表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/464

第八十二話(カイル歴506年:13歳)新たなる階梯

これより第四章は終わり、第五章 雄飛(新たなる階梯へ)へと進みます。

これまでの歴史改編で、【前回の歴史】とは違う方向に進みだした世界、そして以前に比べ、立つ位置が変わることによって生じた、新らたな、そして更に大きな展開に巻き込まれていきます。


今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

出陣からはや1か月半、やっとテイグーンに戻って来れた。

懐かしいという程の期間を留守にしていた訳ではないが、それでも、ずっと待ち望んだ帰還だ。



「みんな、ただいまっ! この町を護ってくれてありがとう! そして、会いたかったよ!」



「おかえりなさいませっ!」

「おめでとうございますっ」

「お帰りなさいませっ」



整列した仲間たち、町の住人に歓呼と喝采を浴びながら、正門をくぐり町の中に歩みを進めた。

クリストフ、エランなど、町を守った彼らの顔も誇らしげだ。

そして、皆が以前より一回り大きく、見違えたように見えた。



「ミザリーさん、帰って直ぐで申し訳ない、大至急対応しなければならない案件が山のようにあって……

先ずは皆を労い、勝利の喜びを分かち合いたいけど、その前に懸案事項を片付けたいので、皆に集合をかけてもらえないかな?」



「はい、事前に伝令にてご指示いただいていた件も含め、ご報告の準備は整っております。

皆も集合し、別室に控えております」



早速、主要な仲間(魔法士24名+行政府関係者5名+傭兵団からヴァイス団長及びキーラ副団長、サラ及びアン)を交えて会議を始めた。



「すでに伝え聞いている者もいるとは思うけど、今回の戦功で得たものは非常に大きい。

先ずはそれを共有したいと思います。


戦功の報奨として、


私は男爵位を正式に拝命し、父上は子爵に昇爵しました。

また、個別論功第一位として金貨1万枚を、国王陛下より開発費として金貨5万枚を賜わりました。


次に体制の変更について、


辺境騎士団が新たに創設され、ソリス子爵、ソリス男爵の軍も、一部編入されることになります。

また、辺境騎士団支部をテイグーンに置くこととなり、ヴァイス団長が辺境騎士団支部長に就任します」



そして全員を見回し、俺は頭を下げた。



「これらの褒賞は、テイグーンで皆が勝ち取った結果です。本当にありがとう。


今回の結果、テイグーンは更に大きく生まれ変わります。雌伏の時は終わりました。

皆も忙しくなるかも知れないけど、どうぞよろしくお願いします。


ミザリーさん、テイグーンの戦果について、改めて得たものを教えてもらえるかな?」



「はい、テイグーンの戦果(鹵獲品)も、非常に大きなものとなっております。


先ず、労働力として捕虜400名を確保しています。

また、侵攻軍が遺棄した騎馬600頭も鹵獲しました。


なお、鹵獲した武器、防具については商人と鍛冶師を伴い確認しました」



◯武具の鹵獲品


<武器について>


侵攻軍の武具(剣)で質の高い良品を250本

一般規格品の武具で使用可能なものが500本

その他、損傷のある一般規格品の剣を850本



<防具について>


良品として再利用可能な防具類は150式

一般規格品で再利用可能な防具は250式

大きく修理が必要な防具は800式



「基本的に、武器は使えるものが多く、防具は、先ほど申し上げた物の他にも、再利用が厳しいものが多数あります。相当安価になりますが、引き取ると申し出ている商人もおりますが、いかがいたしますか?」



「良品は修理が必要な物を含め、予備として確保し、それ以外は売却する予定で、詳細は後ほど定めていきましょう。廃棄品の転用についても、ちょっと考えがあるので、それの売却はちょっと保留でお願いします。


あと、騎馬については、辺境騎士団創設に伴い、各貴族家から引き合いが来ています」



<騎馬の売却要望を受けている先>


・ソリス子爵より  200頭

・ゴーマン子爵より 100頭

・コーネル男爵より  50頭



「お話し中失礼します。傭兵団にも騎馬50頭、剣良品50本、武具良品50式を、お譲りいただけますか?」


「団長、了解しました。必要数はお譲りいたします。詳細については後ほど相談させてください」


「ありがとうございます。問題ありません」



「では次の議題として、早急に対応すべき工事関係について確認したいけど、今どんな感じかな?」



その質問に対し、速やかに建設状況が報告された。



(着工中)


迎賓館の建設工事

辺境騎士団兵舎、屯所新設

駐留兵兵舎、屯所移設

傭兵団兵舎、屯所移設



(完成済)


