工事を遅れさせれば良い
高度地区指定の原案で第一種高度地区となり、一八mの絶対高さ制限が適用されることになった事は大きな成果だった。しかし、四月一日施行では、二月一日着工ならば間に合わない。それでも施行を一ヶ月早め、工事を一ヶ月遅れさせることができれば十四階マンションは建たなくなるのだ。反対運動は、遠くてもゴールの見える闘いになった。
それだけではない。一八mの高さ規制が導入されると言うことは、この地区に高い建物を建てることが、公的に好ましくないことと宣言されたことである。私たちにとって都合が悪いからではなく、月葉市の総意としてここに十四階建ては立てるべきでないと結論したのだ。住民エゴなどと言われる筋合いは全く無い。
高度地区が指定されると、この規制が行われる以前に建てられていた不適合な物件が出てくる。これを「既存不適格」と呼んでいる。まだ完成していなくても、すでに着工済みの建物は「既存不適格」として扱われる。タワラコーベンのマンションは最初から「既存不適格」を狙った「駆け込み着工」である。
高度地区の導入が議会で表明されたのは、二〇〇六年三月で、タワラコーベンが土地を取得したのが六月だから、これは意図的な既存不適格狙いの駆け込み着工である。タワラコーベンは悪質にも最初から駆け込み着工をするつもりで土地を取得したのだ。この不当性を訴えるのは非常にわかりやすい。
正義は我にあり。駆け込み着工を許すな。月葉市はしっかり行政指導をしろ。これが運動のスローガンになった。株主にも、建築業者にも、この事を訴える手紙を出した。業者に対してもこのことを追及した。しかし、業者は鉄面皮であった。ついには説明会の席上「行政指導は拒否します」とまで言い切った。もちろん、これは住民の怒りをさらに掻き立てることになった。
来年四月以降に出てくる建物に対しては高さ制限が実施されるので、このマンション以外に高層マンションは立たない。直接に被害を蒙るのはマンション周辺の人たちだけとなるが、百原一丁目の住民にとって、今回の十四階建てマンションは、もはや近辺の人だけの問題ではなく、自分たちの街がマンション業者の私利私欲で蹂躙されてよいものかどうかの問題となっていた。これが百原一丁目全体の問題であるということはいささかも揺るがなかった。
タワラコーベンはもう回りに背の高い建物が建たないことを逆に売り物にするに違いない。そうすると我々の運動は悪質業者タワラコーベンの営業を助けたことになってしまう。そんなことは許されない。これだけひどいものを許していたら、例え高さ制限があったとしてもマンション業者は規制の範囲で最大限の横暴を働くだろう。百原一丁目の住環境を守るためにはこのマンションを建てさせないことがますます必要になってきた。




