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Destined Fate   作者: 瀬島 陸奥
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第8章 心の変化

登場人物

ウィル…オルガルドに恨みを持つ少年。ガロルド将軍の命によりオルガルドのスパイとして潜り込む。

ジークリード…オルガルド王国の将軍。


ある日ジークリードに食事に誘われた。

ファルガナで肉料理で有名なレストラン【バルガン】。兵舎生活を1週間暮らした感想を聞くためだ。

「どうだ、兵舎での生活は?お前の実力っぷりならいじめられそうには見えないが…」

ウィルは質問を聞かず、目の前の料理をひたすらがっついて食べる。

「無関心なくせして、料理は大食いなんだな。で、質問に答えてくれ。どうなんだ」

「……………………………」

食べるのをやめ、無言になる。無口なだけに掴み取れない。

ジークリードが紙を手に口をふく。

「…質問しといて悪いが話は聞いていてな。一連の内容は聞いている。誰からとは言わんがな」

その返しにも答えることは無い。

「無関心なことはいいが、あまり問題を起こさないでくれ。今後の出世に関わるしな」

1拍おいて、

「国が今この状態だ。統制がとれなくなる。…少し話そうか」


オルガルド先代王には子が二人いた。現王リッグと、その姉バーヴェナ。当然長男が王となるが、リッグは幼かった。そのため内部でのいざこざが起きた。世継ぎ問題だ。

それは国民にも知れ渡る。

幼い王では他国への示しがつかない。

幼い王では下克上を起こす者が現れる。

幼ければ、兵士たちがその分舐めてかかるのでは。

幼い王では治める力も弱く、統制が取れないのでは。

色んな問題が取り上げられてきた。

政治的不満を持つものも多数存在するのも事実。いっその事、姉を王にすればいい。女の王でも他国から舐められるだろう!

討論が絶えなかった。そして結局幼いリッグ

王が治める事となった。だが反対は絶えない。

「ここで問題が起きればますます陛下の立場が危ぶまれる。だから、問題は起こさないでくれ」


食事を終え、ジークリードと別れる。ウィルは兵舎へと戻る。

戻るとなんだか騒がしいようだ。剣が中央に転がっている。しかも折れている。

「お!主役が帰ってきたぜー!」

ウィルの帰りに気がつく兵士たち。

いつも通り気にせず入っていくウィルはずだった。だが今回は足を止めたのだ。

落ちていた剣。それは鋼の剣。そう、ウィルの持っていた剣なのである。それが真っ二つに割れていたのだ。

それまでのウィルとは一変、半狂いの表情へと変化した。

「くっそがああぁあああ!」


ウィルが持っていた鋼の剣、それは父親が持っていた剣なのだ。

父親が母親を守る際握いっていた。そして握ったまま死んでいった。

ウィルは唯一の形見としてもっていた。顔は忘れても、この剣は忘れないと。

その剣が割れてしまったのだ。

素手で襲いかかる。顔や腕を潰しにかかる。爪が目にあたり、目が潰れる。

「うわああああああ!」

ぶんぶんと腕を振り回し、腕力だけで暴れているのだ。兵士たちの怯えた顔がウィルの目に映る。

ふとウィルの頭によぎる。

何故か思い浮かぶのだ。幼い王の姿を。

なぜだろう。今まで全ての物に無関心で、復讐だけを胸に生きてきたウィルに他人を思い浮かべることなど無かったのだ。

怯えた顔の目の前で腕が止まる。急にやる気が失せたのだ。そして自分に嫌気がさす。他人に同情を持った自分が。

あの王と自分を重ねた自分が。

相手に感情を持てば、復讐どころか手を出すことさえためらってしまう。そのために無関心で生きてきたのに…。



ウィルの一連の騒動により、兵士たちからのいじめはなくなった。

部屋に戻りベットに横になる。そこをブラウンが駆け寄る。

「ごめん…。俺、何も出来なくて…。怖かったんだ。また俺に矛先を向けられると思って…」

疲れた顔のウィル。初めて見た。

そしてウィルの口が開いた。

「ジークリードに教えたのはお前だろう」

「!」

あの時ジークリードにいじめを教えたのはブラウンと見抜いていたのだ。

フッと笑い、

「卑怯だな、名乗りもせずに。逃げていただけだろう。いつまでその言い訳引っ張るつもりだ?」

珍しく体を起こすと思ったら、

「目障りだ。失せろ」

冷たく言い放つのだ。誰かに気にかけられるなど今まで無かった。話すことさえも。

そして、他人に口を出すこともなかった。

ウィルに戸惑いが見られる。

なぜあんな言葉をかけたのか?無視すればよかったものを。



彼はまだ知らなかった。

自分の無の心に変化が起き始めていることに…。



結構長く書いたかなとは思いましたが、案外短いものでした。

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