はい。コレ ~カザミの勘違い・番外編~
グロテクスな表現がありますので苦手な方はご注意下さい。
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「え? 俺を呼んだのお前だろ?」
「そうだ。貴殿を呼んだのはディーメル国、現国王の我だ」
「陛下! 突然なにを!?」
「まずはその格好やめてくれないか?」
俺は雑貨屋でロロアが作ってくれたチーズ焼きを片手にブドウ酒を嗜んでいたところ、入店してきた王の遣いだと言う者に王城へと足を運ぶよう命じられた。
王城に足を運んでみると、城仕えの侍女に重厚感のある両開きの扉の前まで案内され「私はここまでしか案内できません。この先は中の者が案内を代行してくれます」と説明された。すると扉の両脇に立っていた二人の銀の甲冑を身に纏った兵士が重そうな扉を内側へと押し開け扉が開かれた。
中に入ると視界の先に在った玉座に座り冠を被ったいかにもな王様と、宮廷魔法師だと名乗る、フォールのような白の衣を纏った男がその玉座の傍らに立っていた。
案内役が中に居ると侍女が言っていたが、どうやら中にはこの二人しかおらず、俺はゆっくりと大理石調の白い石床に敷かれた赤い絨毯の上を歩き、玉座の在る壇上の手前で立ち止まった。
ここまでが先の唐突な会話のあらましだ。
そして壇上の前で立ち止まった今、目の前で険しい表情を浮かべる王は見覚えのある短刀を手にスキル【腹切り】と唱えたところだった。スキルに因って自然と行動を開始した王は、玉座から立ち上がり壇上で正座をし、赤いマントを羽織ったまま腹部をさらけだした。
「陛下! おやめ下さい!」
「やめたいのは我の方だ!」
両手で握った短刀の切っ先を腹部に向け、自身が唱えたスキルに必死に抵抗する王。
「それ以上はやばいだろ。魔法師なんとかしてやれよ」
「黙らぬか! 今は貴殿と話をしている場合ではない!」
「無理。ほんと無理だから。これ以上はダメだって!」
「陛下。威厳を! 威厳を保って下さい。下民とは言え民の前です!」
「チクッてした! 今チクッてした!」
「陛下! まだ大丈夫。先っちょです。まだいけますよ!」
王が握る短刀を取り上げようと、無理やり魔法師は王の短刀を握る指を一本ずつ丁寧に解いていく。
「魔法師よ、もしもの時は【最高位治癒魔法】を施すのじゃぞ」
「わかっております陛下。ですが今は指を解きましょう。今ならまだ間に合います」
魔法師が無理に解こうとした王の指は魔法師が摘まんでいた指からすり抜けると、そのまま勢いをつけてしまい短刀は王の腹部を捉えてしまった。スッと豆腐に刃を通したかのように流れた刀身は王の腹部の奥へと到達する。
「ぐぶぽっ」
王の口許を体内を逆流した血が噴出し赤く染め上げた。
「陛下! お気を確かに。陛下!」
その光景に気を動転させた魔法師は王の両肩を掴み力強く揺さぶった。
「やめ……ごぶっ!」
揺さぶられながらも発動したスキルは有無を言わさず実行され続けた。
王はさらに血反吐を吐きながら脇腹に刺した短刀を真横へ一気に流して見せた。臓物は腹の中からベロンと溢れ出し、床は内蔵と血溜りで赤黒く染まっていく。
腹を斬り終えたスキルは王を解放すると、手放された短刀はその血溜まりの中に落ちていった。
「いま、今すぐ楽にしてあげます」
「苦しい……はや、く」
王の苦しむ姿と、苦しい、早く。という言葉を聞いて、壇上の上で始まった男の最後を飾る王を前に、なぜ遣いを寄越してまで俺がここへ呼ばれたのかを理解した。本人と見届け人、そして俺の三人だけ。そう言う事か。
さすがは一国の王だ。どの様な過ちを侵したのかは知らないが、唯一この国で剣ではなく刀を所持する俺は呼んだのはこのためだったのか。
全てを理解した俺は、静かに壇上へと上がりながら、鞘を滑らせて刀を抜いた。
「介錯……承った。お見事!」
これが一国の王の姿。俺は王と云う者を誤解していたのかも知れない。罪を犯した罪人には厳しい処罰を与える王だとは知っていた。
貧しい暮らしで仕方なく盗みを働いてしまった女子供まで、その腕を切り落とし周囲に見せしめたと聞いた事があり、それはあまりにも酷い話だと思ってはいた。が、ここまで自身にも厳しい王様だったとは。
「雑貨屋店長カザミ、王の最後、確と見届けた」
「誰か! 誰かおらないか! 陛下が殺された!」
「え!?」




