カザー星系の部下といやがらせ(2)
地球。クロの時代。
キララとララお姉さん、ララちゃん、ユキ君がラーメンを食べていたころ、別の地域でシマ君とミケア・ミレイちゃんが、3人組を相手にしていた。
「あなたたち。いい加減にしなさい。今すぐやめるのよ…」
ミケア・ミレイちゃんが、威厳のある声でぴしっと言った。
「はあ? お前さんたち警察か? じゃないよな…だったら俺たちに口出しはできないぞ」
「そーだそーだ。太い尻尾が暑苦しそうだぜ…」
「さっさと帰って、いちゃいちゃしていればいいんだ…」
部屋の中で顔だけこっちを見て言う3人組。
「なっ。たしかに暑いけど… おじさん達悪いことはやめよう…」
シマ君も言うが…
「帰った。ほらほら。じゃま…」
3人組は何をしているかと言うと、PCを使って各地のエージェントにメッセージを送り、他の星系へ通じる自動ドアの設置を指示していた。3人だけでは人が足りないので日雇いのアルバイトを雇い、指示をだしていた。
若い人から、お年寄りまで… 金は自動ドアを設置したらすぐに支払われる。
だから…結構人は集まった。
「ねえ。自動ドアを設置して、80%の人が通り抜けて行ったらどうなるかわかっているの?
この地球。いや太陽系が破壊されるのよ…長い航路の建設という名目のためだけにね…
そんなことが通ると思うの?」
ミケア・ミレイちゃんが言う。
「そんなもの。俺たちには関係ないし… 言われた仕事をするだけさ…」
シマ君は部屋の入り口から中に向かって言うだけじゃだめだ。と思った。
まわりを見て、壁にブレーカーがついているのが見えた。
シマ君はちらっと男の人をみてブレーカーを落とした。
部屋の電気は消えた。
でも…PCの電源はついたまま。
それに…まだ仕事を続けている。
「なんで?」シマ君は男のそばへと歩いて行く。
「ばーか。ばーか。そんなこと想定済みだぞ… UPSというのがあってだな。突然の停電にも耐えるんだ」
「くっそ。じゃあ…」シマ君はLANケーブルをひっこぬいた。
でも… 影響はなかった。
「ワイヤレスLANというのもあってな…大丈夫なんだな…」
男の人。1人が言う。
ミケア・ミレイちゃんが男の背後に立つ。
そして…
ざばぁ。
バケツの水を男の人に頭からぶっかける。
「うわぁ…ミケアちゃんひどい…」シマ君はミケアちゃんを見た。
男のひとはカンカンに怒った。
「てめえら…ぶっころす」そう言って立ち上がった。
「逃げるの…」
ミケア・ちゃんはシマ君の手をひいて走り出し、入り口に置いてあった消火器を男の人へ向けて噴出させた。
「ぐわぁ」
まっしろくなる。
逃げる。
逃げて…建物から出て、別の建物の中に入る。
☆☆☆
「くっそ…あのアマ…どこ行った。てめえのほうがひどいじゃないか…」
「机の上がびしょびしょだし…白い粉かぶったし…ひでえな…」
「ぶっはっは。お前の顔まっしろだな…」
「おまえもな…」
3人組はひどい恰好で外へ出てきたが、あたりにミケア・ミレイちゃんの姿が見えないのを確認するとすぐに建物の中へと戻っていった。
3人組の仕事は一時的に中断はできたが…大規模に人をやとっているから考えないといけない。
☆☆☆
「ねえ。ひどくない?僕でもあんなことはできないよ…頭の上から水をぶっかけるなんて…」
シマ君はミケア・ミレイちゃんに言った。
「いいの…悪人だし…それに知っている人に似てたから…とってもいやな人…」
ミケア・ミレイちゃんも他の世界から来た上流階級の子だが…あんなことをするとは思ってなかった。
ミケアちゃんのスマホへ連絡が入る。
この未来の時代でも使える電話をキララからもらっていた。
「あ。キララちゃん。ん? 今はね。3人組の男の人から逃げてきたの…頭から水ぶっかけてね…」
ミケアちゃんはキララと話しをする。
シマ君の立っているそばの壁に自動ドアが開いた。
「お待たせ… いったん帰ろう…」
キララが自動ドアから顔を出す。
「うん。いこ…」
ミケア・ミレイちゃんはシマ君に言った。
☆☆☆
そのころ…別の場所…
「あーまた…やっている…」
シロの旦那さん。しんたろうがシロと共にミッションを実行していた。
ソラも未来から来ていて一緒に行動している。
シロとソラは同じ年齢。そしておまけで幼稚園児のシロちゃんも一緒。
しんたろうは、施設へ潜入してサーバのプログラムをチェックしていた。
「何?わかったの?」
「うん。この小惑星追跡プログラム…細工がしてあって…実際は危険がない小惑星に対して…アラートを出すように書き換えられているんだ…きっとカザー星系の3人組のしわざだよ…
