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41―居座るマドレー


「もう大丈夫だよ」


 優しい声でベッドに向けて声をかけているフォールさんの背中が、開かれたままだった扉から見えた。その室内には血に染まるカザミが横たわっている。


 扉を潜ろうとした足が、カザミの姿を見て踏み入るのをやめた。生きているのか、死んでいるのかもわからない有様で、突然の出来事に混乱してしまったからだ。


 息をするたびに鼻を突く鉄の臭いが嗅覚を刺激してくる。カーテンの閉められた窓は薄暗い室内を演出し、顔の左半分の皮膚が裂け千切られたカザミの顔に、子供の頃に理科室で見た人体模型が思い出された。


 瞼も皮膚と一緒にめくれたようで、飛び出したように見える血走った眼球がギョロリと動き目が合った。何が起きているのか全くわからない状況で、見つめられたカザミの眼に吐き気が込み上げてきた。


「うっ……」


 口元を抑えて見下ろしていた視線をフォールさんの背中に戻すと、


「リーサさん。見ての通りだから、今は……」


 振り返ったフォールさんの後ろ、ベッドに横たわる二人の小人が見えた。異世界に転生した私でも、小人を見るのは初めてだった。


 静まり返る室内からは、スー、スーと小さな寝息が耳に届いてきた。


「下まで血の臭いが洩れているわ」


 私が見てくるわと言って、上の様子を見にきたのと付け足すと、


「それなら説明した方が良さそうだね」


 ペチャッと血溜まりの中を通り、横たわるカザミを見えていない様に振舞うフォールさんの姿に、おもわず「はっ?」と口にして視線を向けた。

 廊下側に出てくると、何も言わずに扉を閉めようとするフォールさんの姿に、手を伸ばして閉まりかけていた扉を止めた。


「え? 助けないの?」


 この人は自分で大賢者と言っていたから、魔法でパッと治してあげれるんじゃないの? と勝手な想像をしていただけに、フォールさんの行動に苛立ってしまった。

 口調も少しばかり強くなっていたと思う。だけどフォールさんは冷静に、


「今は静かに。下で話すから手を退けてくれないかい」


 僅かに開いていた扉を閉めるからと、私を見た後に扉を抑えていた手に視線が向けられた。


「大丈夫なの?」

「それは僕にもわからない。けれどここで騒いでいても良い事は一つもないからね」


 大丈夫と言ってくれる気がしていた。だけど返ってきた言葉は、フォールさんにもわからないと。

 この世界で初めて出会った同郷とも呼べる存在(相手)に手を差し伸べる事ができない歯痒さを感じた。

 電話一本で駆けつけてくれる救急隊はこの世界には存在しない。居るのは薬師と治癒師ぐらいで、薬師は文字通り薬を調合、処方する内科の様なもの。今のカザミに必要なのは病の薬ではないわ。


 治癒師は大学病院と言えばわかりやすい。治癒魔法で他人の傷を癒す事ができる。ほとんどの治癒師は治癒師連盟(ギルド)に所属していて、治癒師ギルドに所属する治癒師は私たち平民を相手にしてくれない。


 神殿を拠点し、神に仕える身の聖職者が治癒師と同等かそれ以上の回復魔法を使えるとは耳にした事はあるけれど、神殿に連れていき治せるならフォールさんがそうしているはず。


 この世界のポーションも裂傷程度を治すぐらいにしか効果はなく、今のカザミには十分な治療を施してあげる事はできそうになかった。


 扉を閉めまいと、手を伸ばしたまま思い悩んでいた私に、


「止血は済んだようだったから一先ずは安心していいよ」


 そう言われて扉の隙間からカザミを見てみると、確かに床は血に染まってはいるが、裂けた顔も、無くなった腕からも出血はしていなかった。


「……信じられない」


 私の声に反応にするように、瞼の無い眼球がまたギョロリと動き、不気味に見えた。血溜まりに沈む人体模型と化したカザミの姿だけど、出血も止まり眼球をギョロギョロさしている姿を見ていると、心配はいらない気もしてくる。


