裁判に訴えるか?
マンション反対運動は裁判を軸に展開されることが多い。裁判に訴えることは住民の強い姿勢を示す最良の方法とも考えられるからである。事実、先行する運動の裁判をもいとわない強い姿勢が在ったからこそ、月葉市は高度地区指定に踏み切ったとも言える。
しかし、実際のところ勝ち目は薄い。現在のところ、調べれば調べるほど法律はマンション業者の味方なのだ。私たちは裁判には費用も掛かることから、お金を出すほど熱心かそうでないかで住民を二分する結果になることを一番懸念した。運動を広げることと裁判に訴えることがうまく連動してくれないように思えた。裁判に訴えてしまうと判決を待つという事で運動が矮小化されてしまう危険もあった。
百原一丁目の場合、着工を遅らせることが勝敗の分かれ目なのだから裁判で着工を遅らせることが出来るならそれも意味がある。しかし、着工の差し止め請求を裁判で争っているうちにどんどん工事が進められてしまったという先例はいっぱいある。法律では建設してはいけないと言うはっきりした結論が出るまで工事は進められると言うのだからお話にならない。裁判で勝っても結局はマンションが出来てしまい、住民は蒙った被害をお金で補償してもらうことになる。何でもお金に換算して金銭解決するのが裁判制度だからこれでは全く役に立たない。私たちの住環境はお金に換算されるものではありえないのだ。
多くの裁判事例でも住民側は決して金銭解決を望んでいない。マンション業者に金銭支出させることで建設を思いとどまらせようとするのだが、裁判中にどんどん建設が進んでしまうのが通例である。
裁判を起こした場合のデメリットは他にもある。マンション業者に原告に対する反訴などと言う手立てを与えることになる。マンション業者は住民原告団に対して、反対運動により販売価格が下がった事への損害賠償として、何億円もの要求をすることがある。まず間違いなく棄却されるのであるが住民への脅しとしては十分効果がある。こういったマンション業者からの攻撃も、裁判の原告団と言うものがなければ氏名人数不詳の住民に対してそれぞれの責任額を算定した訴訟など不可能なわけで、業者側もやりようがない。裁判を起こすには費用の他にも、こうした攻撃への対処、その中での住民の団結の保持など覚悟しておかねばならない種々のことがある。
実質上役に立たない裁判を起こして、運動の分裂と反訴の危険を負うのは得策でない。こういうことで私たちは裁判ではなく運動でマンションを阻止する道を選んだ。裁判は起こさなかったが、運動には法律上の様々な問題が出てきたので、翔合同法律事務所の弁護士さんには大変お世話にはなった。多くの弁護士は裁判を前提にした相談にのってくれるが、労働問題が得意なところは裁判以外で運動をすすめるアドバイスもしてくれる。




