◇2
◆ ◇ ◆
窓の外は少しずつ、明るさが町を満たしてゆく。
カーテンの隙間から覗く朝日が、部屋にゆっくりと伸びてゆく。
目が覚めた時月子ちゃんの体は、薬と注射のおかげか大分楽になっていた。
月子ちゃんもといぼくの体は、まだ目を覚まさないままだ。
あの後月子ちゃんのお母さんと家族をなんとか誤魔化しながら、けっきょくこの部屋で一夜を明かした。
心配とはいえ年頃の男が一晩、娘の部屋で寝ているなんて非常識もいいところだ。でも意識がないんですとは言えず、月子ちゃんの威を借りて、なんとか頼み込んだ。
流石にベッドの上に運ぶことはできず、そのまま床に寝かせ毛布をかけてある。
ぼくは月子ちゃんのベッドを借りて横になりながら、ひとまずはこの体をこれ以上悪化させない最善の対処をした。
途中何度か呼びかけてみたけど、やはり反応はなかった。
心臓は動いていたし、呼吸もしてはいる。だけどまるで生気が感じられない様子に、ぼくは言い様のない不安に駆られる。
こんなに長い間元に戻らないなんて、入れ替わったままなんて、初めてだった。
だけどこのままずっとこうして居るわけにもいかない。
最悪このまま元に戻らず目も覚まさなかったままだとして、晃良兄さんか母さんに、迎えにきてもらうしかないだろう。
一応昨日の段階で晃良兄さんには友達の家に泊まるとメールしておいたけれど…まさかこんなことになるなんて、思わなかった。
ピピピ、と体温計が小さく鳴る。小さな意識を抑えてパジャマの下から体温計を取り出し目の前にかざした。
「……36.4℃…」
高くはない。月子ちゃんの平熱は知らないけれど、体の感覚としては嘘みたいに良好だ。
時計を確認すると朝の6時少し前。
月子ちゃんが気になってはいたものの、ぼくも少し眠っていた。起きたらもしかして元に戻っているかもという一縷の望みは儚く消えていたけれど。
目を覚ました時にはもう、台所から物音と人の話し声が聞こえてきていた。本当なら月子ちゃんも、お手伝いしている時間帯だ。
ぼくはどうがんばっても、月子ちゃんと同じことはできない。だからまずはできること。そう自分に言い聞かせて、ベッドから出る。
今日は学校は、休もう。月子ちゃんとしては不本意かもしれない。だけど怒られても呆れられてもいい。月子ちゃんの体にこれ以上ムリをさせない為にも、学校には行かない方がいい。
それにこんな状態の月子ちゃんの傍から、できる限り離れたくなかった。