「さぁ、邪魔をしてはいけないよ」


 今度こそ扉を閉めるよと促すフォールさんに抵抗する事なく、自分から扉を閉めた。

 階段を下りると、丸いテーブルに座っていた双子ちゃんとフロアちゃんに、四角いテーブルに座っていたレレイたち、それとなぜか居座り続けるマドレーさんが一斉にこちらに視線を向けてきた。

 小犬のラックだけは気に留める様子もなく、丸いテーブルの下で床に寝転がっていた。


 とりあえずフォールさんが臭いの正体を説明しようと、階段の前で足を止めた。私はそのままいつも座る四角いテーブル、丸テーブルに近い側の上座に腰を下ろした。

 階段側、扉に近い私の向かい側の席にはマドレーさんが座っているけれど、それはたぶん拷問具から出た目の前に置かれていた席だからだと思う。


 私は来客として上座に座っている意識だから、ここに座っていて何も思わないけど、今のマドレーさんは居た堪れないところじゃないかしら。

 となりではプレゼンを始めた社員の様に、口を開き話始めたフォールさんが居た。


「えーとね、カザミが血塗れで返ってきて寝ちゃったみたいだね。起きるまで臭いはどうしようもないから結界を張っておくね」


 それだけ言うとフォールさんは杖を出して、一瞬だけキラリと光る結界を部屋の中に展開させた。双子ちゃんもレレイたち村娘も、それだけ聞いてどこか納得した様子を見せ「ん」とだけ言って手を上げたフロアちゃん。

 私もそうよね、詳しく聞きたくなるわよねと思ったのだけど、


「今日帰るつもりだった」

「そうだったね。僕が送る事になるけれど、どうせならもう一泊していくかい?」

「泊まる。でも村長が心配する」

「それなら僕が知らせに行ってくるよ」

「ん。任せる」


 なぜそうなる。と困惑したのだけれど、私もよくよく考えてみれば血塗れの姿でレレイたちを任された時を思い出し、皆もいつもの事かと気にとめなかったみたい。

 子供たちは今日もお泊りだと、丸テーブル側でキャッキャと嬉しそうに声を上げている。それに今回は返り血ではないと説明しない辺り、フォールさんなりに峠は越したのだと判断しているのかもしれないわ。

 それなら私も黙っておこうと目を瞑った。


「いいかしら?」


 なぜかの挙手制に突入した様子。フロアちゃんにつられて手を上げたのはマドレーさんで、フォールさんも「どうぞ」と返事をする始末。


「話を続けられるなら扉側に移動してもらいたいのよ。なんだか私に視線が集まっているみたいでむず痒くって」


 ここでそれなのね……


「あと、私は明日も店があるから遅くなる前には帰りたいんだけど?」


 フォールさんは一度だけ、あれ? と思案する様子を見せ、四角いテーブルの上に置かれたシャンプーとリンスの入った瓶を見る。それから、


「何か用事はあったかな?」


 少しばかり会話がかみ合っていない事を察したのは私とレレイたち。マドレーさんはゲートで帰る気満々だったのね。

 膝を組み直すと、たわわな胸を持ち上げて腕を組んだマドレーさんは、


「特に無いわ」


 キリッとした表情でそう口にした。襲った人と襲われた人、二人の関係性はそれだけ。マドレーさんも襲った相手に家まで送って欲しいとは言えなかったのね。


「今日は茸鍋だけど、みんなも食べていくかい?」


 唐突に晩御飯の誘いがきた。そういえば茸鍋に海老も入れるとか言って買いに出かけてたわね。

 海老かぁ……この世界に来てまだ一度も食べた事ないのよね。醤油があれば海老の刺身もいいけど、やっぱり海老と言えばあれだわ。


「フォールさん。海老はね、フライにする物よ」

「フライ?」

「そう、海老フライ。レシピの翻訳するから、今日は茸鍋と海老フライにしましょうよ。それと余分におじいちゃんの分もお持ち帰りで用意してもらえれば助かるんだけど」

「笊ごと買ってきたから問題ないよ」


 それじゃあ、とフォールさんは晩御飯の仕度をするから子供たちはお風呂に入りなさいと声をかけ、子供たちは「「「はーい」」」と返事し、トト君がラックを抱いて、ロロアちゃんがカチリカチリとダイヤルを回して浴場の扉の中へと姿を消した。


