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景観形成条例がある

  解体工事がほぼ終了するころ、どうやら施行業者が決まったらしいとの情報も入ってきており、住民の間ではなんともいえない手詰まり感が漂っていた。このままで推移すれば高度地区規制が行われる前に建設工事が着工されてしまう。何か打つ手はないものだろうか。各自がいろんな事をそれぞれに調べた。ニ月十一日に一人の住民からメールで県の景観条例についての疑問がもたらされた。


  県の景観形成条例では、「周辺との調和」が第一に謳われており、戸建地区に十四階建てを建設すると言うようなことが、どのようにして許可されるのか疑問だというのである。このマンションは何かの除外規定が適用されているのかどうかという問いかけであった。多くの人がこの景観形成条例について知ってはいたが、これで要求されていることが、届出に過ぎないことや、百原一丁目が特に景観が美しいというわけでもない普通の町並みであることから、この条文をじっくりと読んでいなかったのである。


  改めて読んで見ると、高さ三〇m以上の高層ビルには景観形成条例で大規模行為の届出が義務付けられており、その除外規定のどれにもこのマンションは当たらない。届出だけではあるが、「着手の三〇日以上前」と規定してある。そして、その届出の内容は、塗装色などかなり具体的に細かい内容のことになっている。何度も開かれた説明会ではいつも決まって「まだ施行会社も決まっておりませんので、細かい点についてはお答えできません」という返事が返ってきていた。


  この届出が、施行会社との細かな打ち合わせの後に出すものであるとしたら、「着手の三〇日前までに」が、かけこみ着工の場合問題になる可能性があるではないか。この取り扱いは慎重にすることにした。説明会でもこのことには触れず、住環境を守る会の中でも伏せておく。頃合を見て市役所にどうなっているか確かめようということになった。


  ニ月十八日に第七回の説明会が行われた。この説明会には施行会社として決まった唐田工業(仮名)と設計担当の山本建築設計が参加した。消防法の要求する非常用エレベータについての質問をされて、山本建築設計は建築確認が取れていることを根拠に説明無しで合法性を主張した。つまり、あれこれの条例や法律についての議論は必要なく、建築確認が取れていることで、諸条例に適合することが確認できるというのである。


  この返答の傲慢さは、質問者をあきれさせたが、口には出さなかったが同時に景観形成条例への期待を高めた。景観形成条例は建築確認とは関係がない。建築確認が全てと考えてしまっていて、条例をチェックしないとしたら、景観形成条例を見過ごしている可能性が高い。一刻も早く、市役所に尋ねたい気持ちだったが、まだしばらく抑えた。市役所から届出の督促が行ったりすると、早々と届出を出されてしまうからだ。


  ニ月十九日は建築審議会が開かれ高度地区指定の審議・決定が行われる。市の都市整備課も主だったメンバーはそちらに関わっていて留守のはずである。さりげなく電話をかけて景観形成条例の届けが出ているかどうかを尋ねた。案の定、今担当者がいないのでよくわからないがということであったが、「見た限りでは届けは出ていないようです」と言う返事が返ってきた。全く事の重大さに気がついていない様子だ。


  何人かのメンバーに絞って緊急の会議が招集された。景観形成条例の届出がなされていないことをどう持ち出すか?三〇日が絶対であったとしても、まだ三月の末までには四〇日もあるから、これだけで着工を出来なくすることも出来ない。遅く持ち出した方が良いかといえば、そうとは限らない。届出を怠り罰金を払わされた業者との烙印は今後の販売にも差し支える痛手だろうが、あくまでも届出であり、怠れば三〇万円の罰金というだけである。マンション建設は十億以上の金が動く事業なので、どれだけの影響を持つかは定かでないからだ。着手してしまっておれば、これで工事を止めないだろう。三〇万円と割り切って居直られてしまえばそれまでなのだ。


  必要な手続きを故意に無視したのか、あるいは錯誤で手続きができなかったのかの差異は大きい。住民側から通告すれば、無視すれば故意に届出を怠ることになり、悪質建築のそしりは免れない。あわてて届け出れば確実にまた30日の遅れが出る。通告は着手する前にしなければならない。結局、工事に着手する以前で、月末まで数日を残して三〇日となる日、二月二十四日の土曜日を選ぶことにした。月曜日まで市役所が休みになることも計算の上だった。月曜日に届け出たとしても、三〇日後と言えば三月二十七日まで着手できない。


  高度地区指定の公示が予定通り三月末日ならまだ三日残されているが、三日ならなんとかなると思った。しかし、まず追求するのは公示を早めることだ。


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