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8話 それぞれの夏休み②
夏休みなのに、全然夏って感じがしない。
クーラーの効いた教室と、バイト先と、家の往復。
オレ(泉水 蒼真)は、大学三年生の夏休みを甘く見ていた……。
夏休みでも、レポートや教育実習の準備で大学に来ている。
空いてる日の昼はバイト、夜は疲れて帰るだけ。
スマホを開くと、漣からの短い返信が届いていた。
『今日は遅くなりそう』
それを見て、『了解。無理すんなよ』って短く返す。
その一言を打つのに、少しだけ迷った。
余計なことを言ったら、負担になる気がして……。
本当は、少しだけでも会いたい。声を聞きたい。
けど今は、漣の作品制作が大詰めで邪魔しちゃいけない時期だって分かってる。
だから、会いに行かないようにしてる。行かないって、自分で決めた。
漣がどれだけ本気で描いているか知ってるから。
帰り道、大学の掲示板に貼られたポスターが目に入った。
学内展示の告知。
そこに、漣の名前がある。
すごいな、って思う。
親友として誇らしい。
なのに――胸の奥が、少しだけ重くなる。
漣が、どんどん遠くに行ってしまう気がして。
その背中を、ただ見送ることしかできないことが、少し怖かった。
オレは隣に居られてるのかな。
漣にとって、オレは……まだ必要な存在なのかな。