 手渡されたノート一式を受け取り私が翻訳作業に入ると、フォールさんは冷蔵庫から白い布が被せられた大きな笊を取り出した。

 丸テーブル側に振り返り、どれどれと言った具合に布を捲り姿を現す海老を見定める。


「なめてたわ。海老、なめてたわ」


 おもわずゴクリと飲み込んでしまった生唾。笊の半分には外側に尾を向けて、円を描くように並べられた十数匹の伊勢海老と同じ(なり)をした海老様たちが未だ弱々しくも扇子の様に開いた尾ひれをハタハタと動かしていた。

 二段に重ねられた将来有望な彼ら(海老)の隣には、手の平よりも大きな貝がゴロゴロと。


「まるで牡蠣ね」


 断らなくて好かったと心底思わせる笊上の海鮮美。何も知らないレレイたちは「なんだかゴツゴツして食べ辛そうですね」などと言って指先で貝を突いたり、海老の尾をチョンチョンッと触れてみたりと、物珍しそうに様子を窺っていた。

 そんな中、レレイたちに紛れてマドレーさんは海老を掴み上げると、


「これの頭を外して鍋に入れると鍋自体が凄く美味しくなるわよ」

「子供たちが茸採りを頑張ってくれたからね。美味しい鍋にしてあげようと、僕もそう思ってたんだよ」


 と口にしながらお風呂の扉に付いてあるダイヤルをカチリと回して扉を開いた。


 中を覗くと木箱や刀と、色々と置かれた倉庫になっていた。その中から手ごろな木箱をひとつ持ってきて扉を閉めると、


「村長宅に伺うついでに、ご挨拶も兼ねて行って来るよ」


 木箱に海老と貝を笊からいくつか入れ直すと、そう言って転移してしまった。


「頭は鍋にするとして、海老フライ? どちらも頼みだわ」


 居座る女。マドレーさんのイメージが崩壊していく。

 海老フライの翻訳は思ったよりも早く済んだ。

 頭を外し、尻尾側の殻を間接一つ分、つまりは尻尾と繋がっている殻を残して剥く。背中に切り込みを入れて背ワラを抜く。包丁で腹に四、五箇所に切り込みを入れて丸まるのを防ぐ。これでも丸まるようなら左右にクネクネさせて筋を潰す。


「大雑把な内容だけど、これ普通の海老の下処理よね」


 尻尾を包丁でしごくと水分と汚れが抜けて揚げ上がりが綺麗に仕上がる。<ワンポイント>って書かれたこの一文、なんか腹立つわ。


「伊勢海老の下処理なら、この大きな海老にも対応できるんだけど……」


 ペラリとページを捲ると、


「あったわ」


 普通に次のページに書いてあるわ。なになに……頭と胴の繋ぎ目に刃先を入れて切り離す。頭が取れないにくい場合は捻じり取る。<海老より楽>って一言も翻訳しておいたほうがいいのかしら?


