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余次元住まいのハザマ様!part9 愛憎渦巻くシン・伏魔殿 篇  作者: 山桃


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塀の中ののろいごと

「青児はどうなの? まさか初音を狙ってここに来てるの?」

俺が問うと、青児は涼しい顔で首を振った。


「正直、御影さん達が事実婚に切り替えた時は喜びましたよ。でもね、今、僕がこのお屋敷の周りをうろついている理由はそうではないです」


(ほんとかぁ……? まぁ、疑わしければ俺の力(サイコメトリー)で直接調べればいいか)


俺は心の中で毒づきつつ、先を促した。


「この屋敷の内情を使用人さん達から聞いているうちに、ものすごく興味をもってしまって。今日も情報収集をしようとしたら、惟光(これみつ)さんが壁の中から、古そうな紙を取り出していたので……」


「え? それ知らない。何それ? ちょっと詳しく聞かせて? ……青児、アイスコーヒーおかわりどう?」


俺は間髪入れずに身を乗り出した。


「おかわり下さい。それで……惟光さん、僕が見ている事に気づいたら、その紙をさっと隠したんです。だから僕が逃がすまいと、壁際に追い詰めて問い詰めようとしていた時に、ちょうど御影さんたちが来たんですよ」


(なるほど、あの壁ドンの真相はそれだったのか)


「壁に隠されていた紙か……あ〜それ、呪術の可能性あるわ。惟光をあとで問い詰めてみるよ」


「まさか彼が呪術を……?」


「いや、惟光は呪術の類は専門じゃない。だから、壁の中からたまたま見つけただけかもしれないし……」


青児は二杯目のアイスコーヒーを受け取ると、芸術家らしい知的な好奇心を隠さずに言った。


「ここの家は本当に興味深いですねぇ」



*****


青児が帰った後、俺はすぐに惟光のいる執務室へと向かった。

「惟光、俺に何か隠し事してない?」


「あ、あなた様に隠し事など……できるハズもなく」


平静を装ってはいるが、惟光の様子は明らかに焦っており、目が泳いでいる。


「ふぅん? そうか?」


俺は無言で執務室の壁に手を当て、そこから残留した情報を読み取った。

……視えた。惟光の机の引き出しの中に、どす黒い靄(もや)がかかった紙がしまってある。


俺はずかずかと机に歩み寄り、有無を言わさず引き出しを開けて、その古びた紙を取り出した。


「あっ! 御影様、それは……!」


紙を一目見て、俺は驚愕した。

背筋にぞわりと冷たいものが走る。それは紛れもなく――俺自身を呪った『呪物』だった。


古びた紙を両手のひらで挟み込むと、途端に皮膚を突き刺すような鋭い痛みと、蝕まれるようなゾワゾワとしたおぞましい悪意が伝わってくる。


そして同時に、この呪言(のろいごと)を書いた人物の顔がはっきりと脳裏に浮かび上がった……!


「あいつか……。よっぽど俺の事を恨んでいたんだな。……なぁ、惟光。どうしてこれを見つけた時、すぐに俺へ知らせなかった?」


俺が問いただすと、惟光は居住まいを正し、真剣な面持ちで答えた。


「お言葉ですが……呪物が最大限に効果を発揮する条件は、『呪われた本人自身が、それを知った時』なのです。ですから、不用意にお伝えすることは避けたかったのです」


「ああ、その理屈なら身をもって知っているぞ! 以前、俺とハザマのカップリング呪術をお前(これみつ)に仕掛けられていたと知った時、俺の精神は最大限の特大ダメージを受けたからな!!」


俺が過去のトラウマを掘り返して責めると、惟光は目を伏せた。

「あの件については、本当に申し訳ありませんでした。……でも、推しのカップリングは、みんなが幸せになれる愛と平和に満ちた世界ではありませんか……」


「惟光、お前その答え方……自ら火にガソリンを注いでいるぞ?」


俺は深くため息をついた。なんだか怒る気も失せてくる。


「まあ、お前の性癖は今は置いといてだ。要するに、これを知れば俺が精神的なダメージを負うと考えて、俺には内緒でハザマに相談しようとしていたんだな?」


俺が声を和らげて尋ねると、惟光はホッとしたように、しかし深く頭を下げた。


「……さようにございます」




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