修正しておこう…」
しんたろうはエージェントの猫によりいくつものミッションをこなすプロとなっていた。
ネコのエージェントからもらった未来のデバイスや携帯型PCを使い、いろいろな検査をしていた。
「ねえ。しょうわくせいってなに?」
幼稚園児のシロちゃんがソラに聞く。
「あのね。宇宙にうかんでいるでっかい氷の塊…地球にぶつかると危ないの…
ハレーすい星って知ってる?」
ソラが優しくシロへ解説する。
「しらなーい。まだ習ってない」
幼稚園児のシロが無邪気に言う。
シロが大人になったら、しんたろうの横にいるシロになり、シロとしんたろうの子供がソラ。
ソラのほうが子供なんだけど…過去のシロを未来へ連れてきているので、年齢が逆転している。
「もうそろそろ時間だね…」大人のシロがしんたろうに言う。
「そうか。片づけて…キララちゃんが来るのを待つか…」
建物から出る。
警備システムを動作開始させる。
近くの壁に自動ドアが開きキララの頭がでてきた。
「時間ぴったりだね…行くよ…」
「うん。シロちゃんおいで…」ソラがシロに手を伸ばす。
☆☆☆
ここはみのるお兄さんの家。
ヒメルもすぐ横にいる。
「さてと…いちおう説明しておくね…どうやら3人組はA、B、Cのタイプの仕事を請け負っているようなんだよ…」
キララが話し出した。
「Aってあれだね。おばか3人組… 『こんな町に住めない!』という計画だっけ」
ユキがキララに言う。
「そうだね…Aのタイプのほうはあまり気にしないでもいいと思うんだけど…問題はBとCだね…」
キララはユキの言う言葉の後に続けて言う。
「うん。大規模だし…」ミケア・ミレイちゃんが言う。
シマ君はミケア・ミレイちゃんの隣で…「次はどうするの?」とミケア・ミレイちゃんに聞いた。
「どうしようかな… いっそ拷問しちゃう? あたしの世界へ連れて行って?」
「うわぁ。ひどいなぁ…」シマ君はお嬢様の発言に思えないと言う顔をした。
「ねえ。Cのタイプってなんだっけ?」ミミちゃんがキララに聞く。
「Cは情報操作。地球に小惑星衝突の危機が迫っているという状況をつくるのが任務みたい…」
「そっか。Bの任務で各地へ自動ドアを開けて、Cのニュースを見た人が自動ドアで他の星系へと逃げるのを待つんだね…Aは… Bの補助かな? どうでもいいのかも…」
「そうね。おばかだし…」ララお姉さんが言う。
「ララお姉さんにもおばかと言われているってよっぽどなのね…」
ソラが言う。
「なによもう…」どんと足を踏み鳴らすララお姉さん。
「まあまあ…」ユキはララお姉さんへ言い、頭をなでる。
ウサミミがぴょこぴょこ動く。
「Cのタイプの人達の妨害はうまくいっている?」キララはしんたろうに聞いた。
「きりがないな… 修正してもまた、別のところでプログラムが書き換えられていて…なんかない?」
しんたろうはシロの頭をなでながら言う。
「そうだね…じゃあ…」キララはしんたろうに言った。
☆☆☆
「まただ…くっそ。きりがねえ」3人組のうち1人はつぶやいた。
「はやくしろ…」3人組のリーダーは指示を出す。
見回りの人がまわってくる時間まで30分しかない…
かんかんかん。
廊下を歩く人の気配がした。
「誰か来るぜ…」
「くそっ。いったん隠れるぞ…」
3人組は机の影にかくれた。
廊下を歩く人。警備の人だ。
いつもとタイミングが違う。
「どうやら行ったみたいだ…」
また、作業を再開する。
そして…今度は別の目立たない箇所にあるプログラムにも細工を実施し、ある決まった時間にプログラムが起動するようにした。
ファイル名は全く関係のないディスクの空き容量をチェックするプログラムに偽装させた。
☆☆☆
「おまえたちうまくやっているか? 問題は?」
ミミアが地球でのミッションをこなしている部下に連絡をとる。
「は。はい。おおむね順調です」
「そうか? 金は足りているか?」
「なんとかなりそうです」
Cタイプのミッションを実施しているリーダーは言う。
「じゃあ。引き続き頼む」
ミミアは通信を終える。そして別のグループへ連絡をとる。
「私だ。ミッションはうまくやっているか?」
「はい。邪魔は入ってますが…予定通りに進んでいますぜ…」
「そうか? 邪魔はなんとかなりそうか?」
「はい。子供なので…うまくやってますぜ…」
「そうか。うちらの情報だと、灰色の尻尾を持つきつね耳の子が頭が良くて切れるらしい。注意しろ」
「わかりました」部下は連絡する。