 胴体の殻を剥がす前に尾に切れ目を入れる。この時切り落とさずに尾をねじ抜くと背ワタも綺麗に抜ける。


「確かに海老より楽かも」


 最後に胴体の殻は固いから背中の真ん中に包丁の角で叩きながら縦に一本切れ目を入れて無理やり開く。<ゴリゴリとまな板の上で殻を押し潰すと簡単に剥ける>


「へー。ワンポイントも以外と有能ね」


 おもわず「へー」と言葉を洩らしたけど、ワンポイントアドバイスの下部に、キッチンバサミで腹部の両脇を尾の付け根まで切る。これが一番らく。と添えられたいた。


「ならそっちを書けッ!」


 ノートを叩き溜め息を溢していると、伊勢海老モドキの周りに集まっていたレレイたちが席に戻ってきた。


「冒険者をしてた頃はこの辺境を巡っていた事もあって、漁村で出された汁物にあの海老が使われてたわよ」

「マドレーさんは冒険者をしてたんですね」


 レレイたちがマドレーさんの話に興味を持ったようで、マドレーさんの話に耳を傾けていた。私は後半に付け足されていた文を黙って翻訳作業に入る。


 剥いた身に薄皮が残っている場合、薄皮を下にして真ん中から切り身を二つに分けると綺麗に剥ける。通常の海老サイズにもなって食べやすい。


「えー。どうせなら大きいのがいいわよ」


 そう口にしたところ、視線を感じて顔を上げると、レレイたちがこっちに注目していた。まるでノートと会話する女と思われてしまったみたいで恥ずかしい。


「なんでもないわよ」

「そ、そうですか……」


 最後に<重要>と書かれた一文があり、心の中で重要なら先に書けと口にしながら、翻訳に入った。

 ネット注文で取り寄せるといつも触覚みたいな長いのが動き、俺はまだ生きてるぞと言われている気分になる。


「重要なのに感想文みたいね」


 なので氷を入れた冷水に入れて放置する。


 動く海老に目をやると「……確かに」と呟いてしまった。笊の上の海老たちも長い触角を動かして生きている。

 これを生きたまま頭を引き抜き、殻を剥がすとなると……いや、この海老たちは冷蔵庫の中でも未だ生きていたのよ。冷水ごときでポックリ逝くはずがないわ。

 先にタルタルソースの翻訳を済ませちゃいましょ。


 ペラペラとページを捲り、タルタルソースのレシピが書かれていないか探す。


「あった」


 さっそく翻訳に入ろうと目を通す。ゆで卵を固茹でで二つ、玉ねぎ半分をみじん切り、きゅうりを半本みじん切りにして塩を振りかけておく。<きゅうりは酢に漬けてピクルスにしておくとタルタルソースが美味しく仕上がる>


「ちょいちょい出てくるわね、ワンポイント」


 酢、大さじ一と砂糖小さじ一を混ぜ、塩を振っておいた玉ねぎときゅうりを絞り水気を軽く落として甘酢に投入にしばし放置。

 その間にゆで卵を潰して、甘酢をしぼった玉ねぎときゅうりを潰した卵と混ぜる。マヨネーズを混ぜ加えつつドロドロにしすぎない程度に調整する。


「でた」


 <乾燥パセリ、塩コショウで味を調えても美味しくない、シャバシャバになる場合、水気が多すぎて失敗している>


「ワンポイントにせず水気に注意って先に書いときなさいよ」


 終わったー。と背筋を伸ばしていると、


「「「じゅーすー」」」


 浴場の扉が開き、子供たちが小走りで冷蔵庫に向かっていく。三人並んで火照った身体に冷えたジュースをゴクゴクと飲んでいる姿に癒されていると、途端にカザミの姿が脳裏をかすめて気になってしまった。

 少し様子を見に行こうかしら。そう思ったところで、フォールさんがポワンと姿を現し帰ってきた。


「ただいま。カザミは起きてきてないのかな?」


 その話には触れないのだと思っていたけれど、フォールさんも少し気になっている様子。


「おこしてくる?」

「んー。寝てたら悪いし、起きるまで放っておこうかな」


 何も知らないロロアちゃんに人体模型は見せられないわ。あれは一種のトラウマものだものね。


「翻訳はどうかな?」

「できてるわよ」

「ありがとう。それじゃあご飯にしようか」


 テキパキと調理を進め始めたフォールさんと、それを手伝うロロアちゃん。私たちもテーブルにお皿を並べようと立ち上がると、いつもの様に「座って待ってて」と言われてフォールさんに任せきりとなった。

 マドレーさんは最初から動く様子もなく、自分の席にお皿が置かれて顔をほころばしていた。


「楽しみだわ」

「フォールのごはんはおいしいんだよ」

「エプロンもよく似合ってるわよ」

「えへへっ」


 ロロアちゃんと照れていると、後ろの階段からカザミが下りてきた。真っ赤に染まった和服の帯から二人の小人が顔を出し、


「「ころぽ?」」

「わからんが飯どきのようだ。先に挨拶でもしとくか?」

「「ころぽ」」


 帯から小人を掴んだカザミは四角いテーブルの上に二人の小人を置いた。みんな視線はカザミと小人に行ったり来たり。


「どうやら助かったようだね」

「あぁ。どうにかな」


 鍋に蓋をして、カラッと上がったエビフライを器に盛りながら声を投げかけたフォールさんに応えたカザミ。


「小人だ」

「「ころぽっぽ」」


 蕗の葉を持ったまま片手を上げて挨拶のような事をする小人。子供たちは「うわー。小さいね」と口にしながらテーブルの上を覗き込んでいる。


「「「こんばんわ」」」


 子供たちはすぐにも小人を受け入れたようで「「ころぽっ」」と返事をする小人を手の平に乗せていた。子供たちはカザミの片腕がない事に気づいていないのか、それとも興味が小人に移っちゃったのか、あまり気にする様子もみせずに小人を浴場に連れて行ってしまった。


