はながさく
まだまだ寒いけれど、何となく春を感じる柔らかい日差しがそそぐ日曜日に村人達は、公民館に集まった。
なつと愛は、少しおしゃれをして緊張気味で出席をしたが、村の人達は、割烹着だったり、野良着の人々もいた。
忙しい彼らは、
「よく越してこられた。」と笑顔で握手して畑に戻って行った。
村長から、
「今年、移住のお二人です。『愛さんとなつさん』
若い方が来て下さると村が華やぎますね。
お二人は、お菓子作りの専門家なので、キッチンカーにも花を咲かせてくれる事、間違えなしです。
長く長くこの村で暮らして下さると願っています。」
と紹介した。
なつと愛にマイクを渡された。
「こんにちは。なつと愛です。私たちは、養護施設で育ちました。
高校を卒業してから、大好きなお菓子作りを勉強して、パンと洋菓子のお店で働いていました。
判らない事が多いので皆様よろしくお願いします。」
二人声を合わせて自己紹介をした。
アキヨは、困った質問が来る前にと少しおどけて
「お二人の好きな食べ物は、何ですか?」
「お二人の好きな球団は、何処ですか?」
「お二人の好きな歌は、何ですか?」
とどんどん聞き始めた。
「キャンディーズの『微笑みに返し』」と二人が言ったので盛大な拍手となり、二人は、歌い始めた。
「懐かしい歌知ってるね。」と言われ、
「施設長がキャンディーズ大ファンでした!」
そこから半ば、マイクを取り合いカラオケ大会になって盛り上がった。
栗林がマイクを握った時、
「みなさ~ん、元気ですか? 笑っていますか?
僕に提案があります。」
集まっている人々の顔を見回して
「この村の名前、変えませんか?」
歌を歌うと思っていた栗林の唐突な言葉に皆が驚いた。
「そんな事出来るのか?」 「何を言い出した。」 「何にするつもりだ。」と声が上がった。
「私は、『黒村』も歴史ある名前だと思う。
でも村を歩くと花が多い。じゃがいもを育て始めてから、皆が庭で色々花を育て始めた。季節になれば、育て方をそれぞれ説明して、話の花も沢山咲く。
これからも移住者が増え、長く暮らしてくれると思う。だから、イメージも大事だと思う。
私が考えたのは、
『花野村』どうでしょうか?」用意の良い栗林は、書いた色紙を皆に見せた。
少しの間、静まったが、誰かの
「いいなぁ。」と声がした。それをかわきりに
「良いぞ。良いぞ!」と声援が上がった。
「村長の意見は、どうなんだ!」と声が聞こえ、次こそ何か歌おうと歌詞カードを探していた波那村の手が止ままだった。
「花野村。
何だか、音だけ聞くと私の独裁的な感じしませんか?」
「誰も村長が独裁者なんて思ってないよ!
漢字が違うだろ。」
「花野村」と口々に言う。
「栗林さんの村長時代も楽しかった。充実していた。小さな揉め事もよく解決してくれた。
でも花は、あまりなかったな。」と紫陽花に詳しい七瀬が言い出した。
「私は、花が好きで特に紫陽花は、育てていて楽しい。それを誰かがインスタグラムに投稿してくれたので花を見に来る人が出て来た。
知らない人だが、そこで花の育て方やアイデアを話したり、新しい花の種類を教えてもらったりする。
話の花が咲く。
若い頃と違いだんだん遠出が面倒になったから、来てくれるとありがたい。
まして、『花野村』となれば、更にイメージアップだと思う。」
「『花野コロッケ』って更に話題性が出て売れそうですね。なつさん達のスイーツも『花野』とつけるといいかも知れませんね。」とジュンジも言った。
波那村が立ち上がり、
「皆様のご意見、ありがたいです。次回の村議会の最初の議題としてあげさせて頂きます。
もし、花野村と改名になれば、私もとても嬉しいです。そして改名する事が出来たら、また集まって祝賀会を開きましょうね。」
「予算大丈夫か?」と言うやじに
「倉庫のじゃがいもとなつさん愛さんの新メニューを道の駅に並べればきっと出来ますよ。」
公民館は、笑いの花が咲き庭では、ロウバイが香っていた。
拙い小説にお付き合いくださりありがとうございます。
このお話は、これでおしまいにします。
架空の村の移住の話ですが、沢山の植物の話題を散りばめました。
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