捕虜収容所建設工事



「俺がこちらに居ない間に、既に色々進めてくれてありがとう。


既に全ての工事が始まっていてちょっと安心しました。

今後、辺境騎士団創設に伴い、第二区画と第四区画は大きく変わる予定です。

そして、第四区画で今進めている改築も、当面の暫定対応、ということになります」



最後に、皆の知らない、一番頭の痛い懸案事項について、話を進めなくてはならない。

実はこれがあるため、皆には急遽集まってもらった、そういっても差し支えない。



「次に行われる、第三回最上位大会ですが……、ここテイグーンで開催する事になりました」


「おおっ!」



全員から歓声が上がった。



「問題は……、他領も含めた合同大会として、ハストブルグ辺境伯、キリアス子爵、ゴーマン子爵、コーネル男爵からも代表選手が参加し、それぞれ辺境伯、子爵、男爵一行が、来賓としてお越しになります……」



「えええっ!」



全員が、先ほどとうって変わって、悲鳴のような声を上げた。



「ご逗留いただく場所が……、まだありませんっ!」


うん、ミザリーさん、分かってる。



「観客席を含め、競技場が……、ありませんっ!」


うん、クリストフ、分かってる。



「観客の利用分も含め……、宿が足りませんっ!」


うん、クレア、分かってる。



「食事の量が……、間に合いませんっ!」


うん、バルト、分かってる。



「時間が……、足りませんっ!」


うん、みんな、分かってる。



「この話を振られたとき、俺はエストの街開催にしたかった。したかったんだよ、本当に……

でも、今回、大勝利を収めたテイグーンを、お偉方全員が口を揃えて『是非見たい』と……

父までがそんな事を言い出す始末で、どうしようもなく……、ね」



「パンッ!」



アンが手を打ち鳴らし、大きな音を立てた。



「皆さん、決まったことです。どうしようもありません。

こういう時こそ、私たちが力をお見せする時ではありませんか?」



アンのお陰で、全員のスイッチが入った。



「迎賓館の工事を、3交代制で行います。町の住民にも応援を募ります。

ご来賓に相応しい施設を、なんとか間に合わせてみせます!」



「町の外の、今後の造成予定地に、大きな会場と観客席、そして臨時の宿場町を作るしかないな。

エラン、メアリー、アストールは基礎工事と防壁などの構築作業を頼む!」



「来賓対応の人員を見繕います。

あと宿屋にも交渉し、臨時宿場町への展開や、運営依頼などの交渉を進めます。

カーリーン、リリア、クローラ、手を貸してちょうだい」



「カウル、当面は建設資材の輸送だ。それが終われば食材の輸送。

先ずは商人たちにあたりをつけておきます。大きな商機が有れば、彼らも積極的に動くでしょう」



最初に泣き言の悲鳴を上げたそれぞれが、先頭に立って対応に動き出した。



「ありがとう、皆の言う通り、やるしかない。


俺とエラン、サシャで宿場町の建設計画を、他の皆はそれぞれの懸案事項の対処と、実行委員としての業務をお願いします。


ゲイルたちは、兵士を臨時人足として統括して欲しい。父にも話を通しているので、間もなく200人ほどが応援にくる。この町の兵と合わせれば、それなりの数になると思う。


クリストフは、収容所の捕虜400人、期間労働の全員を統括して、作業に充てて欲しい。


あと、飲食街や屋台も作る必要があるな。

ミザリーさん、領民にも早めに布告を出して協力を仰ごう。

領民や商人の、露店や屋台などの出店許可、決め事なども行政府でとりまとめて欲しい。」



「了解しましたっ!」



こうして、予想外の対応をこなすため、俺たちは動き出した。

本来は、皆を労い、ゆっくりさせてやりたかった。

町のみんなを交えて、酒(俺は飲めないけど)を酌み交わし、勝利を味わい……



「あっ! 忘れてたっ!」



俺の顔を見て、皆に嫌な予感が走る。



「ごめん! もうひとつ! その前に第二回テイグーン収穫祭(戦勝記念祭)があった」


「……」



「申し訳ないっ! 実行委員のみんなは、まず祭りの準備を、その後に第三回最上位大会の準備をお願い」

ご覧いただきありがとうございます。

ブックマークやいいね、評価をいただいた皆さま、本当にありがとうございます。

凄く嬉しいです。毎回励みになります。

また誤字のご指摘もありがとうございます。

こちらでの御礼で失礼いたします。


これからもどうぞ宜しくお願いいたします。


<追記>

七十話~まで毎日投稿が継続できました。

このまま年内は継続投稿を目指して頑張りたいと思います。


日頃の応援や評価いただいたお陰と感謝しています。

今後も感謝の気持ちを忘れずに、投稿頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になった点]第三回最上位大会をテイグーンで開催ってのはいくらなんでも不自然じゃないかな。ただでさえ辺境騎士団の受け入れ設備の工事で忙しいのに、それ以上の工事人足を遠いテイグーンに呼ぶのは無理がある…
[一言] クランについては、たとえ主人公や兄が気落ちしてしまったとしても皆と共有し、悼む必要があるとおもうんだけどな。 なあなあで済ませて良かったためしある?
[一言] クランの話はしないのか、出来ないのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