 私は片腕が元通りな事が気になっている。すると、


「片腕は戻らなかったのかい?」

「よくわからんが小人が治療してくれたようだな。死にかけていたんだ、生きているだけでも感謝しているぐらいだ」


 二人の会話に割って入ることもできず、黙って二人の会話を聞いていた。

 レレイたちもマドレーさんも、ヒラヒラと揺れる左袖に目がいっている。


「彼女たちはコロポックルと呼ばれる精霊だよ。大地の精や生命の精なんて昔は呼ばれていたぐらい、治癒能力に長けているんだけど……その腕、自分でどうにかできないのかい?」

「スキルでは無理だな。超回復も試してみたが戻らん。ハイポーションを飲もうと思ったが鞄を無くしたようだ」


 会話をしながらカザミは冷蔵庫を開き瓶ビール(ラガー)を取り出し口を使ってポンッと蓋を外すと、近くにあったゴミ箱にプッと飛ばしいれた。


「あんたいったい何があったのよ?」


 少し苛立っているのがわかる。ゴクゴクと一本を軽く飲み干してから、


「自爆だ自爆。小人を巻き込んで盛大に死ぬとこだった」

「はっ?」


 本日二度目の「はっ?」が出てしまったわ。


「なあリーサ、井戸が枯れる理由ってわかるか?」


 二本目を冷蔵庫から取り出してこっちに歩み寄ってくる。さっきまで虫の息だった男とは思えないわね。


「井戸? 水脈が枯れたり、移動したりとか?」


 ゴンッと瓶底がなりテーブルに置かれ、


「悪い、開けてくれるか」


 マドレーさんの座っている右前の空席に瓶ビールとオープナーを置き、隣に座るフィマリに向かって言葉を残すと、もう一度立ち上がってグラスを取りに行った。


 布の切れ端を捲かれた小人が二人、トト君とフロアちゃんの手の平に乗って戻ってくると、私たちの座るテーブルの上にそっと置かれた。


「お風呂気持ちよかったでしょ?」

「「ころぽ!」」


 蕗の葉を揺らして応える小人が可愛い。

 フォールさんが二つの鍋をそれぞれのテーブルに置き、四角いテーブルにカザミと小人を加えて、丸いテーブルには小人の着ていた民族衣装を洗って戻ってきたロロアちゃんが席に着いた。

 フォールさんは熱いから火傷しないようにね。と口にしながら子供たちと夕食を口にしていた。


 こっちのテーブルにも大きな鍋と大皿に入ったエビフライ、それとお腹の大きいレレイとミングには冷えた水、私とマドレーさん、クーリエ、ニーナ、フィマリの前には空いたグラスとビールが置かれ、ちょっとした宴会気分で鍋をつつき始めた。


「それで井戸が枯れて困ってる奴らが居たんだが」

「どうだろう……井戸なんて枯れた事ないから」


 海老フライ用のタルタルソースは木皿に木のスプーンと一緒に用意されていて、好きなだけ海老フライと一緒に堪能しながらカザミの話に応えていると、鍋から顔を出す海老の頭部と目が合ったのか、ひょいっと手に持ったお玉で海老を沈めたマドレーさんが、


「井戸が枯れて困っていた村に行った事があるわ」

「水は戻ったのか?」


 いいえ。と応えたながらグラスに注がれたビールを口にするマドレーさん。


「水が戻るどころか、その村は数日後に消えたわ」


 どういう事だ? と口にしながら、マドレーさんの空いたグラスにビールを注ぐカザミ。小人はカザミの小皿に盛られた茸を美味しそうにハフハフと口の中で転ばせながら食べいた。

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