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「着工」と「着手」

  景観形成条例の届けが出ていないことを業者に伝えて、住民側から攻勢に出たが、無論、はいそうですか、それでは計画を中止しますと言ってくれる相手でないことは予想していた。ニ月二六日、月曜日の朝に十数人で市役所に処置をお願いに行くと、朝一番で山本建築設計が来て、都市整備課で協議中に出くわした。日曜日に必死で書類を調えたのだろう。今から届けを出して、あくまでも駆け込み着工をやるつもりらしい。


  建築審議会では月末とのニュアンスであったから、三〇日間着手できなくとも、告示までには数日残されている。準備をしておいてこの間に着工してしまうことは十分可能だ。住民側としては、何とか告示を数日早めるか、この数日をどんな手段ででも頑張りぬく覚悟であった。


  問題は「着工」と「着手」の定義であった。景観条例は着手の三〇日前に届出を義務付けており、都市計画は着工前に公示されれば従わねばならないとしている。「着工」の定義そのものも何度も裁判で争われており、その結果から見るとなかなか微妙なところだった。一般的には、準備工事は着工と見なされず、杭打ちがあって初めて着工となる。しかし、斜面での工事や、地下室のある場合などは山留めと穴掘りをすることが着工と見なされる場合がある。住民側の抵抗があっても数日で杭打ちまで進むのか?山留めならすぐに取り掛かれてしまうのか?その点が大きな関心事となった。


  道路課には、このようなぎりぎりの駆け込み着工を、市の行政指導をも無視して行うタワラコーベンの行為をどうして差し止めようとしないのかと詰め寄った。都市計画課には条例の厳しい運用でこの三〇日を強い行政指導で貫くことを要請した。住民側から見ればどちらの返答も市民の立場に立て切れない不十分なものであった。


  景観形成条例に関しては、いままで厳密な運用がなされていないことは歴然としていた。市役所自体が「単なる届けですから」と軽く考えているのだ。着手の三〇日前までに届け出るならば今から三〇日間は着手できない。ところが、着手とは着工と同じであり、杭打ちが着工ならば、山留め工事も、根切り工事も許されるとまで言う。これでは三〇日終了後、一瞬で着工完了となってしまう。


  高度地区指定の公示を早めることの他に、着手の定義をはっきりさせることが重要となってきた。ニ月十九日に正式決定された高度地区指定案は県で認可のプロセスに入っている。景観形成条例は県の条例だから、その解釈は県に問いただす必要がある。今度は大挙して県庁に行った。


  着手というのは読んで字の如く、始めることだから、重機を使った山留め工事が着手に当たらないはずが無い。杭を打って着工に至る以前の準備プロセスを始めることが着手だ。しかし、あたりまえ過ぎてそんな事は法令には書いてない。用例を挙げて論証することにした。


建築基準法(建築物の建築等に関する申請及び確認)

当該工事に着手する前に確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。


三島市建設工事執行規則 (工事の着手)

第二十条 請負者は、特に期日を定めたものを除くほか、請負契約締結後十日以内に工事に着手しなければならない。


月葉市工事監督規程(事前の説明)

第七条 監督職員は,工事が着手される前に,請負者等に対し,設計図書の内容を正確に説明し,施工の位置,書類の整備その他必要と認める事項を説明しなければならない。


  県庁訪問の成果はあった。着手の定義も県は我々の主張を全面的に認めてくれた。これで市の誤った解釈は改められる。しかし、県は同時に困った裁定をしてくれた。三〇日を早めることが出来るというのだ。三〇日は行政指導のための日数だから、審査済証が発行されれば三〇日経っていなくても着手して良いと言うのだ。実際、月葉市はこれまでいつもニ週間くらいで審査済証を発行してしまっている。


  これでまた、市への働きかけが必要となった。しっかりと三〇日の行政指導をお願いしなくてはいけない。高層マンションが周辺情況に合わないからこそ、高度地区指定で不適格になるのだ。周辺景観にそぐわないものを短時日で審査完了する理由はない。市は30日をフルに使って業者を説得するべきだ


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