ミミアは連絡を終えた。そして最後にAタイプのミッションをやっているグループへと連絡をとる。
「はい。ミミアさまですか?」
リーダーの声。
「私だ。ちゃんと仕事しているか? さぼってないか? 暮らしていけているのか?」
「は。はあ。それはもう…順調でさぁ。問題はなにもないと思うので…」
リーダーが言う。でも信用できない。
「自動ドアの設置はうまくいっているか? それとわるだくみもやっているか?」
「はあ。それはもう…今は次の町へうつって、住人へいじわるをやっているところです。今日も1家族ひっこして行きましたぜ…」
「金は足りているか?」
「金ですか? えーとそうですな。ちょっと不足してまして… 50万円ほどほしいでさ」
「わかった。まずは50万円送金してやろう…」
ミミアはリーダーに言い、連絡を終えた。
ミミアは、ポケットマネーから50万円に相当する金額を出してリーダーのTMRあてへ送金をした。
きっとうそだな。金は足りなくなっている理由はくだらない理由だろう。
酒を買って飲んだとか、ギャンブルで使ったか…
まあ…失敗してくれるならいいが…
☆☆☆
「おい。ミミア様から追加のお金をもらうことができたぜ…」
「なに。ほんとうか? 腹ペコだったが…これでもう安心だな…
どこかに食いに行こうぜ…」
「そうだな…じゃあ居酒屋というところへ行くか…」
「いいな…」
3人組は今日のミッションはほっといて、昼間からやっている居酒屋へと行くことにした。
☆☆☆
そのころユキとキララ。そしてララちゃんは…
「ねえ。来ないんじゃない?」
ユキはキララへ聞く。
「えー。そんなはずないんだけど…情報だとまだこのあたりで悪だくみをしているはずなんだけど…」
来ない。
いつまでたっても3人組は現れなかった。
☆☆☆
シマ君達は別のところで例のアジトへと足を運んでいる。
ばん。
ドアを乱暴に開ける。
「お。なんだなんだ。また来やがった…? ん? なんだそれ…」
リーダーの声に部下2人もシマ君とミケア・ミレイちゃんのほうを見る。
「こんにちは…まだやっているのね…今日はちょっと物騒なものを持ってきちゃった」
ミケア・ミレイちゃんが可愛く言う。
ぶっそうなものはロケットランチャーぐらいの大きさのもの。
でも違うもの…
ミケア・ミレイちゃんは部屋に置いてある冷蔵庫のほうへとその物騒なものを向ける。
「ぶっぱなすの?」シマ君はミケア・ミレイちゃんの後ろへと下がる。
ミケア・ミレイちゃんは引き金をひいた。
ばちばちばち。
かなりの量の電撃が冷蔵庫へと発射された。
ばん。
大きな音と一瞬の光。
冷蔵庫はあっという間に使い物にならなくなった。
シマ君は冷蔵庫を開ける。
中身は…すっかり炭と化していた。
ビール瓶も破裂。中身は蒸発。お肉だったものも炭となり、食べ物は黒くなっていた。
「げっ。なんだよ…それ…そんな武器見たことねえよ…
な。なあ。お嬢さん。その物騒なものを置いて話し合おうぜ…な。なあ…」
リーダーが言う。
部下のほうへ物騒なものを向けるミケア・ミレイちゃん。
「これ。いいでしょ…どんな生き物もイチコロよ…
あたしについてきてくれる? いったんこの部屋から出て廊下のつきあたりまで…
逃げたらどうなると思う?」
にこっと笑うミケア・ミレイちゃん。
「わ。わかった」
3人組は立ち上がり、ミケア・ミレイちゃんのいうとおりにする。
実は怒ったら怖いミケア・ミレイちゃん。
ミケア・ミレイちゃんは自分のデバイスで自動ドアを開ける。
自分の世界へと通じるドア。
「ここから入るの…逃げても無駄。目視できる距離なら…これで待っ黒焦げにできるよ…」
ミケア・ミレイちゃんが言う。
「かわいい顔してこええな…」部下はおとなしく従う。
「ほら…行くぞ…」
「こええ…まっくろになりたくねえ」
部下は自動ドアをくぐる。
☆☆☆
自動ドアを通り抜けたら…町の一角。
「俺たちをどうするんだ? まさかここで殺るのか?」
「おい。怖いこと言うなよ…なあ。お嬢さん。かわいいからそんなことしないよな…」
「なあ。それを置いてくれないか…」
部下はミケア・ミレイちゃんを見る。
ミケア・ミレイちゃんは武器をかまえて、部下のほうへと向ける。
「ひっ」
体がこわばる部下たち。
「えーとね。あそこのお店で…店主に俺たちに合うものをみつくろってくれと言うの。
わかった?」
ミケア・ミレイちゃんの後ろから身なりのぱしっとしている人が現れる。
ちょうど3人。
部下たちはお店の中へと連れていかれる。
☆☆☆




