだな」

 は?

「さっき、入り口でボクを抱き止めてくれた。ギュンターだったら抱きついたら頭をなでてくれるけど、君のように抱きしめるなんてしないよ、多分。遠慮して」

 全く遠慮なんて考えなかった自分に、驚いてしまう。

 そうだ、相手は一国の王子様なんだ。

 身分の差って今まで考えたことなかったが、今後は考えて行動しないと。

「それは、大変失礼しました」

 ううん、と王子は首を振る。

「あんなにしっかり抱きしめられる事なんて無いから、嬉しかった」

 おっと、抱きしめるのはアリなのか。

 心持ち頬を赤らめる王子様って、これは初々しいというか可愛らしいというか。

「ほっぺも」

 うっ、これはヤバい。王子のほっぺを勝手に触ったら、そりゃマズイよな。不敬罪とか言われたらどうすんだ。

「ごめんっ。勝手に触ったりして。じゃない、大変申し訳ございませんでしたっ」

 慌てて立ち上がり、握った手を掲げ頭を下げた。

「何言ってんだよ! ボクは嬉しかったよ」

 とニコニコ笑顔で立ち上がり、肩に手を添え俺を座らせる。

 え、待てよ。口調が変わってないか?

「なんか変だよ、ギュンター」

 そういう君も、なんか変。

 口調が変わった王子は、急に真面目な顔つきになる。

「やはり、全然別人だ。君、本当にギュンターなの?」

 ううっ。今度は意地悪そうな目つきで顔を覗き込んできたぞ。

 中身が入れ替わりましたって言ったところで、この王子は信じてくれるのか?

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」

 また笑顔に戻り、上品にティーカップの載ったソーサーを持ち上げる。

 一口飲み、満足げに頷く。

「今年の茶葉は最高だと叔父上が仰ってたけど、その通りだ。香りも味も最高だ、そう思わない、ね、ギュンター」

「はぁ」

 相槌をうちつつ、俺も紅茶を一口。ちょっと冷めて飲みやすくなってる。

「またここで暮らすことになったんだから、そんなに緊張しないで。ね」 

 ここで暮らす? はい?

 こんな広い部屋で、俺が王子と一緒に暮らすのか。

 別の部屋じゃなくて。

「ここで、暮らすんですか俺」

 そのまま聞き返したら、王子はニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「ねぇ、本当は君誰なの。見た目はギュンターそのままなのに」

 あぶねぇ、紅茶を吹き出しそうになったぜ。

「でも、この世界に今、ユニコーンは一人しかいないはずなんだ」

「ユニコーン? って、額に角の生えたあの馬?」

「そうだよ。ユニコーンは滅多に見つからない、希少種の中でも特に貴重な馬だよ。Ωμ(ミュー)種の前髪メッシュをユニコーンの角に喩えられてそう呼ばれてるの。君が誕生以来、誰でも知ってるよ」

 いやいやいや、知らねーよ。何だよその御伽噺は。

 しかも、居るのかよユニコーンがここには。そっちがスゲーよ、見てみたいよむしろ。

「君の髪の毛、前髪の一部がプラチナブロンドなのも忘れたっていうのかい」

 いいっ? 俺の髪の毛が何色だって。

 と前髪に手をやるが、見えねーよ。引っ張ってみたら、何か白っぽいぞ。っていうか、俺の髪の毛何でこんな色なんだよ。

「いいから、こっちに来て」

 半分パニくってたら、王子がまた俺の手を取り速足で歩きだす。

 終いには小走りで次の間にある姿見の前に連れて行かれた。

 うそ~ん。

「ほら、これがユニコーン、君だよ」 

 王子と並んだ自分の姿に、腰が抜けそうになる。

 知らねーよ、こんなピンクゴールドの髪の毛をした子供なんて。   

 お前誰だよ!


挿絵(By みてみん)

最後まで読んでいただきありがとうございます。

毎週火曜日と金曜日の更新を予定してます。

面白かった、もしこの先が気になる、と思っていただけたら

ぜひブクマ登録を宜しくお願い致します。m(__)m

コメントやリアクションもとても励みになりますので、こちらもポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。