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はながさく  作者: 92コ
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クリスマスの前に

「愛、手元見て。」

「愛、早く洗いもの片付けよ!」


最近のなつは、愛に少しきつく言う事が多く同僚達から、「ケンカしたの?」と問われる。

「そんなんじゃないのよ。」と応えていた。


 愛が悩み込んでいる事をなつは、充分知っているし、それを口に出せないことも痛いほど分かっていた。

だから、仕事の手が、いつもより遅い。なつが声をかける事でいつもの手際の良い愛に戻る。

 

 自分の過去を他人から聞かされ果たしてどんな気持ちだろう。自分には、記憶がない過去を受け入れられるだろうか。


 子供の頃の私は、どんな性格だったのかしら? 姉とは、仲良かったのかしら? おままごとなんてしたのかな? 両親は? と次々疑問が浮かんでくるが、何一つ答えが無い。


「なっちゃん、私は、やっぱり村木愛かな?」

「なっちゃん、やっぱり横浜にいる親戚に会ったら何か思い出せるかな?」などなつに相談したいが、まだ口に出していない。

私は、誰なのかしら?


 等々考えているとなつの声がする。

「手が止まってるよ!」

そして愛が我に返ると

急になつから優しい声で

「今夜、一杯行こうね。」

慌てて振り向く愛に

「ビール一杯だけだよ。」といつものなつの笑顔があった。


少し残業をして職場を出た。

「一杯だけね。」

「ビールじゃなくてワインが、いいな。」と言ってみると

「あぁ、ファミレスのグラスワインね。」となつは、言いきった。


 注文したパスタと一緒にグラスワインが運びれてきた。二人いつもの笑顔で乾杯をしてパスタを食べ始めた。

「お腹空いたよね。」

「今日、休憩無かったよね。」

「まだ12月になったばかりなのに、忙しいよね。」

「身体もつかな?」

「みんなピリピリしているね。」

「今年は、去年より注文多いね。」

「インスタ映えしたからかな。」

「そうそう、スマホで見た写メ持ってきて『こんなデザイン出来ますか?』って言われるね。」


 勤め先のケーキ屋には、クリスマスケーキの注文が連日入ってくる。たまに細かい文字入れの注文が入ったりするのでが、さらに嬉しい悲鳴であった。


パスタを食べ終えたなつが真顔になってそっと言った。

「愛ちゃん悩んじゃだめよ。木村愛でも、村木愛でもいいの。

どちらも同じ愛ちゃんでしょ。


新聞で読んだよ。

インフルエンザで高熱だして、治った瞬間記憶が甦った人いるよ。」


「そうなの?」


「愛ちゃんにもそんな日が来るよ。」


「そうかな。思い出せるかな。不安なの。」


「なる様になる。」


愛からの返事は、無かった。


「悩まないの。

それより、移住してどうしたいかを考えようね。

キッチンカーでどう売っていこうか?

それともネット販売にするか?」

なつが話題を替えても愛からは、


「やっぱり横浜にいるという親戚に会った方が良いかな。」

と愛は、話題を戻してしまう。


「愛ちゃんが会いに行きたくなったら、一緒に行くからね。」

「なっちゃん気遣いありがとう。」


するとなつからユニークな提案があった。


「みっちとのりちゃんとやっちゃんと集まって行こうね。」


愛がびっくりしていると


なつは、

「いっぺんに会って、

『誰が愛でしょう』って愛を当てられたらホントでしょ。何となく面影が残っていたりしたら、判るかもね。」


「なっちゃんって面白い発想するね。

もう何年も会っていなくても私の事判る人ってありかもね。

5人で行って当てられたら嬉しいね。」


いつもの愛の笑顔なった。

遅れ気味で、すみません。

もう少し続きますのでよろしくお願いします。

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